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DD ダンジョン殺しのダンジョンマスター <第1部>  作者: 穂麦
第2章 ヴァートゥハイル大陸
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第51話 港街オシサル

 5日の間、船に乗り続けてリシュ達は、ヴァートゥハイル大陸にある港街オシサルにたどり着いた。


 様々な服装をした商人や旅人が行き交う街を歩く2人組。

 ローブのフードを深く被り顔を隠すリシュと、黒髪で黒い瞳をした鎧姿のサクヤ。

 2人は、市場の商品を見ながら歩いている。


 同じ港街のせいだろうか?

 リシュ達がこれまで活動していた、アスティユ大陸にある港街アブスレイと見た目は変わらない。

 しかし、食料品に関しては事情が違っている。


「やっぱり食料品が高いね」

「ええ」


 オシサルは、港街であるがゆえに様々な物が集まる。

 当然、食料品も集まるのだが、アスティユ大陸の4倍以上の値段で多くが売られていた。

 

 手が出せないほどの値段ではないことから、大陸中が食糧不足で、ひどく追い詰められているというわけではないのだろう。

 もっとも、飢餓状態に追い詰められているとされるのは、港街オシサルからさらに南へと移動した地域だ。

 飢餓が報告されている地域から離れた、この街の食糧事情は、かなり良い状態だと考えた方が良いかもしれない。


「ジンライやラッセルの気持ちも、この食料の値段を見るとわかるよ」

「確か、南にもっといった地域に村はあるのでしたね」


 食料品が4倍以上で売られる状況を加味するのなら、やはり海の向こう側から食料をまとめて購入した方が良いだろう。

 この世界には魔法があるため、1年を通して氷を得ることができる。

 よって船で食糧を輸送するときでも、冷やして運ぶことが可能であり一定の鮮度を保つことが可能だ。

 この辺りが地球の中世とは大きく違う点だろう。


「彼らの村には、少し用事を済ませていくのでしたね」

「うん。彼らの依頼は受けようと思っているけど、取引の条件に用事の手伝いを入れたいからね。こっちの現地調査をしてから行こうと思う」


 サクヤとリシュは、ダンジョンの攻略を用事と置き換えて会話をしている。

 人の多いこのような場所では、ダンジョンを攻略をするなどと言えば、下心のある者に絡まられかねないからだ。


 リシュに対して邪な心を抱いているとは言っても、サクヤは美少女に分類される。

 彼女の邪な思いの対象となるリシュは子どもだ。

 たやすく利用できると考える者が現れてもおかしくはない。


「でも、まずは宿をとろう。船旅の疲れをとって明日から用事を済ませるのが良いと思う」

「そうですね……。この辺りの情報も欲しいですし、宿をとったら冒険者ギルドに行ってみませんか?」

「それが妥当だろうね」


 冒険者ギルドには、冒険に関する様々な情報が集まる。

 地域によっては毒を持った植物があったり、珍しい特性を持ったモンスターがいるなどするため、新たな地域に入ったらギルドで情報を集めるねばならない。


 本来なら、自身が現地の知識を集めたあと、案内役として地元に詳しい冒険者に依頼を出す。

 そして、しばらく一緒に行動をするのが望ましい。

 だが、リシュ達にはそれを行うわけにはいかない理由がある。


 財布事情もさることながら、彼らの目的がダンジョンから物を得ることではなく、ダンジョンの支配権を得ることにある点が大きい。

 決して財布事情だけではない点は、強調しておきたい。


 *


 宿をとったリシュ達は、冒険者ギルドへと向かった。

 目的はダンジョン原産のアイテムを売ることと情報の購入だ。


「オシサル周辺の情報をお願いします」

「かしこまりました」


 リシュが、ス○ホ程の大きさがあるカードを受付の女性に渡すと、彼女はカウンターの奥にある装置を動かしはじめた。

 冒険者ギルドでは、冒険に役立つ様々な情報が公開されている。


 大概は無料での公開だ。

 しかし、最新の情報は有料となる。

 付け加えるのなら、情報を入れるカードも有料だ。


 それでも魔物も生物であるため分布状況に変化があり、街などの人口も推移していく。

 このため最新の情報を手にすることは、冒険を安全に行うために大切と言える。


 そのためには、なけなしの金銭であっても──。


(リシュちゃん、お金を渡す手が震えていた)


 リシュの横に立っていたサクヤには見えていた。

 カウンターで情報の代金を渡そうとするリシュの手が震えていたことに。


 見た目が10歳以下の子どもであるリシュ。

 そんな子どもが金銭に強い執着心を見せる姿は、世の無情さをサクヤに突き付けるのに十分だった。

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