第0話B 災いの始まり
42年前、世界に魔王が現れた。強大な魔の軍勢を率いる彼の者により人の数は大きく削られることとなる。
35年前、女神より秘術を授かった王が異世界より3人の勇者を召喚する。
32年前、訓練を終えた勇者達は女神の啓示を受けたこの世界に生きる3人の勇者と共に旅に出た。
31年前、6人の勇者は、仲間を失い5人となる。
30年前、5人の勇者は、各国が協力して作り上げた人類連合と共に魔王を倒す。
30年前、5人の勇者は、魔王によって呼び出された魔神を倒した──仲間の命を代償に。
魔王のみならず魔神すら倒した勇者達。
1人の勇者を犠牲にしての勝利。
だからこそ遺された勇者達は、これから訪れる世界が平和であることを強く願った。
彼らによってもたらされた平和に人類は酔い、世界中で宴が開かれることになる。
宴では疲れ果てた顔をしていた人々は笑顔を取り戻して、これからの平和を夢見た。
だが、彼らは知らなかった。
魔神の脅威は去ったが、災いが消えたわけではないことを。
『災いあれ』
これは、魔神が遺した最期の言葉。
魔神は、この言葉と共に世界を呪い、訪れるハズだった平和を災いにによって塗りつぶした。
この時を境に、呪いの魔剣に異質な魔物、天変地異、ダンジョン、様々な災いが世界に溢れ返ることになる。
だが魔神は気付かなかった。
己が世界に遺した呪いが、災厄を払う力を生みだしたことを。
これは望まぬまま、迷宮の主として蘇ったある勇者の物語。
後に創魔の王と呼ばれる彼の物語は砂漠から始まる──。