表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/61

施設から施設へ



 爺さんが転んだっちゅう因縁の自転車に乗って、まず婆ちゃんの見舞いに行った。


 山間の町で坂ばっかりあるもんやから、まだちょっと肌寒い春でもアホほど汗を掻いた。介護施設から認知の医療施設のある場所が真逆にあったから、戻りの道を思うとうんざりした。


 


 時々休憩しながら、三十分坂を登って婆ちゃんの施設に辿り着いた。婆ちゃんは想像より元気で、遠いところからよぉ来たなとか、ちゃんとご飯食べ取るかとか、みんな元気しちょーかとか、昔と同じようなことを聞かれて、オレも昔と同じように「ぼちぼちな」と返事した。



 四十分くらいの面会を終えて、最後にこれでお昼食べぇ、と五千円の小遣いを握らされて、やはり昔通りにそれは貰ったけれども、見舞いを都合にカネ集りに来たみたいで悪い気がした。



 挨拶もそこそこに施設を後にしようとしたら、帰りは坂道なんで転ばんように、と言われて、「爺ちゃんみたいにな」と口を滑らしかけた。おとんの悪影響やろう。



 家まで戻る途中、個人経営のハンバーガー屋に寄ろうと思った。子どものころによく来て食べたそのハンバーガーは、何でもかんでも大盛りになって出てきよる。


 クソでかいジュースに、どないしたんやってぐらいのポテトと、アホみたいなバーガー。そういうもんは大概味は悪いもんやけど、何でか味もええ。しかも安い。


 やっていけんのん? と子ども時分に心配になって店主のおっちゃんに聞いたら、「いけんいけん」と笑って言う。


 どうせならそこに行こう。



 坂を下りきって、交差点を曲がってまた少し坂を登る。



「あ」



 更地になってた。



「アカンかったか……」



 経営がもう一つやったんか、それとも死んでもうたんか。


 田舎はどこも高齢化やのう、と呟いて、道を戻っていった。すぐ近くにチェーンのバーガー屋を見付けたが、そこには入らんかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ