34/61
二十三日目 提出
バイクを引き取りに行ったあと、そのまま婆ちゃんの見舞いに行った。
婆ちゃんは特に変わりもなく、この二ヶ月で二度も来てくれてどうも、と礼を言われたが、それに対して鉄朗が「いえいえ」と答えたので、お前は来とらんがなと突っ込むと婆ちゃんは笑っていた。
六月に来たときは自転車だったが、今はバイクなので、長い坂道も簡単に登って爺ちゃんの施設にやってきた。
こちらも大きな変わりなく、会話もそこそこに、旅の記録を渡した。
「これは?」
「言うとったがな。旅や。行ってきた」
そう言うと、爺ちゃんは笑って記録を受け取った。
だが、読んでいる内に小さく震え出して、泣き始めてしもうた。
「どないしたん」
と聞くと、爺ちゃんは、ありがとう、ありがとう、と繰り返して、それから、
「足が悪なる前に一回でも旅をしたかった。だけぇ、孫が行ってくれて良かった」
「それは……」
前に聞いた、と言おうとしたところで、鉄朗が肩を叩いた。
オレは頷いて、そら良かった、と爺ちゃんに言った。
施設を出てバイクに跨がりながら、やっぱり最後まで行くべきやったなと言うと、鉄朗は「帰ろう」とだけ言った。
そして夏が終わった。




