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五日目の2 グッバイミラー

 摩周湖を出たあと、鉄朗のアイデアで無料の露天風呂に入ることにした。


 からまつの湯、という川沿いにある露天風呂で、誰もが無料で入れるらしい。



 途中農場を横切りながら、農場独特の臭いに「獣の臭いや!」と喚きながら牛の横を通り過ぎ、からまつの湯に近づく。



 午後4時に風呂の近くまでやって来ると、露天風呂があるところまで公道は続いておらず、最後の道は砂利になっとった。



「やっぱええか」



 突然、鉄朗が言う。



「え? ここまで来たやん」


「もうええんちゃう?」


「何やねんそれ。もうすぐそこやんけ」



 オレがそう言うと、鉄朗は渋々アクセルを回した。


 それで砂利道に入ると、



「ぐぅあああああ!」



 オレは砂利にタイヤを取られて豪快にスリップした。その勢いたるや凄まじいもので、左右についていたバックミラーの一つが根元から折れるほど。



「だから言ったやん。砂利滑るでって」


「言うてへんわ!! 言うてへん! 一回も! 言うてへん!」


「へへへへへ」


「なにワロとんねん!」



 倒れたバイクを起こしながら怒る。折れたミラーを「やっちまった」と言いながら拾い、他に損傷が無いか調べる。一度エンジンを切って、それから再点火してみると、キックが詰まるような感じがした。



「まあ、動かん訳ちゃうしな……」


「そんなことで壊れへんって」


「そうやとええけどなぁ」



 自分もいくらか切り傷があったが、それ以上にバイクを心配しながら、風呂まではバイクを押して行った。



 露天風呂を短く切り上げ、今回の宿泊地である桜ヶ丘森林公園オートキャンプ場へ向かう。その途中で「ぽっぽ亭」という定食屋で頼んだ豚丼が美味かったのが、せめてもの救いだった。



 今日は午後七時ごろにキャンプ場に来て、早めにテントを立てて眠ることにした。



「今日は散々やったわ……。北海道来てから毎日やけど」


「儂はけっこうええ日やったけどな。雨もそない降らんかったし」


「そらアンタはええやろな」


「そんな怒んな――」



 突然、横になっていた鉄朗が飛び起きて、テントの隅を見た。



「何かに触られた」と小声で言う鉄朗。


「熊か……!」



 二人の心拍数が一気に跳ね上がる。


 しばらくテントの隅を見ていると、外側からテントを押された。


 だが、ずいぶん小さな動きやった。



 鉄朗と顔を見合わせ、ゆっくりテントを出てみると、そこにただのキツネが居た。



「くぅああビックリした。森に帰れ!」



 鉄朗が両手を上下に広げて威嚇すると、キツネは全速力で疾走して逃げて行った。 色々と心臓に悪い一日やった。 


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