いっこめ
「それでは各自、自己紹介してくれ。じゃあ、相田から」
相田という名前の生徒が自己紹介を始める。
それを皮切りに、各々が名簿順で自己紹介をしていく。
中学校の部活や、高校での意気込み。各々が短い自己紹介をしていく。
━━その時、俺は一目惚れをしてしまった。
色白なその女に。
「榎本観月っていいます。京都出身なので、京言葉がキツイかもしれませんが、こっちの言葉に慣れるように頑張っていきますのでよろしくお願いします」
そうして軽くお辞儀する彼女の、背中で揺れた黒い髪がやけに記憶に残った。
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しばらくして、俺の順番が来た。
椅子を引いて立つ。
「えー、関根 岳と言います。中学ではバスケ部でした。えー...よろしくお願いします」
パラパラと気の抜けた拍手が教室を埋める。
椅子を引いて座る。ギィーと椅子の足と教室の床が摩擦で音を立てるのが、なんだか居心地が悪く感じた。
「それじゃあ、教科書を取りに行く代表、出来れば男がいいな。立候補してくれ」
おまえいけよ。やだよめんどくせえ。
その様な男の会話が疎らにそこらから聞こえる。
中学の同級生だった人達なのだろうか。
既に関係が構築されている時点で、孤独を感じないのは心底羨ましいと思った。
6人ほどが手を挙げ、担任の後を追って教室のドアから出ていく。
すぐに、教室内では歓談が始まる。
やけに女子の声が響くように感じた。
暫く経つと両手に教科書が入っているであろうダンボールを持った担任と男たちが戻ってくる。
そうして各自、教科書を配布され、家に帰った。
それが入学式の後のレクリエーションだった。