表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/61

十一日目 心の景色とボンダンス

 北海道から雨と曇りの続いた九日間、この日ようやく天気が張れた。


 秋田に入って日本海沿いを走った昨日、そのまま南下して新潟に入り、今日は次の目的地を「道の駅風の丘米山 」に決めた。


 


 その距離、およそ150㎞。これまでの経験から、七時間ほどだろうと推測して走り出した。



 雲の無い青い空、青い海、海岸線。


 これでもかという位の夏が、ようやくオレたちの前に現われた。



 海を右手にひたすら走っていると、海へと降りる階段を見付けた。


 ちょっと寄ってみるか、と二人で浜辺に足を付けた。



「なんじゃあれ」



 鉄朗が浜辺のずっと先を指して言うた。山をくり抜いてトンネルを掘られた道の脇に、妙な空洞がある。砂を踏んで歩いて行ってみると、入り江があった。



 三角に抜かれた自然の岩の屋根の隙間を縫って、海水が静かに流れ込む。


 海面に当たる太陽光が反射して、岩の屋根をきらきら瞬かせとった。



 入り江を避けて更に浜辺の奥へ行くと、今度は人工的に作られた洞穴と出会った。


 明かりはなく、出口の景色だけが覗き穴で見たように映っている。



「めっちゃ怖い」とオレ。


「写真撮ったら、どえらいもん映るんちゃうか」


「止めとけ。カッパの呪いで十分や」



 写真には撮らず、洞穴を進んで見る。抜けた先にあったのは、そり絶つ岩石が散らばった荒々しい海やった。


 オレたちはしばしそこで「修業編」と言って岩の上を飛び跳ねたりポーズを取って写真に収めたり、流木の上を歩いたりして遊んだ。



 満足して、バイクに戻り、走る。


 途中とんかつ屋で昼食を食べて、また走る。



 日本海に夕陽が落ちてきた。


 なだらかな海の上に、一筋のオレンジが伸びていく。地平線の海は黒が濃い。


 群青の空は、夕陽との狭間に僅かな黄色と緑を滲ませていた。



 晴れていれば、ここには何時もこの景色があるんやな。


 そう思うと、オレは心に景色を持った気がした。


 誰にも奪われへん景色。もしかしたら、旅人たちはそれを探しとるんかも知れん。



 バイクを駐め、写真を撮る。


 本音半分、バカにされるつもり半分で鉄朗に「いやぁ、心の景色だな」と言うと、思い掛けない言葉が返ってきた。



「爺さん、喜ぶとええな」



 ほんまにな、とオレは答えた。



 暗くなった海岸線をひたすら走ると、太鼓の音が聞こえてきた。


 近寄ってみると『納涼、盆踊り大会』と書かれた灯籠を見付けた。



「お、ボンダンスか。ちょっくら邪魔するか」と鉄朗。


「ええなボンダンス。ボンダンスしばこう」



 少しだけ祭に参加して、名の通り丘の上にある道の駅へ向かい、一日は終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ