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楽しみだろう?

「さてと、修学旅行とは言え、そこの汚ねぇ物を吐いている偽者が立ててしまった退屈な修学旅行に行くと思ってたお前達には、本当の「せんせー」が立てた楽しい修学旅行の行程を教えないとな?修学旅行の日程は10日間。そして、1日目の今日と最終日以外の8日間は、1日につき1回「せんせー」が考えた楽しいゲームをやってもらう。それだけだ。だがーそれだけではつまらない。ああ、勘違いするなよ?ゲームがつまらない訳じゃないぞ?もっと面白くするためには、やっぱ報酬とか罰ゲームが無いとつまらないだろう?「せんせー」が考えたゲームをみんなが本気でやってこそ、今回の修学旅行は楽しくなるはずだからな」

突如現れた、本当の俺達の担任らしい「せんせー」と名乗る不気味な存在。まるで俺達の為に修学旅行を楽しくしてやっているんだぞと言わんばかりに説明を始める。どうやら、本当にこれが俺達の修学旅行であり、これから始まるらしい。


にしても、「せんせー」が考えた楽しいゲームね…。

こういう密室でやるゲームってのは、大体殺し合いを始めるってのが、ドラマやアニメでは相場だ。

「皆には生き残りを掛けたゲームを始めてもらいます」ってやつだな。


「ゲームの内容って?」

「なんだ上原?楽しみなのか?まぁ、明日の楽しみに

しておけ。本当だったら皆大体同じ辺りに起きるはずだったから、説明してやろうと思ったんだがなぁ…。上原は飛行機で寝るのが遅かったみたいだからな、起きるのが遅かったんだろう。よって、お前の質問には答えてやらん。お前のせいだからな。他の奴は聞きたいことあるか?ゲームの内容以外の質問なら答えてやるぞ」

成程。確かに俺は皆より寝るのが遅かった。しかも、二時間ぐらい後に皆より遅く寝たから、二時間ぐらい後に皆より遅くここで目覚めたって事か。

てことは、俺のせいで修学旅行のスケジュールが狂ったって事か?本当だったらゲームの事を説明するはずだったけど、俺が思ったより遅く起きたから、ゲームの説明を省くって事か。この事が後から影響しないと良いけどな…。俺がそう考えていると、今度は樹里が質問を始めた。


「「せんせー」でしたっけ?貴方の目的は?」

「なんだ金子。学年トップクラスの頭のお前が愚問だな?さっきも言っただろう?修学旅行なんて一生の思い出になる物なんだから、本当の先生である「せんせー」が、楽しい修学旅行にしてやろうとしているだけだって」

「へぇ…。本当にそれが目的なんですね」

「そうだ。まぁ、安心しろ。楽しいゲームでこの修学旅行を盛り上げてやるからな。他に聞きたいことはあるか?」


「修学旅行というんですから、勿論ルールは有るんですか?例えば、消灯時間とか」

今度は委員長だ。流石、委員長だな堅物なだけはあって、こんな時でもルールとか考えてんのかよ…。

「それは勿論だ。例えば上原みたいに起床時間に起きないなんて、もっての他だ。…まぁ、今回は特別に許してやるが、勿論次は無い。これは、他の奴らも覚えておけよ?あぁ、後予定通りにゲームが進まなかったら、全員連帯責任で厳罰な」

いやぁ、良かったなぁ…。「せんせー」が寛大で。これ普通だったら見せしめに厳罰食らうパターンだよなこれ。本当本当、マジ寛大ですわ。俺は「せんせー」が寛大なお陰で助かりました。ありがとう。…いや、寛大であるはずならゲームの内容も教えてくれても良いと思うけど、俺が全面的に悪いので、何も言えませんわ。

「厳罰って何ですか?」

「勿論、そこの偽者と同じように、血を吐いて死んで貰うんだよ。本当は上原でも良かったんだが、偽物を殺す必要があったからな。まぁ、ある意味上原が修学旅行においてのルール違反をしてくれて助かったよ。でも、勘違いするなよ?どのみち偽者は殺すつもりだったからな?別に上原のせいで死んだ訳じゃない。ああ、それと暴力行為も禁止だからな?修学旅行は楽しい物じゃないとな!ん?そろそろ夕食の時間じゃないか!全く…。上原のせいだからな!質問は後1個だな時間的には」

いや、俺のお陰なのか、俺のせいなのかどっちなんだよ…。しかし、サラッと言ったけど、この修学旅行においてルール違反した場合、担任と同じように血を吐いて死んでしまうという事実に、この密室では緊張が走った。中には、さっきよりも泣いている子もいる。


「なんだなんだ、お前達。楽しみにしてた修学旅行だろう?楽しんでこうぜ!おっと、時間がヤバいな…。質問が無いなら夕食にするぞ?良いか?」

「先生。あ、「せんせー」ですね」

モニターの遠くに1人ポツンと居た西岡が「せんせー」を呼ぶ。1人だけクラスの輪のから外れているので、クラス全員の注目を集める。

「なんだ?西岡?質問か?」

「ゲームを私達が本気でやる為に報酬や罰ゲームがあるって言ってましたよね?差し支えなければ、報酬や罰ゲームを教えてくれますか?そうしたら皆さんもやる気が出て修学旅行を楽しめるかもしれません」

アホだ。いや、俺より西岡は格段に勉強は出来るけど、あいつアホだ。この状況下で楽しめる訳がない。だから、友達居ねぇわけだわ。あんな美人で、勉強も運動も完璧なのに。

だが、俺達とは反対に「せんせー」は今日一番の笑顔で西岡の質問に答える。


「流石!学年トップだな!その質問を「せんせー」は待っていたんだ!修学旅行の積み立て金ってあるだろ?あれ、1人30万だよな?まぁ、それが教師を含めて200人ぐらい居るわけだから、単純に6000万だ。まぁ、飛行機代とか諸々引くと5000万ぐらいになるだろ?だから、その金をゲームで良い成績残した奴に、あげようって訳よ。勿論、全額じゃないが例えば1位50万とかな?

これが報酬だ。…罰ゲームは何となく分かるだろ?

まぁ、死ぬってことだけは言っとく。あ、ただ死ぬって訳じゃないからな?「せんせー」が用意した楽しいお仕置きが待ってるからな?」

「つまり、全員で協力は出来ないと?」

「いや、そんな事はないぞ?「せんせー」はお前達の意見も尊重したいしな。ただ、一つ言える事はゲームには本気で挑んだ方が良い。金があった方が「せんせー」の考えた修学旅行は楽しめると思うぞ?」

せんせーが西岡の質問に答え終わると同時に突然モニターが切り替わる。ん?夕食リスト?

「おっと、夕食の時間だな?お前達のポケットには、修学旅行の小遣いが入ってるはずだろ?本当ならホテルで飯な訳だが、「せんせー」の修学旅行にはホテルなんて無いから、悪いが小遣いで食ってくれ。モニターの画面が切り替わったろ?夕食リストって」


ポケットに手を入れると5万が入ってた。この5万は確か修学旅行で学校が決めた小遣いの額だった気がする。

「いやいやぁ!オレさぁ10万は持って来たんだけどぉ!」

「マジ、アタシもなんだよねー」

杉谷と渚の馬鹿二人がもっと持って来たんだけどアピールをしている。確かに、俺も見たけど修学旅行では5万って決められてる訳なんだからさぁ…。まぁ、俺も100円玉5、6枚多く持って来てたけど5万しかないし。頷いている人が居るって事は杉谷と渚以外にも、多く持って来てた人が居るって事か。

「上原と同じで、杉谷、荒波お前らも違反してるんだよ!でもまぁ、5万も持って来てない子いたから、お前ら二人の金を小遣いの少ない奴に分けたんだ。だから、厳罰を食らってないんだぞ?厳罰を食らってでも小遣い欲しいか?」

「いやぁ…いいっすわぁ…」

「アタシが悪かったです…」

「全く流石は我がクラスが誇る馬鹿二人だ…。あーもう時間ねぇから、もう質問終わりな?後で、新しいしおり配るから、それ見て覚えろ。後、風呂とか部屋とかも今日は有料だからな?風呂代とか飯代とか料金リストも書いてあっからよ。山井、お前委員長だろ?しおり取りに来い。」

「え?あ、はい、分かりました」

「あー、後、トイレも有料だからな?まぁ別にそこら辺でしても良いけどな?それは無料だからな。おっと時間ねぇな…。じゃあ、消灯時間にな」

サラッと下ネタを挟み「せんせー」の声がモニターから消えていき、夕食リストと表示されているモニターは無音でうまそうな夕食を表示していく。


残された俺達は絶望していたというよりは、楽観的になっていた。クラスの奴の中でのイケメンの気に食わねぇやつが「皆で頑張ろう!」とか言ってやがる。

おかしい。絶対おかしい。人が1人死んでいるんだぞ?

「しおり、取ってきたから皆配るよ」

委員長がしおりを取ってきたらしい。委員長はクラス全員にしおりを配る。イケメンの周りのやつらは何食べたいかを話している。普通、担任の死体見てるのに食えるわけねぇだろ…。俺は食わなくて良いや。


「やっぱ拓人も食べれる訳ないよね?」

リストを見ていない俺を見て樹里が聞いてくる。どうやら樹里も同じ理由のようだ。

「普通、食える訳ねぇよ。死体だぞ?しかも、殆ど毎日会ってる人間が死んだのに呑気なもんだよな、このクラスの連中」

「それは違うよ、拓人」

「何が」

「皆多分、平気な振りをしてるんだよ。だから、無理に明るく振る舞ってる。そうじゃなきゃ、先生が死んでも皆あんな泣く訳ないよ?」

樹里はこんな状況でもクラスメイト達を心配している。多分、俺はこういう所が好きなんだろうな。

樹里の事を-。


「あれ?拓人ぉ夜メシ食わんの?」

「腹、減んないの?」

杉谷と渚もリストを見ていない俺を見て聞いてくる。いや、お前ら…。あ、お前らには分からんか。

「良く食えるな…。死体見てるのに」

「まぁ、先生ぇ嫌いだったしぃ?」

「あー、アタシもー」

「…だから気にしないと」

そういえば、この二人は馬鹿にされてたからな。担任に。俺もコイツらと同じようならこう思うか。

「だから、絶対無事に帰りたいんだわ」

「まぁ、死にたくはないよな」

「違うし、嫌な奴が居なくなったんだ、だからもっとアタシ達楽しくなれるでしょ」

「オレもそれ!そう言う事!」

成程な…。俺はともかく樹里と仲良いのに何でだ?的な事を言われてたからな。担任に。

そうか、そう考えると良い事…か?

「拓人ぉ!折角だから楽しむべ!」

「そーそー、もしかしたら、先生死んだふりしてるだけかもよ?嫌な奴だし」

杉谷と渚。コイツらが仲間で本当良かったな。元気貰えるわ。…何か、腹減ってきたな…。


「樹里…。何か食うか?俺達も?」

「…そうだね。ありがと。杉谷くん、渚ちゃん」

「おぉっ!オレらのおかげ!?」

「アタシにかかりゃこんなもんよ!」

この光景はいつもの物だ。だが、こんな状況でも、何とかなると思えてしまう。それほど心強い。

きっと大丈夫だ。これなら。


「よし、リスト見るか」

俺達はしおりを開き夕食のリストを見る。

何にしようかな?


しかし、1日目の夕食を頼む事は俺達も含めてクラスの誰もがしなかった。

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