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【本編完結】百合ゲーのサブヒロインに転生したので、全力で推しを守りたい!  作者: 長月
百合ゲーのサブヒロインに転生したので、全力で推しを守りたい!
23/109

23・おやすみなさい

 パジャマパーティと言うからには、可愛いパジャマを用意しなければならない。

 というわけではないのだけど、常識的に考えて、あまりにも適当な寝衣を持っていくわけにはいかない。かといって、気合を入れ過ぎたものを着るのも何か違う。

 適度に可愛く、適度にゆるく。そう考えた結果、ゆったりとしたビッグシルエットTシャツにルームウェアのショートパンツというチョイスになった。寝るまでは、この上に薄手のパーカーを羽織っておくつもりだ。


「わー、やっぱり詩織さんって大人っぽいね」


 お風呂上り、いつもハーフアップにしている髪を下ろしていた私に、紗良が言った。

 湯上り効果か、生足だからか、濡れた髪のせいか。それともTシャツを押し上げているこの胸のせいなのか。自分ではよくわからないが、どうやら寝衣姿は紗良のお気に召したらしい。


「紗良こそ、可愛いわよ」


 彼女が纏っているのは、半袖で前開きの正統派パジャマだ。ただし、ボトムはトップスと同じサテン生地のショートパンツなので、健康的な美脚が目に眩しい。目の保養です、本当にありがとうございました。


「ありがとう。これ、着心地良くてお気に入りなんだー。あ、詩織さん、ドライヤー貸して。乾かしたげる」

「いいの? じゃあ、お願い」


 人の髪を乾かすのは、実は結構難しい。近づけすぎて熱かったり、逆に上手く当たらなくてなかなか乾かなかったり。

 意外にも、紗良はドライヤーの扱いが上手で、優しく撫でるような手が気持ち良かった。ドライヤーの温風も相まって、眠気を誘う。


「詩織さん、もしかして眠い?」


 目を閉じて黙ってしまった私に、紗良が問いかけた。「少しだけ」と言うと、クスクス笑いながら「もう少し待ってて」と手を動かしている。

 されるがままになっていると、「なんだかいつもと立場逆だね」と弾んだ声で言われ、そういえばそうだなと思った。お世話する側とされる側。する側の方が多い私だけど、たまにはこんな風にお世話を焼いてもらうのも悪くない。


「紗良の手、すごく気持ちいい……」


 髪を梳く手の温もりにうっとりと呟くと、一瞬だけ手がぴたりと止まり、また動き始めた。こころなしか先ほどより手つきが荒っぽくなったように感じる。


「はい、でーきた。じゃあ、もう寝よっか」

「ん……ありがとう」

「どういたしまして」


 歯磨きもスキンケアも全部終わっているので、あとはもうこのままベッドに向かえばいい。紗良は歯磨きがまだだったらしく、洗面所へと向かった。

 ベッド……そういえば、奥側と手前側のどっちで寝るか決めてなかったな。紗良はいつもどっちなんだろう。あ、一人だから真ん中で寝てるに決まってるか。だめだ、もう本格的に頭が働いてない。

 それにしても眠い。さっきまではそうでもなかったのに、まるで魔法をかけられたみたいな眠さで、今にもまぶたが落ちてきそうだ。


「あつい……あ、そうだ、パーカー」


 寝る前に脱ぐつもりだったパーカーだけど、すぐに眠くなってしまったせいでほとんど意味がなかったな。布団に入る前に脱いでしまおうとモゾモゾしていたら、洗面所から戻ってきた紗良が扉の前で立ち止まり、ギョッとした顔をしていた。


「紗良、どうかした?」

「どうかって……ううん、何でもない。それ、掛けとくから貸して」

「んー、ありがとう」


 脱いだそれを手渡すついでに、奥と手前のどちらがいいか聞いたら、どちらでもいいと言うので、先に布団に入って奥に詰める。

 枕に頭を沈めたら、意識もずるりと一気に沈み込みそうになった。これはだめだ、あっという間に落ちそう。せめて、紗良におやすみを言うまでは起きておかないと。


「戻ってきたら、詩織さんが脱いでてびっくりしちゃった。普通に脱いでるだけなのに、色気あり過ぎ」


 あー、そっかぁ。それでさっき変な顔してたのか。そりゃね、私はゲームでのセクシー系担当だったんだから、色気はあるはずなのよ。陽子がセクシーポーズおねだりしてくるくらいには。

 そういえば、前に紗良とそんな話もしたような……?


「……あー、そうだぁ、思い出した」

「え、何を?」

「……誘われたかった?」


 半分仕事を放棄してる頭で、いつかの電車のやりとりを思い出して口にすると、顔の上にボフンと枕が飛んできた。


「詩織さん、ほんっとそういうとこ! この状況でそれ言われたら、一緒に寝にくくなるでしょ!? 変な空気になるでしょー!? ――って、もう寝てるしー!」


 バカー! と恨めしそうな声を上げる紗良に、まだ起きていると伝えたかったけど、もう無理。目も開かないし、口を動かすのも億劫だ。

 おやすみなさいと言う彼女に心の中で返事をして、私の意識はすぐに溶けていった。

読んで下さってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 沙織ほんまにあんたって子は……! どれだけ私(読者)を喜ばせたらすむんだい!?
[良い点] 二人ともとっても可愛い!
[一言] 詩織自身の視点だと、お色気担当って感じが全くないので(当たり前)、そういえば言ってたっけって感じで逆に新鮮というか。 ところで、こはるのスペックってどんなのでしょう? 詩織視点だと『ストー…
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