ねことあーと 4
どこだ……どこだ、どこだどこだどこだ!!
ねこさんはどこに行った……!?くそ!!
そうだ、旅館の従業員さん達、な、何か見てないのか……?
「……っ!」
俺はそのまま飛び出したかったが、何かあった時のために寝間着から着替えることにした。
こういう時こそ、こういう時こそ、冷静にならなければ。
……冷静に……?待てよ……
俺はさっきひどいまでの絶叫をあげたはずだ……
どうして誰も反応がないんだ……?
嫌な予感がする、冷や汗が頬を伝う。
とりあえずみんなを探さないと!
俺は部屋を出てエントランスへ向かう。
いつも誰かがいてくれる受付や、女将さんの部屋を訪ねて見たが誰もいない……
くそっ、嫌な予感がまさか当たるとは……!!
これはつまり……この旅館はもぬけの殻か……!?
思わず旅館を飛び出したが、どこに向かうべきか分からずに立ち止まってしまった……
みんな……ねこさん……一体……一体どこへ……
…… Are We Cool Yet?
どこかで聞いた、どこかで……
その瞬間、寒気がした。
なぜ忘れていたのか、なぜ思い出さなかったのか、なぜ思い当たらなかったのか。
何かのミームか?思考妨害装置でも働かせているのか?
俺は、俺は何をしてるんだ、何を考えてるんだ。
やつらは、Are We Cool Yet?は、そう、思い出した。
財団本部指定要注意団体、アートテロリスト集団じゃないか!!
しまった、しまったしまったしまった!くそ!くそ!!
ダメだ落ち着け、とりあえず、とりあえずあの美術館だ、急げ俺!走れ!!
俺は息を切らせ、汗だくになりながら美術館へも向かった。
……が、ある程度予想はしていたとおり、そこには「何も無かった」。建物ごとすっかり消えてしまっていたのだ。
やはりか……!でも何か手がかりが、手がかりがあるはずだ!
俺は自分の持つ閲覧権限を片っ端から使いまくって資料という資料を読み漁った。
Are We Cool Yet?が日本に美術館を出す情報、俺とねこさんがあの旅館、あの土地へ向かう話がどこからか奴らに流れていないか、誰がどうやってねこさんを攫い、美術館を消したのか。俺は持ってきていたノートパソコンを財団データに繋ぎ、必死になってデータベースに潜り込んだ。
「……あった」
これだ。
『日本の○○町へ調査のために出発。表の名目は美術館の立ち上げ。美術館は立体映像技術を駆使して即時撤退出来るようにホログラムで用意』
と書いてある……
調査……やはりねこさんの事か……?
しかしここまで用意してたとは……
適当な集団だと思っていたが今回は相当な力の入れようだ。
「くそ……」
俺はもう何度目になるか分からないため息をつき、今後の動向を考えた。
女将さんたちもどこかへ行ってしまった以上、自分で出来ることを確実にこなさなければならない。
とりあえず部長達には連絡しておかないと……
「な、なにい!?ねこさんが!?わ、わかった、すぐに機動部隊と調査隊を送るようにサイト管理人に依頼する!」
部長は事の顛末を聞き、すぐに対応してくれた。
…………いつもすいません。
さて、俺に出来ること、俺一人にできることはただ一つ、決まっている。
足で稼ぐこと、だ。
早速俺は歩きだした。
あいつら、ねこさんが狙いだとして……その『目的』は一体なんだ?
やっぱり研究か?それとも興味本位?とにかくろくな目に合わされないのは俺でもわかる。早く何とかしないと。
さっきの調査で意味は無いとわかっているが……とりあえず美術館へ行ってみよう。
「……っ」
やはりそこには何も、何も無かった。