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【本編完結】百合ゲーのサブヒロインに転生したので、全力で推しを守りたい!  作者: 長月
百合ゲーのサブヒロインに転生したので、全力で推しを守りたい!
21/109

21・意識してしまいます

「プレゼントは気持ちだけで嬉しいけど、詩織さんと遊びには行きたいな」


 誕生日プレゼントを一緒に買いに行かないかと誘ったら、そんな嬉しい言葉が返ってきた。

 ああ、可愛い。欲しいもの何でもプレゼントしたい。私の全財産を課金したい。


 今年の7月7日、つまり紗良の誕生日は月曜日だ。

 毎週日曜日は家庭教師の日だが、誕生日の前日だけは勉強をお休みにして遊びに行かないかと提案したのだけど、それに対して紗良は首を横に振った。


「最近習ってるとこ苦手だから、出来れば勉強は教えてほしいんだ。詩織さんの都合が良ければ、土曜はどう?」

「ええ、土曜も空いてるわよ。じゃあ、土曜にプレゼント買いに行って、日曜は勉強でいい?」

「うん! 土日連続で会うの初めてだねー」


 言われてみれば、確かに。平日の朝と日曜日は会っていたけど、土曜に約束するのは初めてだ。つまり、30日の月曜から翌週の金曜日までは毎日紗良に会えることになる。

 幸せすぎて鼻血出そう。ほぼ毎日会える推し、プライスレス。


「あ、そうだ。ねえ、詩織さんさえ良ければ、土曜はお泊まりに来ない?」

「え?」


 ポンと手を打ち、紗良が驚きの提案をした。


「土曜に勉強して、そのまま泊まってもらって、日曜は朝から一緒にお出かけしたらいいんじゃないかな?」

「ああ、なるほど」


 確かに、その方が効率的だ。どうせ翌日にも会うのに、わざわざ出直す手間が省ける。

 何より、紗良の家にお泊まりのチャンス! これを逃す手はない!! だってお泊まりということは、未だ足を踏み入れていない奥の部屋――紗良の寝室に入れるということだ。是非とも入ってみたい、聖地巡礼的な意味で。


「じゃあ、お泊まりさせてもらうわね。一応、親には確認するけど」


 まあ、うちの親なら反対はしないだろう。


「やった! じゃあ、土曜日はパジャマパーティだね!」

「ええ、楽しみね。私、小学生以来かも」

「私なんて幼稚園ぶりだよー」


 土曜は夜更かししようとか、一緒にゲームしようだとか、頬を軽く上気させて話す紗良は、楽しみで仕方ないって感じだ。

 これはもう、万が一ダメだと言われても両親を説得するしかない。


「あ、でも、うちに来客用のお布団ないから、ベッドで一緒に寝ることになるけど、それでもいい?」


 ……マジですか。いや、いいんだけどね。推しとはいえ友達だし、変な気持ちは持ってないんだけど、ちょっと意識してしまうというか。

 あのベッドって、ゲームで葵と睦み合ってたベッドなんだもの。肌色のシーンで。

 紗良には大丈夫だと答えながら、私はほんの少しだけ気まずい気持ちになっていた。



※ ※ ※ ※



7月5日、土曜日。親からの許可も出て、今日は待ちに待ったお泊まりの日だ。

お母さんはあっさりと「いいわよ」と言ってたけど、お父さんは「本当に女の子の家だよな? 実は彼氏とかじゃないよな?」と何度も確認してきて、お母さんに呆れられていた。

 前から紗良の勉強を見ているのは、お父さんも知っているはずなのに。そもそも、女同士なら何も起きないと思ってるのが間違ってるわけで。

 いや、もちろん私と紗良の間には何も起きないんだけど。


「何か起こすつもりはないけど、場所が場所なだけに少し緊張しちゃうのよね」


 なにせ、ゲームでの『葵』×『紗良』のベッドシーンは濃厚だった。詳細は省くが、ゲーム全編を通して一番だと言ってもいい。

 そんな情事の舞台だったベッドで一緒に寝るとなると、ゲームでのあのシーンはこの世界では起こっていないものだと頭で理解はしていても、少しくらい意識してしまうのも無理ないだろう。私だってお年頃なのだ。


 バッドエンドのルートと違って、18禁のシーンがあるのはハッピーエンドのルートだ。

 バッドルートでの紗良の真意を知ってしまった今となっては、どうしても複雑な気持ちになってしまうあの場面。あの時点での紗良の気持ちがどうだったのかはもうわからないが、そこには愛があったのだと信じたい。愛がないまま、嫌々ながらに体を許したとは思いたくなかった。


「はぁ、……ま、考えても仕方ないか。今の紗良は、葵と出会ってもないんだし」


 考えているうちに紗良のマンションの前に着いたので、気持ちを切り替える。

 今日は楽しいパジャマパーティ、明日も楽しいお誕生日デート。漠然とした不安なんて取るに足りないものだと、私はモヤモヤとした気持ちにさっさと蓋をして、紗良の待つ部屋へと上がっていった。

読んで下さってありがとうございます。

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