第42話 海底の迷宮殺し 突入
ダンジョン殺しの光は、リシュ周辺のモンスター達の体を崩す。
計画では、ダンジョン殺し発動後にリシュ達はモンスターの中を走り抜けて引き返す予定だった。
しかしダンジョン殺しの影響は、光の発生源であるダンジョンの入口に近いほど大きい。
このため彼らはダンジョンの入り口付近で、戦いの経過を見守ることにした。
~40分後~
ダンジョン殺しのの光は、溢れ返ったモンスターに大きな影響を与えていた。
このため、ダンジョン殺し発動後の戦いは人間側が当初予定していたよりもはるかに早く終わることとなる。
一通り戦いが終わったあと、リシュ達は多少の休憩をとり次の行動の準備を開始した。
これから彼らにとって本番ともいえる戦いが始まるのだ。
準備は入念に行っている。
「本当に、この人数で大丈夫なのか?」
そう訊ねたのは、リシュを守る集団を指揮していた大剣を携えた戦士だった。
彼の前には、これからダンジョンへと入ろうとする4人がいる。
リシュ、サクヤに加えて、船旅の最中に甲板で会った2人だ。
甲板であった2人というのは、ジンライとラッセルという人物だ。
ジンライは黒剣を持った黒髪の男性。
ラッセルというのは金髪で胸当てなどの冒険者風の服装をしている。
「ええ、僕の力ではこの人数が限度ですから」
ダンジョン殺しを行う対象となるダンジョン。
そこには、リシュの眷族印を受け取った者を一定人数しか連れて行けない。
現在のリシュが与えられる眷族印は4人まで。
いつもならティアは留守番だが、現状では人の中に残すことになり危険なため連れて行くことにした。
その結果、サクヤ、ティア、ジンライ、ラッセルのみでダンジョンを攻略することになる。
船長と話した際に、ダンジョンへ突入する者たちを選定しておいた。
腕がよく、ある程度の指揮能力を持ち、リシュの能力を口外しない者というのが選定条件だ。
「そうか……健闘を祈る」
「ええ」
会話を手短に済ませ、リシュは黒い空間が広がるダンジョンの入り口をくぐった。
*
ダンジョンに足を踏み入れると、外壁部と同様に肉壁に覆われた通路が続いている。
「見栄えがしませんね」
最初に口を開けたのはラッセルだった。
「ええ、ですが先ほどとは違って間違いなくダンジョンです」
「だろうな。入口をくぐるときに感じた違和感は間違いねえ」
ダンジョンは、異世界につながっている。
ジンライの言った通り、ダンジョンに侵入するときには、別世界に足を踏み入れるため、誰もが違和感を感じる。
その違和感こそがダンジョンに入った合図だ。
「そうですね……ところで、リシュ君。モンスターが襲ってくるんだ。フードはとらなくていいのかい」
「?……そういえば、被ったままでしたね」
そういうとリシュはフードを外し、服に隠していた銀色の髪を出す。
「ほう、驚いたな」
「ええ、確かに」
驚きの声を上げたのはジンライだ。
続いてラッセル。
2人が驚いたことをサクヤは、内心自分のことのように喜びながらも顔には一切出さない。
「これは、将来が楽しみだな」
リシュの容姿をみたジンライは、冗談交じりに言った。
「僕は男ですよ」
「マジか!」
このときリシュは、ジンライの反応を見て冒険者のアナベルを思い出す。
そして、これからもこの反応を何度も見るのだろうなと少し遠い目になっていた。




