彼女は俺にだけ甘い
彼女は誰に対しても冷たい
誰もが振り返るほどの美しさに惹かれ、近づこうものなら途端に鋭い視線で黙らされてしまう
その目は冷えきっていて、まるで氷の刃で貫かれたように体がすくむ
彼女の圧倒的な美しさに一目惚れする男子生徒は後を絶たない
しかし告白する前に彼らは皆、失恋を味わうことになる
——なのに、俺にだけは甘い——
今日も昼休み、俺は校舎裏の日当たりのいい場所に腰を下ろす
ここは“俺だけの秘密のスポット”だった……のだが
彼女に見つかってからは二人の場所になってしまった
今日も彼女はすっと寄り添って座ってくる
彼女の細い指先が俺の肩に触れ、表情のない美しさだけが張り付いた顔立ちにそっと笑みが宿る
「あんたといる時だけは、自然に笑えるわね」
そんな声をかけられるたび、胸が熱くなる
俺は何者でもない、ただの平凡な男だ
なのにどうして彼女は——
彼女は俺の頬に指を滑らせ、優しく言う
「ほら、お腹すいたでしょ? まったく、可愛いんだから」
……可愛い?
なんで俺にそんなこと——
「はい、ごはんだよ……食べないの? あ、そっか、撫でて欲しいのね」
彼女は俺の首筋をくすぐるように撫でた
細く滑らかな指の感触に思わず喉が鳴る
愛おしくてたまらない、そんな顔で覗き込み
彼女はにたぁっと、溢れんばかりの笑みを零した
「うんうん、いい子 可愛いんだから ほんとあんたにだけは弱いのよね」
ご飯の匂いに引かれ、俺は器を覗き込む
今日も彼女は俺の好きなものを選んでくれたらしい
「はい、猫ちゃん いっぱい食べてね」
そう言って、彼女はふにゃりと笑った
初めて短編を書いてみました
猫目線の勘違い話、楽しんでもらえたら幸いです




