表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/61

田舎に到着



 夜行バスを降りてから、まず朝飯を食うことにした。


 駅の近くにある複合店で食いもん探してたら、大きく『海鮮丼980円』と書かれたのぼりがあったから、ええがな、と思ってそこに決めた。



 奥まった通路を進んで店に入ったら、他に客が見当たらんで、こりゃハズレか、と思った。しかし、ようよう考えると夜行バスを降りてまだ朝早く、開店直後な訳で、こんな朝イチに海鮮丼食おうっちゅうアホは居らんやろう、オレ以外に、と思い直した。



 店員がやってきてすぐメニューを開いて、のぼりにあった海鮮丼を頼もうと思ったが、まて、ここ内陸やぞ。沿岸で海鮮丼をフューチャーすんのは分かるけど、こいつら一体何を自信満々に提示しとんのや、と気になった。やっぱハズレなんか、と難しい顔をしてメニューを凝視してたら店員が、



「お決まりですか?」


「あ、え、海鮮丼で」


「かしこまりましたー」



 勢いで頼んでしもた。


 ほんで案の定、微妙な海鮮丼やった。



 がっかりしながら爺さん家に行き、おとんから預かってた鍵で家の扉を開けたら、海鮮丼よりがっかりした。子どもの頃の記憶より、玄関が三周りくらい小さい。


 自分の成長より、過ぎてしまった時間に落胆した。田舎に着いて早々、こんな哀しい目に遭うとは。このままではいかん、と思って、靴を脱ぎ捨てて玄関を這い回りながら叫んだ。



「ノルマンディ上陸じゃぁあい!」



 廊下をバタバタ走って台所に入り、台所のテーブルに積もった埃を手で叩きながら居間に向かう。居間から隣りの客間へ前回り受け身をして飛び込み、まだまだぁ! と奇声を上げて阿波踊りを踊りながら玄関に戻り、ガレージへの扉を開ける。



「ガレージ阿波踊りの誕生や!!」



 自分でもよく分からんことを言いながら、ガレージの電気を付ける。


 そしたら灰色のカバーに覆われたモノを見付けた。



「なんやこれ」



 素に戻って、カバーを取り外す。そこに白い原付があった。


 カバーが掛けられていたこともあって、埃にはやられていない。


 おもむろに跨がってみる。ハンドルを掴んで、一度左のグリップを捻ってみたが回らず、じゃあ右か、と思って回してみたら回った。



「おぉ~……」



 無意味に感嘆して、回るハンドルをまじまじと見てたら、キーが刺さりっぱなしになっているのに気付いた。


 少し緊張しながら、そのキーに触れ、回してみる。が、



「なんや、壊れてるやん」



 鍵を回しただけでエンジンがつくもんやと思ってたオレは、三度がっかりして、婆ちゃんの介護施設から見舞いに行くことにした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ