表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/61

旅の切っ掛け

 終業式が終わって次の日に夜行バスに乗った。

 ターミナルに夜中に大荷物を持って一人でおったら、何か悪いことして逃げてるような気がした。たぶんまだ爺さんを可哀想やなって思う気持ちと、見舞いくらいしか出来んっちゅう申し訳ない気持ちがあったからやろう。



「……様、……野武彦様いますか」



 原色の青色でてらてらした椅子に座ってたらいつの間にかうとうとしてて、名前を呼ばれてハッとなった。顔を上げたら、バスの誘導をしとる制服を着たおっさんが小さいメモ帳を見ながらターミナルをきょろきょろしてる。


 慌ててカバン持って近寄ったら丁寧な言葉で案内をされたけど、その態度が「手ぇ患わせんなや」っちゅう感じで腹が立った。



 基本的におっさんは態度悪いな、と思いながらバスに乗り込んで自分の席に座ったところで、でもそう言えばさっきまであった罪悪感みたいなもんが消えたな、とも思った。怒りで感情が上書きされたらしい。オレは単純でアホやな、と呆れた。



 バスが高速に乗って車内灯が消えたとき、鉄朗からラインが来た。



『明日カラオケ行こや』



 何でもない文章。やけど夜行バスの中でされる誘いの連絡は、嬉しさと寂しさが綯い交ぜに感じられる。それを正直に言うとキモがられるから、ボケて返した。



『いま夜行バス。逃げてんねん』


『誰から?』


『お前からじゃ!!』


『まさか、家に仕掛けたGPSがバレたんか? クソッたれ!』



 家にGPSって、めっちゃ無駄やんけ。ほんで口悪いなこいつ。


 少しの間しょうもないやり取りをして、それから眠った。



 バスに揺られて見た夢は、地球外の小さな星で巨大なゴリラに襲われながら女の子を助ける夢やった。わしゃコブラか。と思った。



 終業式が終わって次の日に夜行バスに乗った。


 ターミナルに夜中に大荷物を持って一人でおったら、何か悪いことして逃げてるような気がした。たぶんまだ爺さんを可哀想やなって思う気持ちと、見舞いくらいしか出来んっちゅう申し訳ない気持ちがあったからやろう。



「……様、……野武彦様いますか」



 原色の青色でてらてらした椅子に座ってたらいつの間にかうとうとしてて、名前を呼ばれてハッとなった。顔を上げたら、バスの誘導をしとる制服を着たおっさんが小さいメモ帳を見ながらターミナルをきょろきょろしてる。


 慌ててカバン持って近寄ったら丁寧な言葉で案内をされたけど、その態度が「手ぇ患わせんなや」っちゅう感じで腹が立った。



 基本的におっさんは態度悪いな、と思いながらバスに乗り込んで自分の席に座ったところで、でもそう言えばさっきまであった罪悪感みたいなもんが消えたな、とも思った。怒りで感情が上書きされたらしい。オレは単純でアホやな、と呆れた。



 バスが高速に乗って車内灯が消えたとき、鉄朗からラインが来た。



『明日カラオケ行こや』



 何でもない文章。やけど夜行バスの中でされる誘いの連絡は、嬉しさと寂しさが綯い交ぜに感じられる。それを正直に言うとキモがられるから、ボケて返した。



『いま夜行バス。逃げてんねん』


『誰から?』


『お前からじゃ!!』


『まさか、家に仕掛けたGPSがバレたんか? クソッたれ!』



 家にGPSって、めっちゃ無駄やんけ。ほんで口悪いなこいつ。


 少しの間しょうもないやり取りをして、それから眠った。



 バスに揺られて見た夢は、地球外の小さな星で巨大なゴリラに襲われながら女の子を助ける夢やった。わしゃコブラか。と思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ