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最後のトラブル

 葬式会場で半年ぶりに会う鉄朗は、いくらか背が伸びたようやった。



「おう」と鉄朗が手を上げる。


「おう」とオレが答える。


「ここまで何で来たん?」


「カブ」


「やるな」



 挨拶はそれくらいのもんやった。



 鉄朗は納棺の儀の場にも呼ばれた。親戚の間ではオレと旅をした人として名が通っていたので、疑問には思われなかった。



 伯父と叔母の家族も集まり、納棺の儀が始まる。婆ちゃんは車椅子に乗ってやって来た。葬儀屋の人は丁寧に説明をしながら死装束を整えて、故人が愛用した副葬品を納め始めたとき、オレは「あ」と思った。



「ノートが無い」と鉄朗が言う。


「おとん、施設から旅のノート持ってきてくれた?」



 聞くと、おとんはギョッとした顔で固まった。



「何してんねん……」



 オレがぼやくと、叔母さんが頭を掻いて「ここから施設まで行ったら葬式始まってまうけん、どないしょうと」言う。



 すると、従姉妹の姉ちゃんが「野武彦」と呼んでキーを投げた。


 投げられた鍵をキャッチする。リトルカブのエンジンキーやった。



「喪主が間に合わん訳にはいけんでしょ。車で家まで送ってあげるから、あんたそこからバイクで施設まで行ってき」



 姉ちゃんが手提げの鞄を持って言うと、鉄朗がカブの鍵を手に持って「儂も追いかける」と言う。オレは頷いた。

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