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十六日目 逗留の2

 バイクの故障で田舎に足止めになって二日目。


 オレたちは久しぶりに惰眠を貪って、昼過ぎに目を覚ました。



 バイク屋からの連絡があるまではやることもなく、鉄朗はその辺を散歩してくると言うて出かけてしもうた。


 オレはというと、近所にある貸本屋に向かった。夏休み、子どもの頃、このこぢんまりとした縦長の店にやってきては漫画を借りてよく読んだ。大手のレンタルショップと違って、目の行き届く範囲で店内が完結しているからか、何を借りようか悩む時でさえ楽しかった。それは今も変わらんかった。



 昔よく読んだ漫画と、最近に出た漫画の二種類を合わせて二十冊ほど借りて、家路を辿る。久しぶりに長い距離を歩いたら、途端に汗で背中が濡れた。



 汗だくになって、あぁ、夏やなぁ、と思う。



 暑ぅて、蝉がやかましいて、陽炎が揺れとる。


 近くを子どもが虫取り編みを振り回しながら駆けて行った。


 ええなぁ、と思った。



 家に戻ると、家の前に鉄朗が座って待っとった。



「鍵あいとるやろ」


「いや、勝手に入ってえんかなぁ思って」


「田舎にセキュリティーもクソもないわ」


「泥棒天国やんけ」


「だぁれも大した金もっとらんわ」


「ほな泥棒ぬか喜び天国やんけ」


「どっちか言うたら地獄やろ」


「夢まぼろし! 泥棒、ぬか喜び地獄ぅうう~~!」鉄朗は人差し指を立てた手を空に向かって指し、それを小刻みに揺らしながら言った。



「なんのタイトルコールやねん。ええから入れや」



 その日は、オレが借りてきた漫画をひたすら読みふけって終わってしまった。



「明日連絡無かったらどうしようか」と鉄朗が布団に潜りながら言った。


「うーん……。あ、明日近所の川沿いで花火大会あんで」


「男二人で夏祭りぃ?」


「別にええやないか。嫌やったらナンパでもしたらええやん」


「ナンパとかしたことないわ。どう言うたらええねん」


「オレかてしたことないわ」


「でも前の彼女とPLの花火見に行っとったやないか」


「彼女や。ナンパした訳ちゃうわい」


「ほな何て言うて付き合ったんや」


「話の趣旨変わっとるやないか」


「それを参考にするから。言うてみて」


「普通や普通。付き合えへん? て言うただけや」


「ほんで向こうはどう言うたんや」


「ええよ、って」


「っかぁー。なるほどね。儂もそれでいくわ」


「ナンパでか?」


「せや。こら上手くいくでぇ」


「初対面やぞ。絶対捕まるやん」


「そんなもん捕まったったったらええねん」


「ええことあるかい」



 蚊取り線香(夏のゴング)を炊いて、網戸にした窓からは、鈴虫やコオロギたち、松虫などの鳴き声が聞こえている。


 自然と寝付くまで、そんなしょうもない話をしながら、夏の音を聞いていた。

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