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16・メイドユリア奮闘紀





 先日の一件で、療養中のローディナの元へお見舞いに行った私は、

其処で彼女の双子の妹さんに迎え入れて貰った。


 一卵性の双子という事もあり、顔の造作も声も一緒なので、

最初はてっきりローディナ本人かと思って驚いたけれど、

彼女のトレードマークであるツインテールではなく、ポニーテールをしていたので、

直ぐに妹さんの方だと見分けがついた。


 彼女とは、ローディナが失踪した時に少しだけ話した事があるんですよ。

その時は互いに慌てていて、お互いに自己紹介する余裕もなかったですが。



「あ、あの……こんにちは、ローディナのお見舞いに来たのですが」



 妹さんにそう告げると、私の事を覚えてくれていたようで、

にっこりと微笑んでくれた。


「ああ、貴方こないだの……。ローディナを助けてくれて本当にありがとうね。

 お陰であの子、だいぶ衰弱はしていたようだけれど順調に回復しているみたい。

 そうだ。自己紹介がまだったわよね。私はリーディナよ。

 一応、錬金術師の見習いでアカデミーに通っている生徒なの」



 ……ええ、知っています。プレイしたことはなかったですけどね。

なんて、言えるわけない私は、普通に自己紹介を返した。



「あ、私も名乗るのが遅れました。私はユリアと申します。

 騎士様のお屋敷で、住み込みのメイドとして働いています」


「ふふっ、知ってる知ってる。ローディナが沢山貴方の事を話していたから。

 あのクールな騎士団長様といい感じなんですって?」


「え?」


「ううん、なんでもない! ローディナ~ユリアが来たわよ~!」


 そしてそのまま、リーディナとも友達になりました。


 リーディナは姉のローディナとお揃いのワインレッドのリボン結びと、

サイドには大きなユリの造花と水晶を用いた髪飾りをしている。

オレンジベース色のシャツに、ふくらみのあるハシバミ色のショートパンツを履いていて、

活動しやすい格好に身を包んだ可愛らしい女の子だ。



 一卵性なので容姿もそっくりなのだが、性格や服装は実に対照的。

性格はローディナがおっとりしたタイプで、

リーディナは少々勝気のようだった。


 

 声はやっぱり、ローディナと同じくベテラン声優の立花りっかさんの声。

こうして一緒に声を聞くと不思議な感じです。同じ声なのに演じ分けが出来ている。

微妙な抑揚よくようの差を付けていて、流石、大先輩だなと……。


(や、本人はここに居ないんですけどね?)


 リーディナはサブヒロインなんですが、

双子設定という事もあって、立花さんが声を兼任していたのでしょう。



(ふと思ったのですが、メインヒロインってサブより遥かに台詞せりふ

 つまりはワード数が電話帳程の量があってかなり大変なのに、

 サブヒロインの妹も兼任でやっていた立花さん。凄いなと思うんですよ)


 役を演じ分けるだけでなく、その膨大な台本とのお付き合いが……ね。

サブでも何十枚もする台本を渡されたりするのが当たり前なものなので、

想像しただけで、私なんかは「うわあ……」となります。


 だから、一冊の本が出来る位に台詞の多い、主要な役は大変なんです。


 仕事にもよりますけど、収録がかなり凄い事になっています。

数時間に渡っての作業になると思いますから。

ちなみに私は、せいぜい3時間ほどです。ガヤも兼用でやりましたよ。

あ、話それましたね。失礼。


 で、リーディナとも知り合った事で、1つの転機が訪れたんです。




※  ※  ※  ※



「――……姉妹でブランドを?」


 お見舞いから数日経った後、ローディナも後遺症の心配なく全快したので、

仲良くなったリーディナも交えて、三人で一緒にお祝いの為に街へと出かけた。

立ち寄ったお茶をしていた時に私は二人の夢を聞く事になったのだが、

それぞれの得意分野を活かして、ブランドを立ち上げたいのだという。


 魔法具としても効果のあるアクセサリーブランド。

それは今まで男性物ばかりの装備品が主流だったせいもあり、

女性向けのものはまだ殆ど出回っていないらしい。


 


「そう! ずっと漠然的に考えていたんだけどね。ねえ? ローディナ」


「ええ、二人で勇気を出してみようって、ね? リーディナ?」


「凄い凄い! 姉妹の共同ブランドって事ですね。でもなぜ突然?

 何か、本格的にやろうとでも思うきっかけでもあったのですか?」



 二人とも今は見習いという事で、勉強をするのにとても忙しいはずだ。

共同制作をする余裕は、余り無いんじゃないだろうか?


 リーディナは毎晩専門書を読み漁り、実験やレポートに忙しく、

定期テストも課題も頑張っていて、良い成績を収めているそうだし、

ローディナも色々な鉱物を使っては、師匠を越えようと日々励んでいたし。


 すると、ローディナは少しためらいながら話してくれた。



「あー……うん、実はね。貴方の事がきっかけなの」


「え? 私がですか?」


「私はローディナとユリアが理由よ。聞いていたら二人とも危なっかしいんだもん。

 何か女性でも、身を守れる魔法具を開発できないかと思ったの。

 それが分かるのは、女である私達しか出来ないでしょ?」



 実はまだ、錬金術れんきんじゅつ彫金師ちょうきんしには、女の子が多く居ません。

そのせいもあって、女性向けの防具や武具などの種類や数も少ないそうです。

昔の古い考えで、女性は家に居るものと考えられているせいだとか。


 けれど、先日の件で、女性も自分で身を守れるものが必要だと、

本格的な必要性を感じたらしい。

あの時、無事に連れ帰ったローディナを見て、

リーディナもボロボロ泣いていましたよね。



「きっと、今まで同じ事を思っていた女性も居るはずよ。

 女性の冒険者も増えてきているし、だから、ローディナにも協力してもらって、

 無いなら私達が作ればいいって考える事にしたのよ」



 そう言いながら、リーディナは持っていたスプーンでカップの中をかき混ぜる。



「勿論、リーディナも私もこれは初めての試みになるから、

 直ぐには軌道きどうには乗らないとは思うけどね」



 ローディナは一口お茶を飲み、私にニッコリと微笑む。

手探りでも、何か今後の役に立つものを作りたいと言う意思が働いたそうだ。


 確かに、私もあの時は最低限の装備だった。

もしも十分な装備を女性が整えられたら、それだけでも安心ではないだろうか。


 あの時、全員無事に帰ってこられたのは、奇跡だと今でも思う。

運が良かったからだと、誰もが言いました。

騎士団の中でも、精鋭部隊が手も足も出なかったのですから……。


 その時、私が言った一言、『ローディナから貰ったペンダントのお陰』と言う言葉、

それが、ローディナを立ち上がらせるきっかけになったといいます。



「ユリアの言葉がヒントになったのよ。

 もしかしたら私でも、新しい物を作り出す事が出来るかもしれない。

 何かもっと、人の役に立つ物が作れるかもしれないって、

 鉱物に銀を練りこんで、魔物にも効果のある退魔の魔法具を」


「ローディナ……」


「私も、二人が危険にさらされたと知って、

 女性がもっと身に着けやすい物を作ろうと思ったの。

 もう二度と、こんな事が起きないように……自分で身を守れるように。

 で、やっぱり考える事は双子ね。同じ事を考えていたのよ。

 二人の特性を活かしたアイテムを作ろうって、私が機能性と効果、

 ローディナがデザイン面と品質管理を」


「リーディナ……」



 これまでにない物を作りたい、弱い立場の人でも身に付けられるような。

そう言って姉妹は迫り来る脅威を感じ取り、新ブランドを立ち上げ、

小さいながらも工房を購入しようと考えているとか。


 女性に効果がある……それを聞いてピンッと私はある事を思い出す。

そうだ! 二人なら彼の事で何か解決策が見つかるかも。



「あっ、それなら早速二人にお願いしたい物があるんです。

 用途と目的がちょっと違うんですが、

 実はアデル様、私のご主人様の事でご相談が……」



 女性におびえられるアデル様の為に、何か念などを抑える物は出来ないか。

それにはやはり、女性の感性で作って貰った方が良いのかもしれません。

これが出来るのならば、お屋敷から女性使用人が逃げる事が無くなります。

そうすれば、お屋敷での問題は直ぐに解決できると思うので。


 依頼の相場が幾らか分からないけれど、私は貰ったお給金の全てを渡す気でいました。

こういうのは、開発費が結構掛かる事を知っていましたから。



「開発費としては少ないかもしれませんが……」



 身の回りの物は大体ですが、アデル様のお陰で一応はそろえられたし、

衣食住は今の所、お世話になっている所で用意されるので何とかなります。


 私は魔力とか錬金術とかは分からないので、頼むだけになりますが、

これ位で作れないだろうか? と貰ったお給金の金額を提示してみました。


 私は余り詳しくないけれど、お屋敷でのメイドの給金は良いものらしいです。

それもアデル様は私に気を使って、専属と言う名目で多めにくれました。

これを活かすのならば今だと思いましたよ。


(これは本来、アデル様のお金ですからね)


 二人は事情を知ると、にっこりと「初めての依頼ね。任せて!」と、

快く引き受けてくれました。期限は決めていませんが、期待していますお二人とも。




※  ※  ※  ※




 それから私の方もあれから色々考え、下手に物語をいじくらないようにと、

これまで戦闘能力に関して、目を背けて逃げていたことを深く反省しました。


 今までは安全な王都に居たし、いつもリファやアデル様に守って貰っていたので、

必要性を余り感じなかったせいもあるけれど。


 いざという時になって、こんな状況のままで甘んじていた事は、

私にとって大きな反省材料となった。



(屋敷の中に居れば大丈夫って、他の強い人に任せていれば大丈夫って……。

 きっと、そう思っていたのがいけなかったんだろうな)


 でも、いざという時、私の知識と経験は何も役に立たず、

危険にさらされた事で、私は突きつけられた現実をこれでもかと思い知った。


(私はサポート役を担うユリアとして生きている。

 友達と主人を大事にしていた子だ。彼女なら出来るだけの努力をするだろう。

 何も分からなかった状態で、ユリアはメイドとして働いていたもの)


 ならば、サポート役として私は、もっといろいろと経験しておかなきゃ。

体力が無いならきたえればいい、弱いなら少しでも強く。

それが、良いと思った事なら、何でも挑戦してきた私の出した結論。


 ――私も、勇気を出して前に進もう。


(前線に出なくても、後方支援のヒロインとして)


 まだまだ私のやる事はごっこ遊びだ。だからまずは装備を固めようと、

アデル様に短剣をまた買って頂いて、リーディナに魔法強化を掛けて貰ったり、

ローディナに試作品の魔法具をめて貰い、使えるようにもしていたり。


 少しずつですが、戦う練習がてら半日で帰れる距離での冒険に出かけていました。



「クウンッ! キュウイイイッ!!」


 勿論、そんな私の行動を止めようとしたのは、この子ママンだった。



「リファ、お願い! 私は出来る事を精一杯やりたいの、

 このままじゃいけないって気づかされたから。

 強靭きょうじんな力とかが欲しい訳じゃないけれど、

 最低限、身を守れる経験をつみたいの!」



 数百の練習よりも、一回の実践に勝るものは無い。

これ、演技でも一緒で、現場に出て経験した方が沢山得る物があるのと同じです。


 勿論、日々の練習も勿論凄く大事ではあるけれど、

空気と状況を感じるのは、練習だけではカバー出来ないから。

役者として経験した色々な事は、こちらの世界での私の行動の基盤にもなっています。



「自分に良いと思える事は、どんどん実践しないと」



 リファには泣いて止められましたが、私は何度も説得し、

アデル様にも迫真の演技を付けて訴えさせて貰いました。


「お願いします、アデル様……っ」


「……っ、な、泣くなユリア、泣かないでくれ。

 そんなに、そんなにまでしてやりたいのか」



 普通に話していると、彼に論破されて終わりですからね。

私、龍ににらまれて、動ける自信がありませんでしたが、

以前、私の涙に弱いと聞いたので、泣きの演技でなんとかお許しを頂けました。


(……ふっ、アデル様。女の涙を見破れぬとは、まだまだ甘いのう……)


 ……ごめんなさい、心の中でちょっと悪代官風に言ってみました。

最近、本当にツッコミ待ちです。



 勿論、許可して貰うに辺り。私は事前に最低限の訓練を受けましたよ。

それが出来ないなら諦めろと、要は基礎訓練です。

ジョギング、腹筋背筋などの基礎体力、筋力をきたえるものです。

騎士団の皆さんが普段やっているものだという事で、最低限出来ないと駄目だと、



「ふ……ふふふ。”この位”でお許し頂けるのなら簡単です」



 これは普段、私が役者の基礎訓練として行っているものですね。

役者は体力勝負、こちらに来てからも日々の訓練は怠ってはいませんよ?


 アデル様は、私をまだ体の弱い娘だと思っているようです。

信頼していただく為には、その身をもって証明するのが筋と言うもの、

私は言われた条件を難なくこなさせて頂きました。


(実は負けず嫌いなんですよ私は!!)


 調子に乗って、発声練習も一緒にやらせて頂きました。

はーすっきり、すっきり!



「アデル様! 終わりました!!」


「あ……ああ」


「アデル様?」


「……」



 その時のアデル様……凍り付いておりました。

ええ、面白いから記念に撮っておきたかったです。イケメンのお兄さんのフリーズ姿。

まあ、携帯もデジタルカメラも持って来ていないから、無理なんですけどね?



 彼は私が泣いて止めるのを待っていたのか、両手を広げて待っておりました。

どうやら落ち込む私をなぐさめる準備をしていたようです。

が、其処には満面の笑みでノルマを達成していく私の姿。

手を上げたまま、固まるアデル様は見ていて、おもし……いえ、珍しいですね。



(前々から思っていましたが、

 アデル様も、リファも、私を過小評価し過ぎだと思うんですよね)



 アデル様は私が走っただけで、具合が悪くなると思っていたようです。


 どうせ途中で諦めると思っていた事でしょう、だからこその条件だった。


 でも私は難なくやってのけたという事です。普段やっていますしね。

今まで私の絶え間ない努力、分かって頂きましたでしょうか?

其処でアデル様は、私が道楽ではなく本気で言っているのだと理解してくれたようです。



「仕方ない……約束は絶対だからな。許可しよう。君に武器の扱いを教える」


「はい!」


 それから私はナイフ投げを練習させてもらいました。

長剣を持ち歩き、振り回すには私の腕力では無理だと言われたんです。


 短いナイフで切りかかる場合、間合いが狭い時には便利ですが、

相手の防御力が高いと、一瞬にして人質に取られる可能性もあります。

下手をすれば即死。私がきたえた所で腕力は目に見えている事から、

ナイフ投げで急所を狙う練習を教えられました。


(おおっ! これはシーフとかトレジャーハンターとかが、

 よくやっている奴ですね? わくわくしてきた)


 ちょっと格好良くなって来ましたよ!



「いいか、投げたナイフや矢はこう曲線状に落ちていく。

 急所よりも気持ち高めに投げると急所であるまとに当たりやすい。

 まと目掛けてではなく、その少し上を狙って投げるつもりでいるといい、

 肩の力を抜いて、構えはこう……そうだ。そのまま投げてみろ」



 アデルは流石、騎士団の団長をしているだけありますね。教え方がとても上手い。

何度も腕を振ると、直ぐに痛くなってしまいますが、私はめげずに続け、

後ろに立って腕を取り、教えてくれる彼の指導を真面目に受けていました。



 そして私は双子姉妹と三人で冒険のパーティを組むことになりました。

さて、アデル様に基礎訓練も受けたし、経験のあるローディナ達も居るから安心。

いざ準備を整えて近くの湖で実戦だ! なんて思っていると……。



「アデルバードだ……よろしく頼む」


「やあ、みんな、俺はラミルス、気軽にラミスと呼んでくれ。

 今日はユリア達と一緒に行くけど、よろしくな」



 蒼黒騎士団長アデル様と、紅炎龍副団長のラミスさんが、

なんとオプションで付いて来ました。なぜ!?


 雇った覚えは全くございませんが、私達の護衛に一緒に行くとの事です。


(お出かけするってお話はしておきましたけど、誘った覚えはないんですが)


 戦闘の実戦練習も見ていてくれるそうですが、危なくなったら即助けるからと、

二人とも騎士団の鎧まで着て完全武装しているんですよ奥様。まあ素晴らしい。

アフターフォローもばっちりですね。


「まあ、騎士団長様と副騎士団長様がご一緒だなんて凄いわ。

 ユリアが頼んでくれたの? 大変だったでしょう?」


「い、いえ、あのですね。ローディナ」


「護衛の依頼料を幾らお支払いしたのよ? 

 私達も割り勘で出すわよユリア……出せるか自信ないけど」


「え、違いますリーディナ。私は本当に何も……」


「まさか報酬も無しで? あのお二人を連れ歩くって相当なものよ?

 冒険者クラスで言うならSSレアクラスよ」


 リーディナの言葉に、私は乾いた笑いをするしかなかった。


 勝手に付いて来られたんです……私は頼んだ覚えは無かったんですよ。はい。


 ローディナ達は心強いわね~なんて、暢気のんきな事を言っていましたが、

どう見ても、「初めてのお使い」を見守る保護者にしか見えませんでした!!

ええ、もうこの際、誰が子供の立ち位置なのか、突っ込んだりはしませんよ?


(私って、そんなに危なっかしいのでしょうか? 何をするにも心配されます)


 ここの湖なんて、小さい子供でも一人で来ることが多いと聞いていたのに……。

ほら、子供でも逃げ切れるような魔物ばかりなんですよ。

私、逃げ足だけは自信があるんですがね、色々な意味で。


 ええ、普段からアデル様の「めっ!」を逃げてますからね。




「ユリア、この湖は深い所があるから泳いだりしては駄目だぞ?

 近づいても駄目だ。落ちたら危ないから見るだけにしておくんだ」


「い、いく綺麗きれいでも、泳がないですよアデル様……」


「あ、なんだったら俺が助けてあげるから、安心して?

 ……っていうか、何でユリアを抱きしめているんだよお前は! 離れろよ!」


「黙っていろラミルス。俺は今、ユリアと大事な話をしている!」


「うわっ? ちょっ!? 今、本気で切りかかっただろアンタ!!」



 子供に言い聞かせるようなアデル様の言葉が発端となったのか、

その後、二人は剣を使って切り合いを始めました。


 おお~い、付いて来ておいて私達は放置プレイですか、お兄様方!

何がアデル様を怒らせたのかは分かりませんが、大人しく私達はお弁当を食べ、

ローディナ達の素材探しのお手伝いをしておりました。



「ねえ……前から気になっていたんだけど、

 もしかしてユリアは、アデルバード様の恋人なの?」


「え? いえいえ違いますよリーディナ。あの方はお父さんみたいな方です」


 言われてぼっと顔を赤らめてしまった。恋人、そんな風に見えるのか私達は。

これはいけない。ユリア本人と女主人公さん達にお会いする前に誤解を解かないと。



「まあ若くて素敵なお父様ね。うふふふ……。

 でも、どちらかというとお兄さんじゃない?」


「そ、そうですね、ちょっと、過保護気味ですけど……。

 早く子離れ、いえ妹分離れして欲しいと思いますね」


「うーん……私にはそういう風には見えないけど、

 でもあの様子だと、まだ無理そうじゃない? 

 子供の遠足に付いて来ている状態ってことでしょ? ねえ、ローディナ」


 リーディナがそうローディナに同意を求めると、

ローディナもにこにこと頷いていた。



「やっぱり、そう見えますよね……?」


 そんな訳で、女の子三人とリファ、騎士団の二人が加わって、

最近は冒険者ごっこな事をしているわけですが……。

一緒に来てくれたアデル様を私は不安げな顔で見ていました。


 もしかして彼にとって私は、いわゆる初めて立ち上がった子供が、

一人で道を歩くような心境なのでしょうか?



 ただ、最近は別の事にも気づきましたよ。



「あれ……ねえリファ、最近のアデル様、元気が無いよね?」



 そう、ローディナの一件からですが、アデル様が時々塞ぎ込んでいる気がします。

まるで何かに追い詰められているような、たまに険しい顔つきもしています。

きっと遭遇したあの魔物のせいでしょう、彼は気になる事を言っていましたから。



『俺の家族を殺したのと同じ奴だ……』



 彼が言っていた言葉と私の断片的な記憶を考えると、

つまり、あの魔物こそがアデル様の家族を殺したかたきなのでしょう。

画面で見るのとは違う、リアルな魔物だったので動揺していましたが、

私もあの魔物は彼のルートで見た事があります。



 私が知る限りの情報を思い出してみると、

ゲーム本編のアデル様のルートでは、仇討かたきうちがクリア条件の一つになっていました。

と言う事は、今まで彼は家族や仲間を奪った者と遭遇していなかった事になる。

いずれは彼が退治する為に動くにしても、今は手が出せない状態。

きっと歯がゆくて仕方が無いのだと思いました。


(私も、何か力になれればいいんだけど)



 私の冒険に付き合ってくれたり、何かと気を配ってくれていますが、

まだ、己の心内を話せる人には、なれていないようですね。


(せめて愚痴でも言ってくれたら、

 よしよし……とか、してさしあげるんですが……)



 ……あ、でもそれじゃ犬と同じか、駄目ですかね?

リファは喜んで……リファと一緒にしては駄目かな?

でも彼も獣だよね? 私は何時も目にまぶしいイケメン姿を龍体でイメージします。


 すると……あーら不思議。


 彼に何をされても、動物がたわむれているようにしか思えません。



(私の頭やほほをなでるのも、ただ、じゃれ付いているだけでしょうし。

 伝説の龍に懐かれるなんて、貴重な体験じゃないでしょうかね?)



 まあそんな訳で、現在の彼の姿を考えると、

龍姿のアデル様がしょんぼりしているように私には見えるのでした。


 だからメイドユリアの立場として考えます。


(ユリアは、彼を愛していたユリアはこんな状態を放っておけないよね)



 ご主人様をいやすのは、メイドのお役目でしょうとも。

え文化を理解している身の上としては、メイド喫茶ならぬ、

メイド屋敷を展開して、ご主人様をいやしてさしあげたいと思いました。


 ただ、私はアデル様のえポイントとか、好みが今現在も分かりません。

本人の目の前で、何パターンも演じ分けるにはいささか無理がありますし、

だったら、沢山の女性をお屋敷で雇って貰って、様子を見ようと判断しました。

きっと一人くらいは、アデル様の好みのタイプが居るでしょう。という考えの元です。




「というわけで……大きなお屋敷で働きませんか? 従業員募集中です」

 お願いしま~す。 若手の従業員を募集していますよ~?」



 それからしばらくの間、お屋敷の切実な従業員不足を解消すべく、

仕事の合間に手作りの求人チラシを沢山作って、街中で配ることにしました。


 知り合いになった宿屋にも、ギルドにも、職業紹介所にも置いて貰って、

私は人が多く行き交う噴水広場で、元気良くチラシ配りです。

この私がアデル様の使用人として歩くだけでも、きっと効果がありますし。


 

 現在、お屋敷には男の人ばかりの環境なので、

女性が入りにくい環境だと思います。男性社会に進出する女性の苦労ですね。

その為、女性視点から見ての待遇面を細かに書いた、手作りのチラシを作りました。

何より私という存在が既に居る。それだけでも印象は変わってくると思いますよ。


「クウン~……」


 今日はリファも、ちんまりミニマムフォームで頑張ってくれています。

プルプル震えながらチラシを口でくわえて、ぬいぐるみのように座っていてくれますよ!


 頑張ってくわえている姿に、きゅんっとなるのは私だけでは無いはず。



「……え? あなた、あのお屋敷で働いているの? 大丈夫?」


「あのお屋敷って……その、例のとても怖いってうわさの騎士団長様の家でしょう?

 見た目は素敵な人だけど、とても厳しい方で女の子が泣いて辞めていくって……」


「怖い事をされているんじゃないの?」


「次々にお手付きをして、手酷く捨てられているとか」


 そんな事をチラシを受け取った方に次々に言われて、

私はにっこりと微笑んでそれを否定しました。


「大丈夫ですよ。私は一ヶ月以上働かせて頂いていますが、何もありませんでした!

 ご主人様は人付き合いが苦手な方なので、大変誤解されやすい方ですが、

 身寄りの分からない私にも、とてもとても気を使って下さる方なんです」



 ――怖いことはない……とは思いますが、相手の正体が龍なので伏せて置きます。

ラスボス付きのお屋敷なんて、ある意味レア体験だと思いますよ?


(……とってもスリリングな経験が出来るんじゃないでしょうか?)


 いや、スリリングを職場で求めてはどうかとは思うけどね?

何時もよりも気持ち柔らかめに営業スマイルをしておこう。

……しかし、やはり皆様の反応は鈍い気がするのは残念だ。

予想はしていましたが、まさかここまでとは。


「皆に恐れられる騎士団長様……かあ」


 酷いどころか、私は申し訳ないほどに大切にされていると思います。


 最初は、私がアデル様の元で働いていると知り、

心配して下さる方も居たけれど、あまり嬉しくない状況でした。

これは早めにアデル様の印象を改善するべきだ。


(元々、メインヒーローだから、近寄りがたいっていう所とかは、

 まあ理解できるんだけど、怖がられるっていうのはちょっとね)



 女性がこれで集まってくれても継続してくれないと困るので、

アデル様のまとうあの独特の気を、どうにかして和らげられないものか、

もしくはいやしたりして、消さないことには、人員獲得は難しいのかな。

早くリーディナ達の研究成果が出てくれることを祈るのみです。



(本当は寂しがりやな龍って感じで売り込めたらいいんですがね。

 ほら、哀愁あいしゅうを漂わせれば、女性はころっと……ころっと……)


 ――いってたら、こんなにこじれないか。そうですか。



(うーん……私にはそんなに怖い方には思えないんだけど……)


 むしろ、私の兄のような頼れるお兄さんで安心感があるんだけど。

 

 女主人公さんのように、彼への愛情がないとダメなのかもしれません。



(愛情……かあ)



 ユリアはそういう立場だったから、

私がそんな素振りを彼にしなければならないのだろうけど、

役に没頭するあまりに感情が引きずられて、戻れなくなったら怖いんですよね。

ユリアご本人が戻ってくる確証もまだ分からないですし。



(主人公さんもいないとなると、私が代わりに……いやいや)


 私は一時的な代役なんだから、そこまでする必要ないんだってば。

 ……なんて事を心の中で色々考えていたのです。



「でもこれで女性の方が増えたら、玄関でお帰りなさいませ、ご主人様。

 とか言って、お決まりのお出迎えをしたいと思うんですが。

 どうですか、リファ、私の壮大ながらささやかなこの計画。

 世の男性の夢と希望の詰まった空間を、リアルで実現させようと思うんです」


「クウン?」



 その為には、一人じゃ出来ないんですよ。ご主人様を両側から出迎えて、

そろってお決まりの名台詞めいぜりふでキメ! しなければならないんです。


 お人形を複数使って、腹話術みたいにやったら、コントみたいにしかなりませんし、

ここは人数を最低限そろえてみたい所なんですが……。



「ローディナ達に頼んでみたい気もするのですが、

 二人とも忙しいですよね。メイド服、とても似合いそうなのに残念」



 ヒロイン三人がそろってお出迎えですよ。絵的にもイケる構図ですのに。

私やアデル様の事で働いてくれている今、これ以上の贅沢ぜいたくは言えません。



 チラシを作った分は全て配り終わり、早く見つかる事を祈ります。

お利口にしてくれていたリファの頭をなでて、抱っこして家路を急ごう。

アデル様の帰宅時間になる前に、お屋敷に帰らなくては。


(私は、偽物のユリアだけど)


 やっぱり、「お帰りなさい」と言ってくれる人が居ると違いますからね。



※ ※  ※ ※




 

「――ただいま帰りました」


「おっ、お帰りユリアちゃん。アデルバード様はもう帰っているよ」


「え!? きょ、今日はお早いお帰りですね」



 てっきり間に合ったと思っていたのに、既にご帰宅だったとは。

今日のミッション「お帰りなさいませご主人様」が出来なかった私は、

がっくりとうな垂れました。私が出来る得意分野だと思いましたのに。


「アデルバード様、具合が悪いみたいで早退して来たらしいよ。

 帰ってきて直ぐに部屋にこもってるから、きっと寝ているんだと思う。

 今夜の夕食はいらないそうだから、静かにしていた方がいいだろうね」


「そう……ですか……」



 気になります……具合が悪いなら、お医者様を呼ばなくていいのでしょうか?


 でもそれだと彼が龍だとバレてしまうかもしれないし。

彼の正体を知っているのはごく少数で、彼もそれを隠している。

なので正体がバレるような事があれば、彼を危険にさらしてしまうのではないか?


 龍は本来、生命力が強い。防御力も治癒能力も人よりも高いものだ。

その龍である彼が具合を悪くしているというのは、

実は相当な状況なのかもしれないと思えた。


 そっとしておいた方が、本当はいいのかもしれないけれど……。



「リファ……アデル様、大丈夫かな?」



 悩みに悩んで、アデル様の部屋のドアをノックする。


 せめて、何か飲み物とかだけでも、ご用意してあげられないかなと思ったんです。

やっぱり食事を抜くのは体にも良くないですからね。

消化の良いスープとかなら、口にできるかもしれませんし。



「アデル様、ユリアです。ただいま戻りました……入りますよ?」


 容態が悪いと聞いていたから、もしかしたら声が出ないのかもしれない。

だから私は彼の返事を待たずにドアを開く。其処で私は見てしまった。



「あ……っ」



 ぎろりと大きな獣の目をした紫の瞳、大きな黒い翼、

部屋いっぱいに広がる大きなその巨体には、蒼黒いうろこがびっしりと……。


 それは、私の世界で幻想の世界での生き物とされる龍の姿。

私が初めて見るアデル様の、もう一つの姿……。



「グルルル……」


「……っ」


 低くうなる声、びりびりと感じる威圧感。


 向けられる強い怒りの感情と苦しげな息遣い。


 きっと逃げ出した女の子達は、この姿を見てしまったのだろう。

そして恐怖の余りに見た事さえも忘れて、恐ろしさだけを覚えていたのではないか。


 人の輪にいながら、相容れる事が出来ない一番の理由が「種族の違い」

アデル様本人も、どうする事もできない理由だ。



「アデル様……?」



 一歩、また一歩アデル様の方へ近づく度に、

足が、手が、頬が、全身がびりびりとしびれる。


 彼は私が近づく事が無いように、威嚇いかくをしているつもりなのだろう。


 でも大丈夫、私は「この事」をもう知っている。

画面の中だけの話だが見た事があるんだもの。


 だってユリアの攻略ルート解禁の条件には、

アデルバードの攻略が事前に必要だったのだから。


(これが、アデル様の本当の姿) 


 どんな人かも知っている……だからこの状況も知っているのだ。

実際のものとして見るのは、これが初めてのことだけれど……。

怖くない。怖がってはいけない。ううん、むしろ――……。


「クウンッ! キュウイイイ?」


 リファは部屋の入り口で、慌てて私を引き止めようと呼んでいるけれど……。



「アデル様……」



 でも、私は彼に少しずつ近づいた。怖がらせないように、傷つけないように……。


 ここで逃げたら、彼を深く傷つける事になると誰よりも知っているから。

両手を伸ばして黒い鱗に触れる。ひんやりと冷たいだけだと思っていたけれど、

その体からは温もりが伝わってきた。


 こんなに大きな体をしているのに、人の姿で無理をして暮らしていたのだ。

たまには元の姿に戻り、発散させておかないと苦しいのだろう。

窮屈きゅうくつな人と言うおりに、閉じ込められているのと同じだから。



「アデル様、何処か苦しいですか? 辛いですか?」


「……っ!?」


「大丈夫です。私、怖くないですよ。だから心配しないで下さい……触れますね?」



 私は彼に寄り添い、声をかけてから静かに彼のうろこをなでる。

これが最後の蒼黒龍そうこくりゅう、アデル様の本来の姿。

この国の龍の中で一番、強い力を持つとされる龍の生き残り。


 そして、人と共存する事を自ら選んだ。唯一の龍でもある。


 怪我をしたのかと見てみたが、何処も異常はなさそうだ。

だとしたら体の中だろうか……ストレスとか胃痛とか?



(慣れない生活をしているのは、きっとアデル様もなんだろうな……)



 自分とは違い、最初は誰も味方が居ない状態から始めた彼。

背負って来たものは、私よりも遥かに重いだろう。


 熱はどうだろうと、頭に手を触れて熱も見てみたが、良く分からない。



(そうだ……っ! ラミスさん!)


 ここで私は、ラミスさんの存在を思い出した。

紅蓮騎士ぐれんきしラミルス。私も知っているアデル様の友人。

彼もまたゲームのヒーローの1人で、そして何より数少ない龍仲間でもある。

そうだよ! 彼ならアデル様の治療法が分かるかもしれない。

急いで彼を呼んでこよう。



「待っていて下さい、ラミスさんを直ぐに呼んできますか……」



 言いかけた所で、私は彼に尻尾しっぽで止められた。

そして私にゆっくりと首を左右に振ってくる。


 そんな……呼ぶなという事ですか!?


「どう……してですか?」


「……」


 それすらも許されないなら、私には他に手を打つ事ができないじゃないか。


 自分は獣医の心得なんてないし、この世界の事も分からない事ばかりだ。

アデル様がこのまま死んでしまったらどうしよう……私は彼の頭を抱きこんで泣いた。

彼にはいつだって私を沢山助けてもらったのに、支えてくれたのに。


 彼を助ける方法が分からない。この世界に来て、彼が居たからこそやってこられたのに。


「アデル様……そんな……こんなに辛い思いをされているのに」



(沢山のご恩があるのに、ずっと守ってくれたのに、

 こんな時に私は何もしてあげられないなんて……っ!!)


 私は不甲斐なさと不安から泣いて泣いて……。


 リファがなぐさめてくれても、涙はあふれてきた。

私が知る限りで助ける術なんて分からない。

ただ彼の頭を抱きかかえる事しかできなかった。



(私は、今まで何をしてきたの。もっとやる事があったはずじゃない)


 私はあちらの世界に居たのに、正体を知っていたのに、彼を救う方法が分からない。

こんな事になると分かっていたら、もっと真面目に覚えておけば良かった。


(私が、きっとやっていない所に助ける方法があったのだとしたら)



 どれ位私は泣き続け、どれ位時間が経った事だろうか……?


 いつしか泣き疲れた私は……アデル様に寄り添ったまま眠りに付いてしまった。

せめて傍に付いていてあげる事しか、私には出来なかったから。





※  ※  ※  ※




 明朝――……。



「――ん……っ、あ……あれ?」



 目が覚めた私は、アデル様の部屋のベッドの上に居た。


 人の姿に戻っていたアデル様の腕に抱かれ、

リファに背中から寄り添われながら、眠っていたようだ。

あれ? 具合が悪いんじゃなかったの? と思う疑問さえも吹っ飛ぶほどに、

今見る彼の顔色は血色も良いように見えた。


「……」


 彼は私を抱きかかえながら、心地よさそうに静かな寝息を立てて眠っている。

顔は近い、とても近い。少し位置を変えれば唇同士が触れてしまいそうだ。

まあこんなに綺麗な顔が至近距離で……眼福だと拝んでいる余裕などある訳ない。


(……この状況ってやばくないですか? ですよね?)


 そして彼の腕は私の腰に回っている。

まさに恋人とか妻とかじゃないと許されない距離とかじゃないかな。これって。


「わ、わわわ……」



 すっかりと目が覚めた私は、顔を真っ赤にしたまま、

悲鳴を上げて部屋から脱出した。


 イケメンのお兄さんの無防備な寝顔は、半端ない破壊力でした。

中身が龍だったとしても、今は人型! 流石にこれは意識してしまうよ。


 リファ、何で助けてくれなかったのよー! 一緒に寝てないで教えてよ―っ!!



 その後、私の悲鳴を聞きつけたおじサマーズ達が、

アデル様の部屋に襲撃に行こうとするのを、私は必死で止めました。

だから! タワシじゃ無理ですってば!!






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