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商人は役に立たないと追放されたけど余裕です

「ライト、今日限り、お前は他人だ」

 酒場でチームと飲んでいると、リーダーのサイコから突然解雇通告が来た。


「な、なんでだ?」

 理解できない。昨日まで、仲良くやっていたのに。

「あんた、私たちのお荷物なの」

 魔術師のエミーがため息を吐く。


「お荷物って……」

「あんたのクラスは商人。戦闘ができない」

「その通りだが……その分、チームの金策に役立っただろ?」

 エミーの言い分はもっともだ。俺は商人というクラスで、本来は冒険者ではなく商売人のほうが向いている。

 しかし、それが分かっていながらも、俺は冒険者になった。

 一年前に、サイコにチームに入ってくれとお願いされたからだ。


「もうあんたの金策は必要ないの」

 エミーはしっしと手を振る。

「今日、私たちはA級に昇格しました。これからは金策に困ることはありません」

 僧侶のアリーが呟く。


「確かに……A級になれば、とてつもない報酬をもらえるようになるが」

「だからこそ、お前はもう必要ないんだ。無駄飯食らいは出ていけ」

 サイコは汚い物を見るような目をする。


「それにあなたが居ると、有望な人材が集まらないのよ」

 エミーはどっか行けと目を細める。


「有望な人材?」

「A級になれば、クエストは今までと比較にならないくらい難易度が上がります。有望な仲間が必要です」

 アリーは落ち着いた声で言う。


「お前が居ると俺たちのチームが下に見られる。だから出ていけ」

 サイコは意見を曲げない。

 それはエミーもアリーも同じだった。


「……お前たちの成功を祈っているよ」

 俺は席を立つと、一目散に店を出た。




「どうするべきか」

 宿屋を引き払うと、道端でぼんやりする。

「ライト! 暗い顔してどうしたの?」

 突然、S級冒険者のマーガレットが隣に座った。


「実は、チームから追い出されてね」

「話を聞かせて」

 マーガレットは身を乗り出した。


「は~。ライトの凄さを理解できないなんて、アホな奴らね」

 経緯を説明すると、マーガレットは馬鹿でかいため息を吐いた。


「戦闘に使えないのは事実だからな。仕方がない」

「そうかもしれないけどね~。金の力を理解できない奴が、この世に居るなんてね」

 マーガレットは足を伸ばすとパタパタさせる。


「ポーション、剣。鎧。杖。それらすべて消耗品。それなのにお金の大切さを知らないなんてね」

 確かにその通りだ。

 冒険者は、意外と金食い虫だ。

 装備や準備にとてつもない金が必要なのだ。


「私だったら、ライトのこと絶対に手放さないのに」

 ぶうぶうと頬っぺたを膨らませる。

「俺は戦闘できないぜ」

「だから何? 商人クラスの役目は、チームのお金の管理。それができないと、冒険者なんてやってられない」

 マーガレットは頭が痛いと項垂れる。


「商人クラスは通常、商売人になる。だから冒険者になる商人はそれだけで引っ張りだこなのに、追い出すなんて」

 そうだったのか……知らなかった。


「どうしてサイコって奴は、あなたを追い出したの? チームの財布だったんでしょ?」

「金にうるさかったから、うっとうしいと思ったのかな?」

「金にうるさいのは良いことなのに」

「あと、A級になったから、金策する必要が無くなった」

「ちょっと待って! あなた! 金策ができるの!」

 マーガレットはキスができるくらい顔を近づける。


「魔物の素材を活かした料理とか、装備品とか、色々発明した。それである程度、お金をもらった」

「もしかして! この呪い除けのブレスレットも!」

 マーガレットは綺麗な腕に巻き付く禍々しいブレスレットを指さす。

「呪いは致命的な状態異常だって聞いたから、それの対抗策が必要だと思って」

「必要も必要! これができたからアンデッド退治がC級に成り下がった! 前まではA級クエストだったのに!」

 そんなに驚かれることだったのか……


「ライト! 私のチームに入って!」

「マーガレットのチームはS級だろ!」

「専属の商人が、商売のほうが儲かるって出て行っちゃったの! 気持ちは分かるけど!」

「でも……突然S級なんて」

「お願い入って! じゃないと他のチームに引き抜かれる!」

「他のチームに?」

「私がライトに話しかけたのは商人クラスだったから! 他のチームが声をかけるよりも先に唾つけたの!」

 なんてこったい。


「お願い! 私のことは好きにしていいから!」

「そこまでは要らない」

 少し考える。

 答えは決まっていた。

「なら、今日からよろしくお願いします」

「決まりね! すぐにチームのメンバーに紹介するから!」

 俺はマーガレットに引っ張られて、高級宿屋に行く。


「追放されたけど、結果オーライか」

 俺は明日も冒険者だ。

 前のチームよりも、楽しくなりそうだ。


■■■【一方、サイコチーム】■■■


 サイコ、エミー、アリーは絶望していた。

「装備を整える金がねえ」

「ポーションってどれくらい必要なの?」

「食料はどれくらい必要なんでしょうか?」


 三人は金の管理をライトに丸投げしていた。

 だから必然的に、消耗品、装備品の買い出しも任せていた。


 今はそれを後悔するしかなかった。


「すぐにライトを連れ戻すぞ!」


 結局、三人はライトに頭を下げた。


 ライトが三人にどんな対応をしたのか、それは別のお話となる。

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