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07 輪郭


「私が……羨ましい?」


「お前には、私にないものがある。輪郭だ」


「輪郭?」


「永遠というのは、輪郭がないということだ。始まりもなく終わりもない。だからどこからどこまでが自分なのかがわからない。何が大切で何が大切でないのかがわからない。全てがあるということは、何もないということと同じだ」


ヴィクトルはエマを見た。


「しかしお前は違う。限られた時間の中で、限られたことしかできない。だからこそお前は選ぶ。パンを焼くことを選ぶ。この店を続けることを選ぶ。選ぶことができるということは、意味があるということだ。お前の人生にはお前だけの形がある。私にはそれがない」


「そんなことない」エマが言った。「ヴィクトルさんは存在していますよ。今、ここに。それに、選んでいるじゃないですか。毎晩この店に来ることを」


ヴィクトルは言葉を失った。


「大事なのは今この瞬間なんじゃないかなって」エマは言った。「今、ヴィクトルさんがここにいて、私がここにいて。この瞬間は、永遠でも有限でも関係なく、特別なんじゃないですか?」


エマは立ち上がり、新しい生地をこね始めた。


「もう一度焼いてみます。ヴィクトルさん、見ていてくれますか?」


「……ああ」


それはとても小さな営みだった。しかしヴィクトルにとって、それは八百年間で最も美しい光景だった。




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