二十~二十二日目 旅の記録
三日間に渡って少しずつ、オレたちはこれまでの旅の記録を付けた。
現像した写真のどれを使うかを選び、ノートに順番に貼り付けていっては、鉄朗と写真にコメントを付ける。この旅が想像出来るように、オレたちは日本地図を書き、どんな道順を辿ったかも書いた。
およそ2000キロに及ぶ距離。
辛いことばかりやったなぁ、と鉄朗が言う。
雨に打たれ続け、寒さに凍え、動物に怯え、ひたすらに走り続け、風呂は時々にしか入れず、寝るところを探す毎日。
写真に付けていくコメントも、基本的にはどんなことが大変だったかを書いた。
しかしそれでも、写真を見ながら時々、良い旅だったと思うことがある。
見通しの良い道路を撮った写真には、そこで吹いた風を思い出す。
他にも、土地ごとに食べたものの味、北海道の広い空、全国各地で見られる田園の緑、あの祭囃子、蝉の声、砂丘の細やかな手触り、潮の香り。
それから、エンジンの音。
「終わったなぁ」
鉄朗が最後の写真にコメントを付けて言った。
数日前にみた花火の写真。『ゴールの花火』と書いた。
「本当はゴールちゃうんやけどなぁ」とオレが呟く。
「言うたってしゃあない。ほんじゃあ、明日見舞い行って、終りやな」
「うん。晩飯、なんかええもんでも食いに行くか」
「うなぎとかええんちゃう」
ほなええとこあるわ、とオレは昔爺さんとよく行った店に案内した。
思いの外に高級で一瞬ウッとなったが、旅の最後やし、ということで食べることにした。
うなぎは良い山椒の香りがした。




