10話 危機一髪。
タッ
相手はあたしに向かって走ってくる。そして、ナイフを振り上げた。
「え、ちょ、まっ・・・!」
まてまてまて。あたしはこんな所で死ねないんだよ。まだ、楓を殺さなきゃならないんだから―――!
「さようなら!」
相手はナイフを振り上げた。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」
そして、振り下げる。が、
ピタッ
ナイフはあたしに届く直前にとまる。そして・・・
ザァッ!
跡形も無く崩れ去った。
「な・・・!?何をしたんですカ!?」
あたしも、何が起きたか分からなかった。あたしは何も、何が起きたかも、知らないのだ。
『これは・・・』
あんずが、心あたりがあるように呟く。
「これは?」
『闇の魔術・・・。破壊か・・・!』
「破壊・・・?」
魔術・・・?あたしは、魔法を使っていない。唱えてすらいない。唱えた覚えなどないのだ。
「あたしは唱えてないよ?」
『ふむ・・・。たぶん、お主が死にたくないと強く願ったことで、魔法が発動してしまったのだろう。こんなこと出来るのは・・・』
「出来るのは?」
あんずは、まるであたしのした事がおかしいかのように言う。と、
「アナタ・・・ま、魔道士なのですカ!?」
あたし達の会話を聞いていた相手が驚いたような声を出した。
「そ、そうだけど・・・」
って、あたしは命狙われた人に何、言ってんだろー・・・。
すると、相手はあたしの手をぎゅっと握り、
「すみませんでしタ。ぜひ、ウチに魔法をおしえてくださイ!」
と言った。
・・・は?
「ちょ、ちょっと待って・・・。もう一回言って?」
「ウチに魔法を教えてくださイ!」
もっかい言うけど、は?
彼女は凄くキラキラした目であたしを見る。どッ、どうしよう・・・
「じゃ、じゃあ、宿を教えてくれたら、教えてあげても・・・。」
「ありがとございまス!ぜひ探しまス!」
なんか、性格が全然違うんだけどー・・・。
「じゃあ、ウチが泊まった宿なんてどうですカ?」
「まあ・・・いいよ。そこで。」
「やった!じゃあ、そこに案内しまス!」
うん。それはいいんだけどさ。
「名前、教えてくれないと、呼ぶに呼べないんだよねー。あたしは沙良。あなたは?」
「あ。ウチはレイでス!『宮』から来ましタ。」
「宮・・・?」
なんだろ。宮って。
「はイ。宮、しらないんですカ?」
「ああ・・・。東部の田舎から来たもんだからー。」
あははー。東部の田舎ってどこなんだろーね?←自分で言ってて自分でツッコミする奴。
「へェ~!沙良さんは『神』出身なんですネ。通りでめずらしい黒目黒髪なわけですネ~!」
・・・神とか宮とかって何?
ま、いいか。後であんずに聞こう。それより、
「よろしく。レイ。」
あいさつは大事だよね!
1話から間を入れました!
少しでも見やすくなっているといいです。