恐怖
ひかるは床に落ちた写真を無言で拾い、アルバムに戻した。
「あ、ご、ごめん…その、本当、ごめん」
謝るも、ひかるは無言のまま。
そして、写真立てを手にし虚ろな目で見つめていた。
帰ろうとも思ったが、このまま帰っていいのか分からない。
お互い無言の時間が数分続いた。
すると突然、ひかるが口を開いた。
「この写真見て、どう思った?」
ひかるは虚ろな目のまま言う。
どう返事をしていいか分からない。
そんな僕を見てひかるは微笑んだ。
「ねぇ…どう思った?って聞いてるの」
ひかるは微笑みながらじりじりと近寄ってくる。
僕は怖くなって後退りをし、そのまま壁にぶつかった。
ひかるは僕に顔を近づけ、こう言った。
「…私と友達でいてくれるよね?」
怖くてしょうがなかった。
僕は、あまりの恐怖に冷や汗をたらし震えながら「はい」とだけ答えた。
そして、ひかるは僕から離れ、俯きながら言う。
「…今日はもう帰って。」
「あ、あの…ひかる…その、本当に、ごめ「帰ってよおおお!!!!!!!」
僕の言葉をさえぎり、突然ひかるが叫び出す。
僕は急いで立ち上がってひかるの部屋を飛び出した。
──何で、こんな事になってしまったんだ。
途中まで楽しい放課後だったのに。
ひかるの新しい一面を見れて嬉しかったのに。
あれ…?でも。
結局、僕もひかるを傷つけてきた一員と変わらない。
僕は今日、あかりちゃんの為にひかると放課後を過ごしたんだ。
僕はそれに気づいて、もうやめようってさっき思ったんだ。
だから本当はひかるの部屋にまで入るつもりはなかったんだ。
だけど、ひかるが僕を部屋に入れたんだ。
そして僕は見てしまったんだ。ひかるが見られたくないものを。
これ以上、ひかると関わるのをやめようって決めたのに。
ひかるの言葉が頭をよぎる。
“私と友達でいてくれるよね?”
「うわあああああっ!!!!」
道路で叫ぶ僕を見て、通行人達は変なものを見るかのような目で僕を見る。
僕は……怖かった。
──とんでもない事に、なってしまったのかもしれない。




