表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DD ダンジョン殺しのダンジョンマスター <第1部>  作者: 穂麦
1章 アスティユ大陸 本編開始
32/72

第30話 港街アブスレイ

 リシュ達は港街アブスレイへとたどり着いた。

 他の国とを結ぶ玄関口の一つだけあり賑わっているハズだったが──。

 

「妙だね」

「はい」

 

 街の入り口を、少し離れたところからリシュとサクヤは眺めている。

 大きな門の前には多くの人が詰めかけており、騒いでいるように見えるのだが──どうするべきか?

 

 リシュはダンジョン・マスターであり人類の敵だ。

 もしバレることがあれば、戦う術を持たない彼では逃げることしかできない。

 いや、逃げるにしても子どもの体であるため逃げ切れる可能性が低いいだろう。

 

 バレル可能性を考慮するのなら、なるべく人との関わり合いは避けるべきなのだ。

 

 しかし幻魔の洞窟を目指すのなら、海を渡らねばならない。

 他の港町を使うにしても、情報収集は必須だろう。

 

 リシュ達は10分ほど門前の人々を見ているのだが、街に入った者も出た者もいないように見える。

 

 これは異常なことだった。

 荷物の往来が主産業ともいえる港町で、人の往来を抑制するようなことが行われているかもしれないのだ。

 

「……サクヤ、手間をかけるけど何があったのか聞いてきてもらえないかな?」

「わかりました」

 

 街の門前にあるのは、人の往来が激しい港街にできた人混みだ。

 リシュがダンジョン・マスターであると見破れる者が混ざっていてもおかしくはない。

 このため自分が行くよりもサクヤに情報収集に行ってもらった方が良いと彼は判断した。

 

「ティア」

「なに?」

 

 妖精のティアが、リシュの呼びかけに応えて彼の懐から顔をのぞかせる。

 

「何か街の方で感じないかな?」

「う~ん、魔物かな? 少し変なのだけど強いのがいるみたい」

 

 感知能力に優れた妖精であるティアに意見を求めたリシュ。

 強い魔物がいる程度の情報しか得られなかった。

 だが、何も情報は得られないと考えていたので期待した以上の成果である。

 

「ありがとう」

「うん」

 

 一通りの言葉を交わした所で、再びティアはリシュの懐で姿を消した。

 ティアとの会話を終えると次にリシュは、左手の人差し指にはめた指輪をおもむろに口へと近付ける。

 

「ヴァルゴ」

 『はい』

 

 彼の問いかけに応えたのは、ヴァルゴと呼ばれる指輪。

 声はリシュの脳内に響いているため周囲には聞こえない。

 

「なにか分かることはあるかい?」

『とくにはありませんね』

「そう……じゃあ、近くにダンジョンはあるかな。もちろん僕でも攻略できそうなヤツ」

「ええ、それなら3ヶ所ほどあるようです」

 

 ダンジョンの情報を得たリシュは、計画を変更しようと思考を巡らせ始めた。

 

 当初は、港街アブスレイからこのまま船に乗る予定だったが、状況を見るに船旅は難しそうだ。

 そこで今日はダンジョン殺しを行い、明日からは別の港街に向かうのはどうだろう?

 いやサクヤが拾ってきた情報次第では、待つというのもありだろう。

 

 このように考えながら時は過ぎていった。

 

『サクヤが戻ってきたようです』

 

 ヴァルゴの声を聞き、思考に没頭していたリシュは我に返り、門の方に目を向けるとサクヤが歩いてきているのが見えた

 

「ただいま戻りました」

「おかえり」

「はい(リシュちゃん可愛い。お帰りって家族っていう感じでいいかも!!)」

『…………』

 

 顔に出すことはないが、煩悩にまみれ放題のサクヤ。

 ヴァルゴは同じ女性? としてサクヤの本心を見抜いている。

 リシュにサクヤの本性を伝えないのは、同じ女性ゆえの情けなのだろう。

 

「街なのですが魔族に襲われて交戦中のようです」

「そう。戦況は分かるかな」

「衛兵が言っていた話によれば、もうじき押し切れるとのことですが……」

「そっか」

 

 かつて勇者として魔王とも戦ったリシュ。

 もっとも回復薬で歩くポーションという位置づけではあったのだが──。

 

 魔族は知性を持った魔性の存在。

 高い身体能力や強大な魔力を持っており厄介な相手だ。

 それに知性があるのだから組織的な行動をとることが多い。

 

「魔族は1体なの?」

「いえ、それなりの数がいると」

 

 魔族に統率された魔族、もしくは魔物による襲撃。

 備えがなければ街の衛兵が相手を出来るとは──。

 

「……どうしたものか」

 

 サクヤが聞いた、もうじき押し切れるという話しは、門前に集まった者達を安心させるためだけの言葉の可能性が高い。

 

 街の衛兵では魔族が率いる集団に対抗はできないとリシュは考えている。

 それでも街を守る衛兵が弱気な発言をすれば、街の防衛に対して悪い噂がでかねないため劣性であっても真実は語れないだろう。

 

 ここまで考えた所で、リシュはサクヤに目を向けた。

 

 主たる自分がどんな決断を下すのか待っているのだろう。

 先程から、ジッとこちらを見ているのが分かる。

 

 実際には、リシュへを邪な目で見て堪能しているだけなのだが。

 

「この近くにダンジョンが3つみたいだから、その3ヶ所でダンジョン殺しを行おう。その後でまたここに戻って魔族をしのげたかを確認した後で、これからを考えよう」

「わかりました」

 

 ここで街の防衛に関われば、サクヤを危険な目に会わせるのは明白。

 戦う術を持たない自分の勝手に巻き込むわけにはいかないと考えたリシュは、状況の変異を見守ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ