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第25話 迷宮主の逃亡

 教会のダンジョンに対しダンジョン殺しを行ってから2日が経った。


 すでにリシュのダンジョンへと戻った3人。

 彼らはダンジョンの最深部にあるマスタールームで、宙に浮かぶ巨大なモニターを見ている。


「これで地下3階だね」

「……早いな」


 モニターを見ながら出たティアの言葉。


 リシュは真剣な眼でティアが見るモニターを見ている。

 早いな──リシュが零したこの言葉は、モニターに映った冒険者に対しての感想。

 

 リシュのダンジョンに突入した6人の冒険者。

 彼らは慣れたようにダンジョンのモンスターを蹴散らしていた。


「冒険者の動きではありませんね……どちらかというと騎士」

「だろうね」


 サクヤの言葉にリシュは同意した。

 6人の動きがまとまり過ぎている上、個々の能力も高い。さらに全員の動きに共通点があり過ぎる。

 仮にモニターに映る冒険者の正体が騎士だったのなら──。


「国が動いたのかもね」

 

 魔神の死と共に世界でダンジョンが多く現れるようになった。

 ダンジョンは財宝などを求めて冒険者が集まり、周辺の村でお金が動くようになる。


 だが、ダンジョンが暴走すると──大量のモンスターを吐き出すようになるため、ダンジョンを見つけた場合、国が動いて潰す場合が多い。


「引っ越そう」


 リシュがダンジョン殺しを行う理由。

 それはダンジョン・マスターとして成長するためだけでもなければ、DPを稼ぐためだけでもない。


「うぅ……追われる身は辛いね」

「いつか安心して暮らせる場所を見つけよう」

「…………」


 悲壮感漂うティアの言葉に、泣き出しそうな声で返したリシュ。

 2人の姿にサクヤは何も慰めの言葉すらかけることが出来なかった。


 明らかに2人は引っ越し──いや、夜逃げに慣れている雰囲気があり、そのような経験のないサクヤには何も言えない何かが2人の間にはあった。


 世知辛さを感じながら、3人はマスタールームのさらに奥にあるダンジョン・コアの前に移動した。


 ダンジョン・コアは、名前のとおりダンジョンの核であり、ダンジョンの全てを制御している宝石でもある。

 外見を述べるのなら、野球ボールよりも一回り大きく、サファイアよりも濃い緑色の中に血のような赤い色が漂っているかのような宝石というべきだろう。

 

 リシュは、銀でできたかのような壁にめり込んだダンジョン・コアに手の平を向けている。

 成人男性の胸部辺りの高さにコアがあるので、手を斜め上に掲げる体勢だ。


「1番を破棄し、6番をメインダンジョンに変更。1番のマスタールーム及び居住区にあるダンジョンの機能により生成した設備を破棄。6番に1番のマスタールーム及び居住区にあるダンジョンの機能により生成した設備を生成。メインダンジョンに6番を変更後、6番を1番へと名称を変更、及びそれまで1番だったダンジョンを6番へと名称を変更」


 リシュの発した言葉に反応するかのように、一瞬コア内の赤い色が揺れる。

 と、同時に僅かな揺れがダンジョンを襲うもすぐさま揺れは収まった。


「じゃあ、行こう」


 このあとリシュ達は、台所近くに設置した魔方陣より夜逃──引っ越しをした。


 リシュがダンジョン殺しをする理由。

 その中には、今回のようにダンジョンが攻略されそうになった場合の引っ越しがある。


 ダンジョン・マスターはダンジョンコアを破壊されると命を失う。

 だからコアを何としてでも守りぬかねばならないのだが、通常であればコアをダンジョンの外に取り出すには破壊する以外にはない。


 しかしリシュは、ダンジョン殺しで支配権を奪ったダンジョンに自身のコアを移動させることが可能だ。

 よってメインに使っているダンジョンが攻略されそうになるたびに、夜逃げをしている。

 ※今回がリシュ誕生後、6回目の夜逃げだった。

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