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二十七日目の3 バトルオブ屋久杉ep.3

 苔の生す山の中、オレたちはひたすら階段を登り続けた。


 雨と湿気に疲弊しながら、ようやく辿り着いた中継地点にはウィルソン株、という巨大な屋久杉の切り株があった。



 切り株は空洞になっていて、根の分け目から中に入ることが出来る。切り株の中から空を見上げると、その切り株の縁がハートの形になっているらしいが、どこから見れば丁度良いのか分からず、他の登山客も多かったので、オレたちはハートを諦めて株の中から出てきた。



「ウィルソーン、アイムソーリー、ウィルソーン」



 トムハンクスのモノマネをしながら、更に上を目指す。



 二時間。登り続けていよいよ縄文杉の前にやってきた。


 樹齢およそ三千年。


 特に理由もなくここをゴールと決めたんが去年の梅雨ごろ。


 今、そのゴールに辿り着くのかという感慨を胸に階段を登る。



「やっとやな」



 鉄朗がぽつりと言った。オレは一層神聖な気持ちになって歩みを進めた。



 そして縄文杉と出会った。



 だが、結論から言ってオレはがっかりした。


 確かに縄文杉は辺りの屋久杉と比べても遙かに荘厳で、25メートルにもなる樹高は身に迫るほどの勢いがあった。



 問題は縄文杉の前に置かれた物見台。


 床を黄色いストライプで塗られて、ここから出るな、と殊更厳しく注意されている気がする。毒々しい黄色のお陰で景観も台無し。



 オレは自分でも驚くほどの怒りとやるせなさに打ちのめされた。


 旅って言ったって、ただ北から南へ駆け抜けるだけやったのに。


 どんな物が待ってたって、なんだってよかったハズなのに。



 鉄朗も同じ感想を抱いているようで、看板にあった「立ち入らないように」という注意書きを睨んどった。



 そんな時にふと思ったのは、出雲の大注連縄のことやった。


 あそこまで大きなもとは言わずとも、警察のキープアウトテープみたいな品の無いもんにはせん方法があろうと思った。



「ケチが付いたなぁ……」



 愚痴を言いながらも、写真に収め、また四時間かけて下山した。


 下山しながら、オレは何をこんなに残念がっているのだろうと反芻していた。


 答えらしきものは出なかったが、この気持ちも正直に記録するべきだと思った。



 望んだような美しいゴールでなくったって、ゴールはゴール。


 オレはここへ来たことだけでも、誇りに思えばいい。


 この残念な気持ちだって、旅に出なきゃ分からなかったハズだ。



 考えてみれば、一体どれだけの人が、幾つ有終の美を飾るのか。


 誰もが成果の出ない日々を生きている。でも、成果が出なかったことと、何もしなかったことは違う。



 オレは旅をした。


 そして縄文杉前の物見台にがっかりした。そんな結果が出た。



 望まない結果は腐葉土みたいなもんだろう。


 土地さえ豊かになれば、いつか誰も知らなかった森が育つ。



 そんなことを思う帰路やった。


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