僕
四月七日金曜日―僕が今日この甘美で儚くそれでいて悲劇的なストーリーを書くのは、何も僕という男の人生に劇的な幕を下ろしたいからではない。僕が自らの愚行の詳細を綴らずともいずれは明らかになることだとも自負している。
それでもこのように机に向かい筆を取るのは単に欲求を満たすためなのだ。
僕は厭らしい人間である。僕は邪な人間である。
これから君が目にするであろう疎ましい僕の説話は勿論フィクションではない。むしろ独逸語でいうところのビルドゥングスロマン所謂【教養小説】だと思ってほしい。但し僕にゲーテの様な文才を求めてはいけない。
僕は僕を恥じている。その自責の念から書いているとも言えるのだから。
僕は18で死んだ。
勿論それは終焉という意味ではないし、又殺したか殺されたかもこの際どうでもいい。
ただ僕は18に死んだ。
そして此の死には僕と秀平と潔子さんが関係している。
恥ずかしいが僕はこの二人以外に友達というものを持たなかった。(尤も表面的な馴れ合いは別として)
秀平は僕よりも一つ年上で、潔子さんは僕より三つも上だった。
三人は考えも良く似ている。例えばSNSを介する社会の流行りは自己という仮面を被った偽物に踊らされた者の底辺だと信じて疑わなかったから勿論現代の末端に取り残され孤立しているわけであるのだが僕にはそれがどうも心地良かった。
秀平は男である。潔子さんは女である。
男女と殊更に明記したのは何も男尊女卑的な思考を持ち合わせているわけではないことを先に断っておこう。
只この先、この性別によって僕が酷く苦しむことを君に示しておきたいだけだ。(そして僕は男である)
君は僕が長々と話を書き続けているにしてはその心髄に触れないことを焦ったく感じていると思うが許してほしい。
僕はこれから一世一代の告白を見ず知らずの君にするのだから
そしてもし全てが露呈するとき屹度君は僕を軽蔑する筈だ。(尤も最初から尊敬しているとも思ってはいないが)
この長い前置も君への頼み事の為に書いている。どうか、此の生命の灯が勢いを失っていく様を見た後に僕を葬ってくれ。君の手で本当に僕を殺してくれ。
僕は僕自身が罪悪で堪らない。