1話 楓が勇者!?
学校の校門から約200mほど。
あたしたちはやっと歩き始めた。
…というのは、今まで走っていたからなんだけど。
抱っこはすぐに下ろしてもらえたし。
・・・まぁ、明日は怖いから休むけど。
「ったくよぉ…何なんだよ、あいつら。まじうぜー…」
「…そっすか…」
「すぐきゃあきゃあ言いやがって」
「…ハァ…」
「死ねよ。まじ」
「・・・」
ハイ。あたしが暴言はいてると思った人ー!!
でておいでー。怖いことはするけど変なことはしないよー??
こんなことしゃべってんの、1人しかいないじゃない。
――――か え で――――
「おい。沙良。聞いてるか?きいてなかったら、まぁ・・・
そっこー死刑だな」
もう嫌・・・。こいつ、ドSだし・・・。
「聞いてるよー」
あたしはてきとーに返事をする。と、
『みつけた・・・』
どこからか声がした。
「楓・・・きこえた?」
「まぁ・・・」
『あなたじゃないわ。男の人のほうよ。』
・・・あーそうですか。
かなりイラッときたが、まぁ、ゆるしてあげよう。
『申し訳ないけど、来てもらうわね。』
これは、完璧に楓に向けられた言葉だ。
そして、楓の下が開く―――――
と思いきや、あたしの下が開いた。
「「え。」」
みごとなハモリ。
そんな事、思ってる場合じゃないけど。
「沙良!!」
楓があたしの腕をつかむ。が、楓もいっしょに吸い込まれてしまった。
***
「ここ、どこだよ・・・」
落ちた先は、石の神殿みたいなところだった。
下には魔法陣らしきものが書かれていて、5人の人がその周りに立っている。
――――で、あたしの上に楓。
「どいてよ」
「え。ヤダ」
本当に何なのだろうか。こいつは。
あたしが苦労していると、扉が開き、きれーな女の人が出てきた。
「あら?お2人もいるんですか?」
口元に手を当て、驚いた表情をする。
と、5人の中の1人が、
「いえ。何かの手違いで、近くにいた少女が巻き込まれたようです」
といった。
「あら。そうなのですか」
女の人はすたすたと歩いてきて、あたしたちの前へ来た。
そして、あたしを一睨みし、
「貴方が勇者様ですね。お初お目にかかります。光の巫女、アリーです。」
楓に一礼した。
・・・・・・
「さぁ、そんな変な所にいないでお立ちください。」
アリーはそう言い、スッと手を差し出す。
・・・なんだ、こいつは・・・今、変なところって言ったぞ。
あたしの上を!!
差し出された手をうけとり、楓は身体をおこす。
そして、
「ほら、沙良も。」
と、手を差し出した。
アリーは今もこちらを睨み続けている。完璧、楓にほれてるな。アリー。
まぁ、アリーにカチンときていたので、楓の手をぎゅっとにぎり、身体を起こしてもらった。
ふっ!どうだ!!
いやらしい笑みでアリーを見てみる。と、
「まぁ。お優しいのですね。勇者様。」
「俺の事は楓でいいよ。」
・・・変わり身早っ!!
あたしスルー?
あたしは悲しい現実を見ながら話を聞く。
その話の内容は、
先月、魔王が復活したという情報が入った。
魔王を退治するために世界中の人々を呼び寄せたが、誰も勝てない。
というわけで、違う世界から勇者を連れてこよう。というわけらしい。
・・・えー・・・そんな話、あんの??
「ところでその勇者、異世界からは俺が初代なのですか??」
「ええ、そうです」
うーわー!!どんまい!!楓!!
あたしは助けないからね!!