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【本編完結】百合ゲーのサブヒロインに転生したので、全力で推しを守りたい!  作者: 長月
百合ゲーのサブヒロインに転生したので、全力で推しを守りたい!
7/109

7・推しとのデート 後編

 今日の目的であるショッピングは、意外なほどにあっさり終わった。

 なにせ素体が紗良だ、何を着せても似合う。彼女なら、パリコレやミラコレのハイセンスすぎて一般人が着たら仮装にしか見えない服ですら、きっと着こなしてしまうだろう。

 事前に紗良がどんな服を持っているのか知りたいからと送ってもらった写メを参考に何着か選んだのだが、「じゃあ、それにする」と言ってさっさと購入を決めた紗良は、自分で言っていたように服選びが苦手であまりこだわりもないようだ。

 おかげで随分と時間が余ってしまい、時計はまだ三時を過ぎたばかり。帰るにはまだ早い時間だからと、今度はコーヒーのチェーン店に入った。


「実は私、スターダックス好きなんだ」


 女神がアヒルを抱いたロゴの入ったカップを片手に、紗良が言った。


「新しい味が出たら、つい頼んじゃって」

「あ、わかるわかる。期間限定とか新発売とか、思わず試しちゃうわよね」


 言葉通り、私たちの手にあるのはどちらも期間限定の商品だった。パンケーキの好みといい、案外私達は似ているのかもしれない。

 推しだということを別にしても、紗良は一緒にいて心地いい相手だった。ゲームの設定どおり、年齢よりもやや落ち着いた言動。好意的だが、それを押し付けてこない控えめな性格。適度にはしゃぐのに騒々しくはないし、話も合う。なにより、可愛い。

 あと、この年頃の女の子の話題には恋愛が多いが、紗良の口からそういった類の話が出たことはない。前世は百合オタ、現世は女子高育ちで「恋愛? それ百合より美味しいの?」状態の私にとって、これはとてもありがたかった。


「そういえば、高校生になって二週間以上になるけど学校はどう?」

「……その聞き方だと、詩織さんなんだか親っぽいよ」


 苦笑いで返ってきたツッコミに「確かに」と苦笑いで返す。そういえば、前世で生徒にも同じ質問をして、似たようなことを言われたことがあった。これはもう、大人から子供への質問の定型文みたいなものなのだろう。


「普通だよ。授業ももう普通に始まってて、大分慣れてきたし。……でも、高校の勉強って思った以上に難しくて、ついていけるかちょっと不安だなぁ」

「あー、椿ヶ丘は特にレベル高そうよね。どの教科が苦手なの?」

「一番は数学。今はまだついていけてるけど、次に習う予定の二次関数あたりで意味わからなくなる気がする。ねえ、なんで高校の数学ってⅠとAに分かれてるの? 時間割見たら、数学のコマが多すぎてうんざりしちゃうんだけど」


 高校生の大半が抱くであろうその疑問に、昔の自分を思い出して軽く噴き出す。無意味に分けているわけではなく、それなりにちゃんとした理由はあるのだけど、それを知ったところで紗良のうんざり顔は晴れないだろうし、本人も愚痴りたいだけで本当に知りたいわけではないのだろう。

 そして、二次関数でついていけなくなるというのは数学が苦手な学生が最初に通る道だから、紗良の危機察知能力はなかなかのものと言えた。


「――よかったら教えましょうか、数学」


 生クリームたっぷりの甘いフラペチーノを、中身は青汁なんじゃないかってくらい渋い顔で飲む紗良にそう言うと、数秒だけきょとんとした後、きらきらと目を輝かせて前のめりになった。表情がコロコロ変わるのが面白い。ゲーム初期の紗良は無表情のはずなんだけど、設定はどこに行ったのだろう。


「詩織さん、数学得意なの?」

「実は結構ね」


 これでも前世は数学講師だ。数学だけなら国公立のいいとこを狙えるくらいの自信はある、とは口にしないが、予備校でも家庭教師でも教えてきたのだから、椿ヶ丘に入学できる学力の紗良なら教える側もそんなに苦労しないだろう。高校数学のスタートは、中学で教わる数学がどれほどしっかり出来ているかで決まるから。

 それに、高三の夏になって「数学がまったくわかりません!」と泣きついてきた生徒に数学ⅠA・ⅡBを受験までに叩きこんだデスマーチの経験を思えば、基礎学力のある推しに得意教科を教えるのなんてご褒美でしかない。


「教えて! お願い!」

「いいわよ。場所はどうしましょうか。カフェは長居しにくいし、図書館もしゃべってると迷惑になるし……」


 同じ高校だったら教室でも良かったんだけど、他校生だとこういう時に不便だ。一人での勉強なら自習室でもいいが、二人でとなると場所は限られてしまう。それに、毎回外だとお金もかかって不経済だ。


「あ、じゃあ、うちに来てもらってもいい?」

「え、いいの?」


 随分あっさりと紗良の家に招かれることになって、少し驚いた。一人暮らしのことは内緒にしていたいものだと思っていたから。


「うん、大丈夫。黙ってたけど私一人暮らししてるから、家族のことは気にしなくてもいいよ」

「あ、そうなの。それなら、お邪魔しやすいわね。いつからにしましょうか?」


 白々しくも驚いたような表情をしてみせ、お宅訪問の約束を取り付ける。ゲームの背景になっていたあの部屋に行けると思うと、ファンとしてワクワクしないわけがない。ちょっとした聖地巡礼の気分だ。前世で数学講師やってて良かった!

 とりあえず週一で日曜日に教えることに決め、初回は来週の日曜日。紗良の部屋ももちろん楽しみだが、制服やお出かけ用のおめかしした服装ではない普段着の彼女が見れるのも、また楽しみだった。

高校数学って一気に難しくなりますよね。

私もナメてかかって、高1の初めての試験で過去に見たことないような点数をとって、慌てて真面目に勉強したものです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 7/76 >>> 紗良は一緒にいて心地いい相手だった。  この言葉が聞きたかった!  野郎が書く百合になかなかない、精神の相性のよさです。 [気になる点] あぁこのまだ仲が縮まってない…
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