決意
学校に着き、あかりちゃんと一緒に教室に入る。
クラスメイト達は一斉に僕らを驚いた顔で見る。
「みんな、おっはよー!」
あかりちゃんが笑顔で挨拶をすると、クラスメイト達はみんなあかりちゃんに笑顔で挨拶を返した。
女子達はあかりちゃんの周りに集まる。
僕はそそくさと自分の席についた。
そんな僕を、男子たちは不満そうな顔で見ていた。
…怖い。
僕は誰とも目を合わせたくなくて、俯いた。
「ちょっと丸山くん。あなた、この間の数学の課題は提出したんでしょうね?」
俯いている僕に話しかけてきたのは南雲さんだった。
「あ、うん。もうとっくに出したよ」
「そう。ならいいけど。私、クラス委員なんだから、みんなをまとめないといけないの。あなたみたいな人がいると困るのよ。全く」
南雲さんはため息をつきながら、ひかるの席をチラッと見る。
「そういえば間宮さんはまだ来てないみたいだけど…間宮さんも出したのかしら?知ってる?」
ひかるの話題を出され、僕は昨日のことを思い出しビクッとした。
「あぁ…うん。出したはずだよ…」
「ふーん。そう。ならいいけど。…あら、どうしたの?顔、真っ青だけど」
「あ、な、なんでもないよ…」
すると、南雲さんはポケットから何かを取りだし僕に差し出した。
それは、のど飴だった。
「風邪でも引いてるならこれでも舐めなさい。残念ながら薬は持ってないから、のど飴で我慢しなさいよね」
どうやら南雲さんは、僕が風邪を引いていると勘違いしているようだ。
「ありがとう…南雲さん、優しいね」
「べ、別にあなたの為とかじゃないんだからね!」
僕がお礼を言うと南雲さんは顔を赤くし、焦った様子でその場を離れて行った。
南雲さん、怖い人だと思ってたけどそんなことないのかな。
そう考えていた時、隣から突然声がした。
「おはよう」
隣を見ると、そこにはいつの間にかひかるがいた。
「ひ、ひかる…」
「…?何?どうしたの?」
怯えた様子の僕を見て、ひかるは無表情で返す。
昨日のこと…気にしてないのか?
「昨日、怒鳴って帰らせちゃったりしてごめんなさい。びっくりしたわよね」
ひかるは僕に深く頭を下げる。
僕は驚いた。
ひかるが謝ることじゃないのに。
悪いのは完全に僕だ。
「いや、そんな…謝らないで…!僕こそ、ごめん」
「…怖がらせちゃって、ごめんなさい」
「いや本当にひかるは悪くないから…!」
僕の言葉でひかるは頭を上げた。
「…ありがとう」
ひかるはそう言いながら微笑んだ。
…よかった。いつものひかるだ。
昨日の光景はもう忘れよう。
…そして、ひかるに本当のことを話すんだ。
「あのさ…ひかる、話があるんだけど…」
「…何の話?」
「えっと…大事な話」
「…そう。それなら、お昼の時でいい?もう授業始まっちゃうし」
「そうだね…。じゃあ、お昼」
──ちゃんと話そう。
僕が何でひかると友達になろうとしたのか。
あかりちゃんが好きだからひかると仲良くなろうとしたんだって事…ちゃんと伝えよう。




