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第11話 ダンジョン・マスターの営み

 ダンジョンの最深部にあるマスタールームと呼ばれる場所。

 岩で出来た壁や床が広がり、部屋は青い光に包まれている。


 その場所にリシュはいた。

 彼は地球で使われているような黒い革張りの椅子に座り、宙に浮くディスプレイを眺めて何かを呟いている。


 淡い青い光に満ちる部屋で、宙に浮かぶ無数のディスプレイを眺めながらぶつぶつと呟き続ける少女(少年)。

 本来なら不気味な光景のはずだが、リシュの頭の上に座るピンク色の髪をした妖精の存在が台無しにしている。


「リシュ、お菓子のなる木を作ろうよ~」

「それは、ポイントが沢山必要だから今は無理かな」

「作れるのですか!」


 お菓子のなる木をねだるティアに対し、さらりとポイントを理由に出来ないと言ったリシュ。

 2人のやり取りにツッコミを入れたのは、リシュの横で椅子に座るサクヤだった。


「作れるよ。ただ、生物として不自然な物を作る場合はポイントが多く必要になるんだよ」

「…………」


 何も言わないサクヤに、リシュは苦笑いを返すことしかできなかった。


 今、リシュが行っている作業はダンジョンの管理。

 モンスターの配置やダンジョンの改築、宝箱の配置、トラップの設置などを行っている。


 ダンジョンの最深部にあるダンジョン・コアを、破壊されると、ダンジョン・マスターは命を失う。


 更にダンジョンは成長すると、モンスターを外界に吐き出すようになる物があるため世界に忌み嫌われており、発見されたダンジョンは潰されることも多い。


 もっとも、ダンジョン内で発見されるアイテムを求めてやってくる冒険者や、冒険者相手の商売により生じる大きな利益があるため国は難しい対応を迫れることになるのだが──。


 なにはともあれ、リシュは自身の命を守るためダンジョンを育てねばならない。


「まあ、今日はこんなものかな」

「弱いモンスターばかりだね」

「……そうだね」


 悲しそうな目で、ディスプレイに映し出されている設置されたモンスターを眺めるリシュとティア。


 現状のダンジョンは、中級冒険者が3人もいれば攻略できるレベル。

 もっと言えば、初級冒険者であっても注意さえすれば6人で攻略可能。


 すなわち、ダンジョンが発見されれば、リシュの命はないと言える状態だ。


「頑張らないとね」

「……そうだね」


 ティアの言葉に悲しそうな目をしたまま返答するリシュ。

 彼の目には無残な最期を迎える自分の姿が移っているのだろう。


 そんなリシュを、ジッとサクヤは見ていた。


 頬を僅かに紅くさせている彼女もまたリシュの最期を考えていた。

 リシュとは少々違う邪な未来を。


(天使なリシュちゃんが、血の気が多い冒険者に捕まったら……)


 美少女なリシュは、命を奪われるのではなくお持ち帰りされるだろう。

 そして連れて行かれたリシュは──と、いうのがサクヤの脳内に広がっている妄想。


 邪な妄想ではあるが、十中八九その結果になるだろう。


 絶対にそのような結果にはしない。

 と、心を決めた所でサクヤは妄想を忘れるのが勿体なくなる。


「…………」


 リシュの横顔を脳裏にジッと見つめて焼き付けたサクヤは、再び妄想の世界に意識を沈めた。

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