エピローグ
カーライル家の庭で、剣がぶつかり合う音が鳴り響く。
ダニエルがアルに剣の稽古をつけているのだ。
「おにいちゃ、がんばれー」
それをアディの側で、エリーが跳ねて応援している。
跳ねる度に揺れるのは、アディとアルと同じ黒い髪。兄と父を見つめて輝く瞳は、右に父の空色と左にアディの金を引き継いでいる。
真剣な表情で父と剣を合わせているアルは六歳になり、段々と面差しがダニエルに似てきていた。
期待されていた子供達の能力については、隠す事にしている。人の心を読んで伝えるアルの能力を知っているのは、家族以外では王太子夫婦だけだ。
アルの力はどうやらその方向に特化しているらしく、小さな内から訓練して、今では使いこなせるようになっていた。
夢は父のような立派な騎士になる事だと言った息子に喜んだダニエルが、休みの日や朝の日課の時間に稽古をつけるようになったのだ。
アディの力を強く受け継いだのは、妹のエリーだった。
エリーの力は、声など関係なく、強く念じたことが具現化してしまう。その為、アディは今は城には行かず、家で毎日エリーと過ごして力のコントロールを教えている。
あまり話さない両親や兄の代わりのように、エリーはよく話す元気な子供だった。
今も庭をぴょこぴょこ走り回っては、兄と父へ楽しそうに声援を送っている。
子供達二人の本当の名前も、隠しているように教えた。
アルベルトとエリアーデ。
いずれ二人が本当の名を告げる相手は、同じ人物となる。
忠誠と愛情。違った感情を二人がその人物へと抱くのは、もう少し先の、未来のお話。
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