表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたが太陽  作者: よろず
その後のお話
8/13

アディ

『生まれ変われるなら、今度はもっと、まともに生きたい』


 ビールやチューハイの空き缶が転がる部屋。

 机の上には、中身が半分くらいなくなったウィスキーの瓶と数本の薬瓶。

 朦朧としながら、私は最後に、そんな事を思った。




 そんな事を思ったからか、私は、死んだ瞬間生まれてた。

 赤ん坊になった自分を認識して、また新しい人生始めなきゃだなんて拷問だって思った。あんな事、願うんじゃなかったと酷く後悔した。

 しかも、新しい私はなんだか普通じゃない。

 まず見た目。髪は黒で、瞳が赤と金のオッドアイ。

 どうやら私が産まれた場所では黒髪もあまりいないみたいで、化け物と蔑まれ虐げられた。

 周りはみんな、金の髪に、瞳は青や緑ばかり。両親も、金の髪に青い瞳だった。

 更に私は、人の感情を感じ取ることが出来た。私に向けられる感情は全て、冷たいもの。母親だけが、戸惑いながら少しだけ温かさを向けてくれてた。

 だから、母親が生きている間は、なんとか食事を与えられ、生きている事が出来た。

 けれど私が五歳になったある日、父親が母親を殺した。化け物を産んだお前も化け物だと言って、殺したのだ。周りの人間も、それを笑って見てた。


 狂っていると思った。


 父親は私も殺そうとしてきて、私は力の限りに叫んだ。


 ーーお前ら全員死んじまえ!!!


 叫んだ瞬間、みんな、死んだ。

 ぱたりと倒れて動かなくなった人達を見て、私は、怖くなって逃げた。



 自分も死のうと何度も考えた。

 だけど、また生まれてしまったらと思うと酷く怖い。

 毎日、なんとか食べ物を調達して生きた。

 しばらくして、自分の力が声にのって作用する事に気がついた。

 色々試して、コントロールも出来るようになった。

 コントロールを覚えれば、声に発した事柄を具現化出来る便利な力だと分かった。

 便利だけれど、怖い。下手したら、私はまた、誰かを傷つける。


 ボロボロの子供には誰も見向きもしないから、ひっそりと生きて、たまに悪そうな人からお金と食べ物を盗んで生きてた。

 オッドアイを隠す為に、髪も長くした。

 怖くて、さみしくて、本をたくさん読んだ。たくさん勉強した。そうしている間は、いろんな恐怖を忘れていられたから。


 いろんな場所を転々として、ある時死体だらけの町に辿り着いた。

 生きている人間はいなかった。疫病でみんな、やられたみたい。

 食べ物とお金を探して、大きい屋敷に入ってみた。そしたら本がたくさんある書庫を見つけて、つい読みふけってしまった。


 ふと、温かい気配に気付いた。

 なんだろうって顔を上げたら、騎士が数人立ってる。

 その中の一人、大柄な騎士から、とても優しい温かさを感じて、私は思わずその騎士に抱き付いた。

 初めて感じる優しい感情に、酷く安心した。



 騎士はダニエル・カーライルと名乗った。

 彼も金の髪に青の瞳だったけれど、彼の金髪は太陽みたいで、瞳は空みたいに綺麗だった。

 驚くべきことに、彼は私を雇ってくれるという。

 声を出すのは怖かったから、筆記で会話するようにした。

 私は彼をダンと呼び、ダンの為に一生懸命働いた。

 ダンは私を男の子供だと思っているみたいだけど、訂正はしないでおいた。騎士であるダンの側には、男じゃないといられないと思ったから。



 ダンは余り喋らない。

 必要な言葉しか口にしない。

 私も筆記での会話だから、いつも二人の間は静か。

 だけれど私は、ダンの小さな表情の変化から、彼が何を言いたいのかわかるようになっていた。

 自慢したい私の特技。


 私の体に肉がついて、見た目も健康になって来た頃、ダンは私に剣を教える事にしたみたい。

 見習いの騎士達に混ざって素振りをしたり、運動場を走らされたりするのは、キツイけれど楽しかった。

 訓練の後は、私が家で用意してきた軽食を一緒に食べる。

 ダンはとっても美味しそうに食べてくれるから、作りがいがあった。


 仕事の後は、一緒の馬に乗って帰る。

 馬の乗り方もいつか教えてくれるって言ってたけど、私は本当は、今のままがよかった。

 ダンの筋肉のついた太い腕に囲われていると、守られているみたいで好き。


 ダンはよく、夕飯の後にお酒を飲む。

 私は隣に座って本を読む。

 たまにぽつぽつとダンが話すのを聞いて、私は筆記で答える。

 ダンは太陽の匂いがして、あったかい。

 私は、この生を得て初めて、幸せで満ち足りた毎日を得た。




 太陽が昇り始めた頃、隣でダンが動く気配がした。

 朝の日課に行くんだろう。

 二人で眠る、この家には大きいこのベッド、王太子からの結婚祝いのプレゼント。

 最初はもっと大きな物をくれようとしてたけど、部屋に入らないから断った。

 王太子は仲良くなろう作戦で私の力を狙ってる。でも悪い狙い方じゃないし、なんだか頑張っているからそのままにする事にした。

 ダンがベッドから出てシャツを着る音がして、私も目を開けた。

 ダンの体は逞しい。騎士様って感じで好き。

 目があって、軽くキスをしてくれる。

 私は手を伸ばして、ダンの耳飾りに触れる。

 二色の宝石の耳飾り。この人が私の物だっていう証拠。


「もう少し寝ていろ。」


 そう言って、大きな固い手で頭を撫でられた。

 ダンの低い声も好き。

 壊れ物を触るみたいに、私に触ってくれる手も好き。

 階段を下りる足音を聞きながら、私はベッドに残ったダンの熱を抱き締める。

 もう少ししたら、愛する旦那様の為に、美味しいご飯を作りに行く。

 ダンの匂いと温かさに包まれて、私は泣きたくなるくらいに、幸せ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ