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二十五日目の1 角島、素通り

 朝、海沿いの道の駅から内陸へ向かって関門トンネルへ向かおうとしたが、出発前の鉄朗の「角島が見たい」の一言で引き続き山陰を走ることになった。



 角島は山口県の北西端にある離れ島で、本州とその島とを繋ぐ角島大橋が有名だそうで、角島そのものよりはその橋が見たいらしい。



 よく晴れた日本海沿いを走り続けて、十一時。角島大橋の前までやってきた。


 無料で通行出来る橋の中で最長の長さを誇るそれは、前評判通りに良い景色だった。



 透明度の高い海の上をずーっと伸びていく一本の橋。奥の方では児島を迂回して左に緩いカーブを描いて、まだまだ先に続いている。


 名所ということもあって観光客の数も多く、車もバイクも入り口の方に固まって順番を待っていた。



 それを見ていたオレと鉄朗の心の内は一致した。



 面倒くせぇ。



 どちらともなく「島には行かんでええか」と切り出し、関門トンネルを目指した。



 角島大橋から少し離れたコンビニで昼飯を食べて、関門トンネルに着いたのが十三時。自転車や原付が下関海峡を渡るのには、自動車用とは別の道があって、その入り口には無人の料金箱があった。



 鉄朗が箱に近づいていく。オレは鞄から財布を取りだして「なんぼ?」と聞いた。



「二十円」


「にじゅうえん? そんなこたあらへんやろ」



 オレは鼻で笑いながら、バイクのスタンドを下ろして箱に近づいた。



「……二十円」オレは眉をしかめた。


「二十円って、五円チョコも買えへんがな」


「買えるわ。四人のちびっ子が満足するわ」


「でも二十円って、もう無料でええやんな」


「ほんまやな。むしろ二十円くれよな」


「何の小遣いやねん。駄菓子も買えへんわ」


「自分ものすごい早さで五円チョコのこと忘れるやん」



 料金箱の前でぐだぐだ言ってると、後ろに並んでたオバちゃんが笑い出した。鉄朗が「すんません」と言ってバイクを避けると、オバちゃんは関門トンネルの通路に入るエレベーターのボタンを押して「歩行者は無料なのにねぇ」と言って笑った。



 しょうもないやり取りはそれまでにして、料金箱に四十円をぶち込んでエレベーターを待つ。



 関門トンネルの中は四角い通路が一本に伸びていて、天井はサイケデリックに青く、左右は水色の壁に挟まれとった。


 透視図の見本のようなその通路に、オレは思わず「キューブリック」と呟いた。


 空かさず鉄朗が「マーダー……」と溢す。



 ヒアーズジョニー、の合図でバイクを押して歩き出す。


 約780メートルの通路をひたすら押して行くのは少し疲れた。


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