発見
「送ってくれてありがとう。ここが私の家よ」
気がつくとひかるの家に到着していたようだ。
僕は罪悪感で心がいっぱいで、今すぐにこの場から離れたかった。
「あ、よ、よかった。じゃあ僕帰るね」
そそくさと帰ろうとする僕。
するとひかるは僕の右腕をぐいっと引っ張った。
「どうしたの?何か変よ」
「え?な、なにが?」
「とぼけないで。わたし何か変なこと言った?」
「言ってないよ!本当に、別に変じゃないから」
慌てる僕を見てひかるは不信そうな表情で見つめる。
そして僕の腕を引っ張ったまま、玄関のドアを開けた。
「え!?ちょ、ちょっと、なんだよ」
「まだ時間あるでしょ?私の部屋でゆっくり話しましょ」
「い、いや!!!そんなの無理だよ!」
「いいから。早く」
強引に僕は家に連れ込まれ、そのままひかるの部屋へと入った。
ちょっと待ってくれ…!女の子の部屋なんて入るの初めてだし、ていうかこんな状態で、そんな…!
は、早く帰らないと。
「今、お茶持ってくるからそこで大人しく座ってて」
僕は床に座らされ、ひかるはお茶を入れにリビングへと向かった。
僕はとてもそわそわしていた。
…こ、こんなのいいのかなあ。
今すぐ帰らなきゃ。
あかりちゃんとの為にひかるを利用するなんてやっぱりダメだって気づいたんだ。
早く帰らなきゃ……でも帰らせてくれるのか…?
そんなことを考えていると、机の上に伏せられている写真立てがあることに気づいた。
…なんだ、あれ?何で伏せられているんだろう。
僕は少し気になって立ち上がり、机の上の写真立てを手にした。
「…!?」
その写真は、どうやら家族写真のようだ。
おそらく母親、父親、そしてひかるとあかりちゃんの4人で写っている。
だけど…母親、父親、あかりちゃんの顔は黒のマジックペンでぐちゃぐちゃに消されている。
これはおそらくひかるがやったのだろうか。
僕はびっくりして、体がよろけ、本棚に体をぶつけてしまった。
その拍子に本棚に入っていたアルバムが床に落ちた。
アルバムから数枚の写真が落ちる。
その写真も全て家族写真だった。
だけどそれも写真立ての物と同様に、ひかる以外の家族の顔は黒のマジックペンでぐちゃぐちゃに消されていたり中にはびりびりに破かれている物もあった。
「な、なんだよ…これ」
驚いて口にする僕。
そして──部屋のドアが開いた。
「何してるの?」
そこには、いつもの無表情のまま…ひかるが立っていた。




