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~ティアル・子猫が天使になったとき~

黒い子猫の妖精ティアルの過去編・本編のティアルのネタバレ要素含みます。

シリアスメインなので、苦手な方はご利用をお避け下さい(平伏)


 

 みゃああ……みゃあああ……っ。




 雨が降ると思いだすのは、あのころのこと。


 気づいたら知らない世界にぼくだけがいた。


 ぼくは、ママと引き離されて、 暗くてせまい部屋に閉じ込められていたの。



「なんだろう? さっきから近くで泣き声がするね」


「あ、もしかしてあれじゃない?」


「子猫?」


「捨て猫みたいだね。わあ、可愛い」


「わあ、みてみて! まだちっちゃいよ。可愛いね」


「でも……うちじゃあ犬がいるから駄目だなあ」




 出して、誰かここから出してとずっと鳴いていたら、上から光が差し込んできた。


 顔を見上げると、何もなかった所から自分の顔を覗き込むたくさんの視線。


 みなれないものの視線に、体がびくっとしたのを覚えている。



「みい~……っ」


「わああ、可愛い!」


「ちっちゃいね!」


「可愛いね、私も触る!」




 ぼくにたくさん大きな手が伸びてきて、ぼくにさわってくる。



 ニンゲンというものだと、前にママが教えてくれたけど、

ぼくが覚えている大きなそれとは違い、とても小さい子たちだった。



――これもニンゲン? よくわからなかった。


 ぼくが知っているニンゲンは、ここにぼくを閉じ込めたけど、

それでもまたこの子達に何か怖いことをされるのかなと思った。


 ぼくが初めて出会ったのは、暗くてせまいここにぼくを閉じ込めて嫌なことをしたから。


 でもね? こうしてちょっとでも明るい所に出してもらえるのはうれしかったの。

ここは何もなくて、誰も居なくてとても寒くて、こわかったから。




「あ……見て、この子の背中」


「あー……だからかあ」


「そういえばさ、黒猫って不吉だとか言われているの知ってる?」


「えっ!? 何それ、やだっ! 早く言ってよ触っちゃったじゃない」



 しばらくすると、ぼくに笑顔を向けていた顔は変な顔をする。

そして何ごともなかったように、またぼくを暗い部屋の中に押し込めて、閉じ込めた。


 まって、おいて行かないで、ぼくも連れて行って。


 部屋の外から聞こえるのは遠ざかる足音と、近くで聞こえる何かの獣の吠える声、

そして、ざあざあとひびく水の音。


 そのせいか、暗い部屋はとても冷たくてぐにゃりと曲がっていく。

部屋がどんどん押し寄せてくる。こわいよ、なにがおきてるの? 


 お話してくれるものも居ないし、くっつける相手も居なくて寒い。

暗くて狭い所から、ぼくがどんなにがんばっても外には出られなかった。


 ママ、ママ、どこいっちゃったの?




「みゃ、みゃああ……みゃああ……」




 何度もママを呼んでみたけれど、ママは来てくれなかった。


 どうして来てくれないのかな、ママ、ママおなかすいたよ。

そんなことを思っていると、また上から光が差し込んできた。




「おいで」


 ぼくをそう言って抱き上げてくれたのは、1人のニンゲンの女の子。

その子は、さっき自分を抱き上げていた子達と一緒にいた子だ。

”こわがっているよ”といって、ぼくにさわってこなかった子だった。



「みゃあ~……」


「……おいで? 一緒におうちに帰ろうね?」


「みいい……」



――かえる?


 ぼくを抱き上げてくれたその手は、とてもあたたかかい。

そして自分の中に入れて包みこんで、体をなでてくれる。

もしかして連れて行ってくれるのかな? この子の言っている事はよくわからない。


 でも、とってもやさしい声で「だいじょうぶだよ」と何度も話しかけてくれたんだ。

それがどんな意味かなんて、ぼくにはわからなかったけど。


 でも、その子の目はやさしくて、いやな感じはしなかった。

だからなんとなく……きっとこの子なら、“だいじょうぶ”な気がしたの。



「大丈夫、お母さんには、私がなんとか頼んでみるから。

 あなたの帰る家、私が用意するね」



 そう言って、ぼくを包んでくれるやさしい声……あったかくてやさしい声。



 冷たくて、暗い雨という水の音がひびいていた世界で、

おなかがすいていたぼくを連れ出そうとしてくれたのは、この子がはじめてだったの。



 女の子は自分の住処に連れて帰ってくれると、すぐにぼくの体を温めてくれた。



「震えている……風邪ひかないといいんだけど」



 体のまわりにふわふわの何かで体を包み込んでくれる。

何だろう、前にもこういう事をどこかでされた事がある気がする。

どこだったっけ? 思い出せなかった。




「みい……みい」




(オナカスイタ……)




 もうどれだけママと離れているんだろう。おなかがずっとクウクウする。

ママ、みんなどこにいっちゃったのかな。置いていかれちゃったのかな?




「おっ、結理亜おかえり~って、おい、それは何だ。何を持って帰ってきたんだ!?」



 現れたのは、ぼくを腕に抱く女の子よりも一回り以上も大きいニンゲン。

ぼくをあの狭い箱に入れた人間と同じくらいの大きさの人だ。


……なんて、ちょっと嫌な事を思いだしてしまって、女の子にしがみ付く。


 そうしたら女の子は、ぼくの頭を安心させるようにそっとなでてくれた。




「大丈夫だよ。この人は怖くないからね?

 ねえねえお兄ちゃん、この子のごはんになるものある?」


「猫って、やっぱりそれ捨て猫か? 母さん達が知ったら何ていうか……」


「それより、ごはん! 猫ってお魚なら食べられるよね。

 生がいいの? 焼いた方がいいの? 種類は? 魚ならなんでもいいの?」


「まてまてまて、何か弱っているようだし子猫だからいきなり魚はまずいだろ、

 ミルクを温めてやるといいけど、牛乳はまずいから、子猫用のが必要だな。

 ドラッグストアか、ペットショップとかなら売っていると思うぞ」


「分かった。じゃあ今から買ってくるからこの子のことお願いね。お兄ちゃん。

 寒がっているから、抱っこしてあったかくしてあげて。いじめないでよ?」



 そう言って女の子は、「いってくるね」といったあと、

ぼくを目の前の大きなニンゲンの腕の中に、ぽんっと渡してさっていく。



「みゃっ!」



 まって、おいていかないで、こんなに大きなニンゲンこわいよお。


 知らない場所、知らない匂い、それがとても怖くて仕方なかった。

この人より、さっきの子の方がこわくない、慌てて追いかけようとした。



「うわっ、ちょ、そんな怯えないでくれよ傷つくなあ。

 別に取って喰いやしないぞ俺は……まだ人間慣れしてないのかなこいつ」


 じたばたしていると、嫌がっていたのを分かってくれたみたい。


 ふかふかのモノの上に降ろされ、立っている力もなく座り込む。



「み……」


「ほら、ちびすけ大人しく待っていろよ? 今、俺の妹がお前のえさを買ってきてくれるから。

 あ、俺はりつな……って、こんな子猫に言っても分からないか」



 なにか話しかけられているようだけれど、なにを言っているんだろう?


 暗いあそこに居たときとは違って、ここはあっかいな。

頭をなでてくれたら、少しだけこわくなくったからふしぎ。


 でも、おなかはきゅるきゅる鳴っていて、

さっきから足はふらふらするし、頭がくらくらってして、へんな感じがした。



「みゅい~……」



「うっ……俺は何もできないからな? そんな目で見ないの」



 これからどうなっちゃうのかな……もしかして食べられちゃうの? 


 そんなことを考えていたら、さっきの女の子が帰って来て、

がちゃがちゃと物音を立てて何かをはじめている。

不思議に思ってみていたら、やがて目の前にあったかくて白いものを皿にのせて、

女の子がぼくのほうへ戻ってきた。




「お待たせ~はい、どうぞ?」


「みゅ……」


「あれ? スプーンとかであげた方がいいのかな? 

 じゃあ、えっとこれで……おいで?」


 くんくんと匂いを嗅げば、ママの匂いとはちがうけど、おいしそうな匂い。

ぺろっとためしに一回なめてみた。甘くてママのミルクとは違うけど、これは食べ物だ。

急いでぺろぺろと白いものを口に含んだ。おいしい、おいしい。




「ふふ、良かった。焦らなくてもいいよ……おいしい?」


「みゅい」


 お返事をしたら、目の前の女の子は嬉しそうに笑って頭をなでてくれた。


 ああ”だいじょうぶ”って、このことなんだね。




「お礼を言ってくれているのかなあ? みゅいみゅい言っていてかわいい~」


「あ~あ……餌付けまでしちゃって、後で母さんを説得しないといけないな」


「お兄ちゃんお願いします。話術はお兄ちゃんの得意分野」


「説得能力に声優や役者は関係ないから、自己PRとは違うんだぞ」


「この子の名前は何にしようかな~、可愛いのがいいなあ、あ、私は結理亜だよ。

 ゆ・り・あ。でね、こっちは私のお兄ちゃんでりつ、よろしくね猫さん」


「みゅい~」


「うおおい、俺は無視かーい!」


 他のことばは良くわからなかったけど、この子のお名前がユリアってことは分かったよ。

その後、ここに置いてもらえることになって、食べ物も貰えるようになった。

体が震えていたら抱きしめてくれて、ママや兄弟を恋しがっていたら、あそんでくれた。



「お母さんが居なくて寂しいんだね……ごめんね会わせてあげられなくて。

 でもね。私もお兄ちゃん達も、みんな君の新しい家族だからね」


 そう言って頭をなでてくれる、ユリアの手はいつもやさしくて。


 ここはママもみんなも居ないけれど、あったかくてだいすきだった。

ここに居る人達はみんな優しくてすき。



 最初は怖かったユリア以外のニンゲンも、

ぼくを可愛がってくれているのが分かったから、すぐに大切な場所になった。


 でも一番すきなのはユリアなの。ぼくを連れていってくれた。

いつもぼくを可愛がってくれていたから。




「ティアルは本当に紅茶の匂いが好きだねえ」


「みい~」


 ぼくの名前もね。付けてくれたんだよ。ティアル、それがぼくの名前。


 ユリアが付けてくれた、ぼくだけの名前なの。

この「こうちゃ」っていう匂いがすきだから付けてくれたんだけど、

ティアル、まだこれがどんな味をするのかしらないんだ。



「ああ、ダメダメ、欲しがっていてもあげられないよ、ティアルはミルクね」



 ユリアはいつも甘くていい匂いがした。

同じものが食べてみたくておねだりしたけど、ダメだよといわれてちょっとすねてしまう。

しっぽを床にぺちぺちしていたら、ビスケットとミルクをもらえたからいいか。

ティアル、このビスケットもだいすきなの。 ミルクに入れて食べるんだ。




「みい」


「うーん、ティアルじゃなくて、ビスケって名前の方が合っていたかもね。

 本当にビスケット好きだねえティアルは」




 ユリアに付けてもらった「ティアル」という名前はとても気に入っていた。


 ティアル、ティアルの名前、ユリアからもらった大切なモノ。

ユリアがくれたティアルへの、初めてのプレゼント。




「みいい~みいい~」


「ん~なんて言っているのかなあ? 一生懸命お話してくれているのは分かるんだけど。

 ごめんね私、猫語分からないから……とりあえず、今日も一緒にあそぼうか?」


「み!」



 なにしてあそぶ? かくれんぼ? ボールかな?


 ユリアはいつもティアルとあそんでくれた。おそとにも連れて行ってくれた。

体がうまく動かせないぼくの為に、だっこして、いろんなものを見せてくれたの。



「わあ……桜だよ。きれいだねティアル」


「みい」



 木漏れ日の間から見える空、道をいろどる草花と、はらはらと空を舞う花びら。

一緒に歩いた道も、だっこしてくれて見せてくれた道ばたから見える景色も、

ティアル、みんなおぼえている。おぼえているよ。


 今頃ママはどうしたのかな? ティアルここにいるよ。

ティアル、ここで幸せにくらしているよ。そう、教えたかった。


 だってここは、とってもあたたかかったの。 みんなも来ればいいのにって。

みいみい鳴いてママを呼んでいたら、ユリアがぼくをぎゅっとしてくれた。



「ティアル、ママのことを呼んでいるの? 

 ごめんね。会せてあげられるなら私も会わせたいけれど……」


「みいい」


「でも……私がお母さんの代わりにいるからね?」


「みい?」


「ずっと……ずっとずっと私達は仲良しだよ、ティアル」




 他のニンゲンのことは良くわからないけれど、

ユリアのことはなんとなく分かってきた。


 ティアルの”おせわ”をするために、お友達とけんかしてしまったことも、

絵本を読んでくれる時に、ユリアがティアルの体を気づかってくれていることも。

ねむい目をこすって、ティアルの体をぽんぽんしてくれたことも。



「ティアル、おいで?」



「みい……」



 ティアルね。ユリアのことすきなの。 とってもとってもだいすきなの。


 やさしくて、あったかくて、いつもティアルとイッショにいてくれるから。


 いつかね。元気になって、大きくなったら今度はティアルがユリアを守ってあげるの。



 だから、だからねユリア……。



 わらってほしいの。




 いつからなんだろう? ユリアはね、ティアルのことをみなくなってしまったの。


 どんなに呼んでも応えてはくれないし、だっこもしてくれなくなったんだ。

ティアル何かわるいことしたかな? おこらせることした?


 ティアル、いいこにしているよ? だからね、だから……。



「みいいい……」




 エンエンしないで、ユリア。




「うう……なんで……ティアル……っ!」


「……みい」


「私を、一人ぼっちにしないで……お願い」




 ねえ、どうして、ティアルの名前をよんでいるのに、ちがう所をみているの? 


 ユリアの目からは、たくさんのお水が流れていたの。



 気づけばずっと感じていた体の痛みも感じなくなっていたんだよ?

吐いたりすることもなくなったし、今はこんなに体が軽いんだ。


 それがとっても嬉しくて、これでユリアとたくさんあそべる、ユリアもきっと喜んでくれるよね。

ユリアの笑顔がみたかったから、ぼくはあの子にかけ寄って行って、いっぱいお話ししたの。


 ティアル、もう“だいじょうぶ”だよ。ユリア困らせないよ?


 けれどなぜかぼくの姿が、だいすきなあの子にはみえていなかったの。


 どうしてなのかな? なぜなのかな?


 ねえ、ここにいるよ? ティアルいなくなってないよ?



 ずっと”ナカヨシ”だし、ずっと”イッショ”だよ?


 だから、エンエンしないでイッショにあそぼうよ。


 そう伝えたくて、ユリアの周りをくるくる回って話しかけるけれど、

ユリアは最近ずっとエンエンしていて、こっちをみて、わらってはくれなかった。



「みい……」



 ティアル、やっぱりユリアをおこらせることしたのかな? ティアルわるいこ?

目の前には、ティアルと同じ姿をした小さい絵がおいてあった。


 ユリアはずっとティアルじゃなくて、それをみてエンエンしているの。


 ”ティアル”って、ぼくの名前をよびながら……。


「みい……」


 ユリアにまただっこしてほしいのに、ユリアはティアルの事をみてくれない。

それがとても悲しくて、さみしくて、みゃあみゃあユリアに向かって鳴いた。


 ねえ、きづいて、ティアルここにいるよ?




”――ここに居たのかティアル……”




 そんな時にぴかぴかしたものが、ふわりとティアルの前にやってきたんだ。


”ティアル”


「み~?」


 ぼくはそれを不思議そうにみつめたの。聞きなれた懐かしい声に耳がぴくりと動く。


 するとそれは一人のニンゲンの姿に変わって、その姿を見たとき、

ぼくは、うれしくて駆け寄って、おもいっきり前足をだして飛びついた。



「みい!」



 リツ、リツだ。ユリアの「ニイニイ」なの。


 今までどこにいっていたの? ずっと会えないから探してたんだよ?

おおきな箱にかくれんぼして、そのまま帰ってこなかったんだもの。


 ぼくをだっこしてくれたリツは、ぼくのおでこにそっと指先を触れた。

すると、その時に何かあたたかいものが流れ込んでくる気がした。




「よし、これでいい。これでティアルと話せるよ

 なあティアル……俺と一緒に行こうか?

 ここに居ても、ティアルや俺の姿はみんなにはもう見えないから」


「みい?」


「俺達はみんなとは違う存在になったんだよ。魂だけの状態なんだ。

 魂の状態だから、こうしてティアルと俺は魂を通じて直接話せるんだよ」


「……」


 むずかしい事はよくわからない。リツの言葉はいつもむずかしいよ。

そんな事を考えていると、目の前のリツは苦笑しながら頭をなでてくれた。


 ティアルは”ビョーキ”だったから、ユリアとイッショに大きくなれなくて、

長くは生きられなかったんだって、リツはいうの。


 生きるとか、死ぬとかよく分からないけれど、

それでティアルはユリアと、バイバイしなきゃいけないんだって。

よくわからないけれど、でもユリアとちがうのは、なんとなく分かった。


 ユリアにさいごにだっこされたとき、『いたいのナイナイ』をいっぱいしてくれたけど、

なんとなくユリアはいつもとちがうお顔で、何かあるんだなって思ったから。


 ティアル、だから、アリガトって言ったの。

いっぱいいっぱい遊んでくれたユリアが、だいすきだったから。



 ぼくはユリアのニイニイ、リツの腕の中でうしろのユリアを振り返る。


 ねえリツ、ユリアがエンエンしているの。ずっとティアルをよんでいるの。

ユリアがエンエンしているから、ティアルもエンエンしちゃったの。


「ユリア……そうだな」


 ティアルを抱き上げてくれた温もりも、ティアルの名前を呼んでくれたことも、

全部おぼえている。全部おぼえているよ。新しいおうち、新しい場所、

新しい家族を与えてくれた、この小さな女の子の存在も。



「みい……ティアルノママ、ユリア……ティアル、イッショイル」


「ティアル……」


「ユリア、ティアルノママニ、ナッテクレタ。 イッショ、イテクレタ。

 みい、ティアル……マダ、オンガエシ……シテナイノ」


 いつか大きくなって、強くなってユリアを守ってあげなきゃいけないのに。



”ティアル、だいすきだよ”



 ユリアがエンエンしないように、いつもわらってくれるように。

わらってくれるユリア、ティアルだいすきだから。



「ティアル、リツト、イケナイ」




 だからリツとはバイバイした。リツの分までユリアを守ってあげるって、やくそくしたの。

ユリアにはもう見えないけれど、分からないけれどティアルはユリアとイッショにいるよ?


 ずっとユリアがティアルにしてくれたことを、今度はティアルがしてあげるの。



「行ってきます」


 いってらっしゃい、ユリア。 はやくかえってきてね。


「ただいま」


 おかえり、ユリア。おそとは楽しかった?


「おやすみなさい」


 おやすみなの、ユリア。ぽんぽんしてあげるの。



 そうやってティアルは毎日をくり返して、ずっとユリアの傍で守っていたんだよ。



「みい……」



 いつかまた、ユリアにだっこしてもらいたいと思っていたけど、がまんなの。

だってユリアはいつもティアルのために、がまんしてくれていたんだから。


 ティアルね。リツにお願いしたの、ティアルのことでエンエンするなら、

ユリアがにこにこなれないなら、ティアルのこと忘れてもいいよって。

だから、ユリアを守らせてってお願いしたんだよ。


 ティアル、さびしくても平気なの、ツヨイコになるの。

ユリアと”イッショ”に居られるなら、がんばれるの。


 だからね。ユリア……エンエン、メ~なの。



 わらっていて……ユリア。





※ ※ ※ ※




「――……ル、ティアル」


「み?」



 ユリアのボールを借りて遊んでいたら、眠くなってうとうとしていたみたい。

でも自分をよぶ声がしたので振り返ると、そこにはだいすきなユリアがいた。



「みい、ユリア」


「さ、おやつできましたよ。一緒に行きましょうね?」


「み!」


 そう言って抱き上げてくれるユリアに、うれしくてのどをゴロゴロしてみる。

皆にだっこしてもらうけど、ユリアにしてもらえるのが一番うれしいんだ。

ティアル、ユリアがだいすきなの。イッショにいると、ぽかぽかするんだよ。



「みい~オヤツ、ナアニ?」



「今日はティアルの大好きなどんぐりのパンケーキですよ」


「み?」


「ふふ、あとラルクスのジャムを作ったんですよ、一緒に付けましょうね」


「みいい、ユリアスキ! みいみい」


「わっと、今日のティアルは一段と甘えっ子ですね。ふふ、よしよし。

 私もティアルのこと、大好きですよ……今日も元気でいてくれてありがとうね?」




 ときどきだけど、ユリアはティアルを見て不思議なお顔をすることがあるけど、

すぐにニッコリしてくれるから、ティアルうれしいの。




「みい、ユリアモ、アリガトナノ」



 ユリアがティアルをみつけてくれたから、ティアルはとってもシアワセでたのしいよ。



 だからね。ティアルもユリアがエンエンしないように、

今日もがんばってまもってあげるね。



 ティアル、ユリアがとってもだいすきなの。


 ずっとずっと”ナカヨシ”でいようね。ユリア。




~FIN~



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