表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/61

九夏3000キロ

 葬式では色々な人が泣いていた。


 フライングして施設で少し泣いたオレは、むしろ涙は出なかった。


 反対に、鉄朗は目を赤くしてぐずぐず言っていた。会ったのはたった一度だけやのに。でもその気持ちはよく分かった。



 葬式が終わると、葬儀屋の送迎バスで火葬場へ向かった。


 火葬が済むまでには時間が掛かる。その合間、葬儀場へトンボ返りして、昼食を摂る手筈になっていた。



 火葬場を出て、振り返り、煙突を見上げる。


 煙突から白い煙が出ている。オレはその煙を見ながら、鉄朗に尋ねた。



「あのタイトル、どういう意味なんや」


「あれか。3000キロは、あの旅で走った距離やな」


「そら分かっとる」


「あぁ。九夏ってのはなぁ――」



 夏の九十日間のことなんだよ。



「……そういうことか」



 二年間の旅の合算日程は三十日。



 オレの三十日、鉄朗の三十日、そして爺ちゃんの三十日。



 オレたちは確かに旅をした。


 雲の中に溶けていく煙を見ながら、オレはそう思った。



「帰りの時間もあるし、葬儀場戻ったら儂は行くわ」


「おう。悪かったな」


「いや、来られてよかったわ」



 おとんが「バス来たぞ」と言って手を振った。


 葬儀屋に戻り、鉄朗はカブに乗ってヘルメットを被ると「じゃあな」と言って走り出した。



 またな、とは言わなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ