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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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死んだのはきっと僕

作者: 野良猫

両手が真っ赤だ。赤というよりは黒の方が近いのか。視点を床に移すと今度は真っ赤な家族が倒れている。見た目は家族だとわかるのだが、何か違うような感覚。魂がもうここにはないからなのか。別人のような気もしてしまう。状況判断ができず気を失った。

目覚めると、太陽の光がギラギラと鬱陶しく、現実に帰ってきたことに気づく。「夢…。」と呟き起き上がる。いつから大人になったのか、気づけば26歳。フリーター。夢もない。こんな僕が完成していた。目をこすりながら歯を磨き、今日も深夜の居酒屋バイトかと溜息をこぼす。着替えてすぐ家を出て10分ほど歩き、最寄りの駅から電車に乗る。小さい頃から自分はどこかネジが外れているんではないかと思うほど考えることがおかしい。もし、今乗っている電車が脱線して車体が転がったら、この手すりに捕まってれば僕は助かるのか。でも人が転がってきたらどうするか。とか。小学生のころは、授業中にナイフを持った不審者が侵入してきたら面白いのにな。なんて考えていた。周りが聞けばただのサイコパスっていうのは僕でもわかっている。修学旅行で行った沖縄の防空壕なんかも歴史を知るというよりは、昔ここでこんな死に方した人がいるのか。と防空壕の壁の銃弾の跡を指でなぞってみたり。図書室で本を借りなければいけない授業の際は、『世界中の処刑法の種類』の本を借りていた。僕の中で1番嫌な処刑法は樽に入れられる頭だけ出した状態で顔に蜂蜜、牛乳がかけられる。ハエやアブが集り顔は爛れる。しかし、食事は与えられらため排泄物は下の樽に溜まっていく。そのうち蛆虫が湧き、生きたまま苦しみながら死ぬ。というものだ。僕には心というものがないのかもしれない。僕たちは誰しも人の心の奥までも理解できることなんて有り得ない。いつ裏切られるか。死ぬまで消えずに残るもの。それの確証は誰にも分かり得ない。だから馬鹿馬鹿しい人間関係なんて無意味だと思っている。僕がこう考えるようになったのはいつからだろう。高校2年の頃、僕の周りは浅く広くの関係が多い。だから周りからはあいつって親友いないよな。とか、浅い関係しかいないなんて可哀想。だとか言われることもあった。そんな心無い言葉を簡単に吐けるお前らも似たようなものだろ。と言い返し話は終わる。しかし、僕の中ではその話は終わっていなかった。浅い関係がだめなのか、浅い関係って何だろうかと考えて、考えて、とうとう鬱になった。その頃から僕はどんどん悪い方向へ進んでいったのだろう。

僕は居酒屋のホールをしている。今ではうつ病だったことなんて誰からも気づかれないほど回復した。人間関係も深く考えることもなくなった。宴会場の方へ料理を運ぶと、酔い狂ったサラリーマンが怒鳴り散らしてきた。料理が遅い!俺は常連だぞ!使えねえやつだ!と罵声を浴びた。人がそれぞれ持っている正義って1番めんどくさいと思う。僕からしたら注文して10分経ってない。酔いすぎて時間の感覚がないんだろ。ましてやキッチンが忙しいのだから大目に見てほしい。なんて思ってしまう。しかし、相手にも相手の言い分があるのだろう。仕事のストレスまで乗せてぶつけてくるのであろう。こうやって人と人はぶつかり合うんだよな。なんて考えながらお客様に頭を下げる。

正義をお互いが掲げててぶつけ合うから喧嘩が起こり、戦争が怒るのは過去の歴史を見てもわかる。相手が私と違う考え方なのが当たり前。お互いがこんな人もいるのか、と思わないとうまくいかない。

僕が大学生の頃の彼女は束縛が酷かった。飲み会も女がいるなら行かないで!タバコは吸わないで!毎日何しているか報告して!と窮屈な生活に嫌気がさした。自分が絶対正しい。君が絶対間違っている。と押し付けあってヒートアップすることで誰かが傷ついたり、殺人事件も起こってしまうのではないか。自分と違う人は鬱陶しい。だから、自分の考えをわかってもらいたい。そう思うのは誰もが同じである。この僕も。

0時になり、バイトが終わると、仲のいい常連さんからもらったタバコを吸ってコンビニへ立ち寄った。星を見ながら、また一服。コンビニの袋をぶらぶらと揺らしながらゆっくり歩く。なんで僕らは働かないといけないのだろう。実際この世には働かなくても金が入ってくる女王アリのような人もいる。僕らのような働きアリは汗水流して、身を削って生きていかなければならない。この世の中が理解できないのだ。だから、昨日も家族と喧嘩した。早く職を手につけなさい。大学で名にしていたんだ。甘えてる。本当のことだ。自分に好きなこともやりたいこともない。しかし、自分がやりがいのあること以外をする必要があるのか。それで生きている。と言えるのか。今のアルバイト生活では到底言えないが。ふと気づくと自宅の前まで辿り着いていた。電気は消えているから家族はみんな寝ているのだ。家の扉を静かに開けてリビングへ足を運んだ。

そこには昨日の真っ赤な夢が広がっていた。


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