表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

10 最後の夜


エマが七十歳になった年の、ある秋の夜。


彼女は店の奥の椅子に座っていた。息子が店を継ぎ、彼女はもうパンを焼いていなかった。しかし毎夜、ヴィクトルを待つためにここにいた。


「今日で最後かもしれません」エマは言った。「医者がそう言いました」


ヴィクトルは何も言わず、向かいの椅子に座った。


「私、幸せでした。毎日パンを焼いて、ヴィクトルさんと話をして。それだけの人生でしたけど、本当に幸せでした」


エマは窓の外を見た。満月が浮かんでいた。


「ヴィクトルさんに会えてよかった。永遠を生きる人に、有限の美しさを教えてもらえてよかった」


「私が教えた?」


「はい。ヴィクトルさんはいつも私を、大切なものを見るみたいに見ていてくれました。そのおかげで私は、自分の人生が大切なものだって気づけたんです」


エマはヴィクトルの手を取った。


「私がいなくなっても、誰かを見ていてあげてください。誰かの有限を大切に見ていてあげてください。それがヴィクトルさんが永遠を生きる意味だと思うから」


「約束する」


エマは微笑み、ゆっくりと目を閉じた。


「ありがとう、ヴィクトルさん。おやすみなさい」


その夜、エマは静かに息を引き取った。ヴィクトルは朝まで、彼女のそばにいた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ