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05 有限という祝福
その言葉は、ヴィクトルの中で何度も反響した。
永遠。彼はそれを持っていた。全ての時間。全ての可能性。どんな本も読める。どんな場所にも行ける。
しかしそれは同時に、何も始まらないということだった。
本を読まなかったのは、いつでも読めると思ったからだ。人と関わらなかったのは、いつでも関われると思ったからだ。永遠という時間の中で、彼はすべてを先延ばしにしてきた。何も選んでいなかった。何も失っていないということは、何も得ていないということだった。
エマは違った。限られた時間、限られた体力。しかしだからこそ、彼女は毎日を必死に生きていた。
有限であること。それは呪いではなく、祝福だったのかもしれない。




