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ATTENTION⚠️救済課

「お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!」

土臭い雨の匂いと血の匂いが鼻につく七月、私の姉は私を庇って、、、死んだ。


平凡な家庭だった。

両親は自営業で定食屋さん、お姉ちゃんは司書さんで私は大学生、今日だってこれから2人で遊びに行く予定で、、、

なのに、お姉ちゃんは撃たれて、死んだ。

強盗だって、殺すつもりはなかったんだって。

お姉ちゃん死んでんじゃん、なによ、それ、、、


「お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!」

「、ちゃ、ん、、、ごめ、ね、、、?」


遊園地、連れて行ってあげられなくてごめんね、、、

私は、私はお姉ちゃんが生きててくれたら、、、よかったのに、、、!!


「ーー!ーーさん!?」

「どーも、死神派遣所の救済課から来ました〜」

「、、、え?」

「あ、お姉さんだけ?」

「ちょ、先輩!?」

「うーん、妹ちゃん助かっちゃったか、、、」

「あ、あの」

「ど、どうするんですか!?特別判定になりにでもしたら、処罰課の連中来ちゃいますよ!?」

「黒木くんよ、そう焦るな。まずこのお嬢さんに事情説明するところから始めたらどうだ。」

「あ、!ご、ごめんなさい!!

さっき、、、あちがう先ほどせんぱ、ちがう、あの、えっとぉ、、、、」

「はぁ、君はもう少ししっかりしたほうがいいな。」

「だ、誰なんですか、、、?!」

「悪いねお嬢さん、私たちは死神派遣所の救済課って所の者でね。はいこれ名刺。

まぁ俗に言う死神だ。死んだ人間を天国の門か地獄の門まで届けるのが仕事だ。」

「ぇ、、、」

「それで、今日死亡予定だった君たち姉妹を迎えに来たんだが、、、感動的なストーリーの結果、君は助かりお姉さんは亡くなったわけだ。」

「あぁ、悲しい悲しい、、、だが私たちも仕事でね。お姉さん、貰っていくよ。君は今日私とした会話を日記にでも書いといてく「待ってください!!!」

「威勢がいいな。どうした」

「お姉ちゃん、本当に死んじゃったんですか!?」

「む、見てわからんかね。」

「だって、だってさっきまで、、、さっきまで私と笑って話してたんですよ!?

遊園地楽しみだねって、そしたら、銃で、男が銃でお姉ちゃんを、、、!!」

「確かに、お姉さんは銃殺されてるね。」

「な、、、は、、、でも、でも、あね、お姉ちゃんは、」

「悪いが、私たちは人を殺せても生き返らせることは出来ないからな。もっとも、まだ君のお姉さんは死んでもないし生きてもいないがね。」

「死んでもないし、、、生きてもない、、、?」

「あぁ、私たちが連れてって、執行課の連中がどうこうするまでは生きてないが死んでないという状態になる。こっちではなんと言ったか、、、あぁ、四十九日だったかな?」

「だ、だったら!お姉ちゃんは!?お姉ちゃんはまだ生きてるってことですか!?」

「いや、ほぼ確定で死んでいるだろう。なかなかこの状態から生きてる判定貰うやつはいないと思うぞ。」

「そ、んな、、、」

「あの、先輩、、、ちょっと冷たすぎませんか?」

「ん?あぁすまん。人間だった頃から感情の起伏が人より大人しくてな、、、不味かったか?」

「、、、私も、、、」

「何かね?」

「じゃあ、私も殺してください!!死ぬ予定だったんですよね!?じゃあ、私が死ぬ、私が死ぬから、お姉ちゃんを!!」

「いや、しかしだな、私たちが社則に違反することに、、、」

「おやぁ、救済課の連中じゃあないですかぁ」

「げっ、赤坂、、、」

「せ、先輩あの人って、、、」

「処罰課のヤツらだ。面倒なことになったぞ、、、」

「その人、処罰対象って本部から連絡が来たんですけど、、、どういった具合で?」

「白瀬文香、30歳。妹を庇って死亡。救済対象とみなされ連絡が来た。

同時刻、妹も死亡する予定だったが上記が庇った為無事。これでいいか。」

「充分です。」

「赤坂先輩、自分はなにすれば。」

「あぁ、今回ちょっと面倒ですから対処の方法を見ててくれれば大丈夫です。赤木くんはえらいですね。」

「ども、、、」

「くくくく、黒宮先輩!?どうするんですか!?」

「お前もあっちの新人ぐらい落ち着いたらどうだ、、、まぁいい。今回はうちの案件だ。

草臥れ損だな処罰課。」

「いやいや、まだ判定出てませんから帰れませんよ、、、これか「いい加減にしてくださいよ!!!」おっと?」

「さっきから、、、さっきからなんなんですか!?死んでるとか、生きてるとか、処罰とか救済とか!!!!!!!お姉ちゃんを、お姉ちゃんを返してよ!!なんで動かないの!?!なんでお姉ちゃんずっと黙ってるの!?」

「し、白瀬さ、、、」

「もう嫌!!!」

「白瀬さん!?」

「ま、まずいことになったな、、、」

「見かけによらず力のある子で、、、」

「黒宮先輩、!?ど、どう、どうしましょう!?」

「自分、追いかけてきます。」

「じゃあ頼みます。俺は追尾課と総合課に連絡を。」

「黒木!お前も探してこい!」

「は、はい!!わかりましたーー!!」

「おいバカ!そっちじゃ、、、もういい、、、」

「あ、もしもし追尾課ですか?そーそー俺です。いやぁ保護対象見失っちゃいましてぇ、、、あ、はい。白瀬文香とその妹で、、、名前は、、、

黑宮さん、妹さんの名前知ってます?」

「あー?確か琥珀だったはずだ。」

「はい、白瀬琥珀だそうです。見つかりそうですか?また見つかったら電話ください、はい、お願いします、、、」

「総合課にも電話かけますね、、、ちょっと待っててください。」

「悪いな。ありがとう」


あれ?この2人って仲悪いんじゃないん?

そう思った人もおるよな?

あぁ、どうも、総合課の青柳ちゅーもんです。また後で出てきますよろしゅうね。

さて、僕と、黑宮くんと赤坂くん、実は研修生時代の友人なんですわ。

まぁあれやね、上はバチバチしとるけど下の方は戦友やからね仲ええってやつ?

ま、表で悟られるのが嫌っちゅーんで仲悪い振りしてるみたいやけど。僕ら寮の部屋も一緒なんやで。まぁそんな話はええんやけど、あ、電話や。


「もしもし青柳?」

『どしたん?』

「いや、1人逃げられたんですよね、追尾課には連絡したんすけど、、、」

『ほーん、わかった、そんで?』

「実はですね、、、回ってきた仕事が処罰対象がビミョーなところでして、、、」

『へぇ』

「できれば、、、総合課に来てもらえたらありがたいな〜、、、みたいな?」

『うーん、僕も暇やないしな、、、』

「ハーゲンダッツ」

『僕、いま別の処罰対象追ってんねんな〜

なんか姿が変わるらしくて〜むずしいねんな〜』

「焼肉?」

『うーん、、、』

「寿司も追加で。」

『まぁ、ええとこのは寿司美味いしなぁ?』

「えー、、、なんですか?フレンチとか?」

『僕、好物鰻やねんけど』

「じゃあ鰻も追加で。」

『しゃーないな。僕ら友達やし?まぁそれぐらいでええで。』

「あざーっす!!」

「お前、金に物を言わせすぎると痛い目に遭うぞ、、、」

「いいんすよ、とりあえずは、ね?」

「はぁ、、、」

『作戦会議や、一回こっち戻ってきてもらってもええ?』

「了解です。」

ツー、ツー、ツー、、、と電話が切れる。

雑に携帯をポケットにしまうと、ニコニコ顔で黑宮に向き直った。


「そんで?追尾課には連絡した言うとったな。」

「あぁ。あとは追尾課から1人借りてきて案内してもらって捕まえるだけだな。」

「いやぁ、まぁ今からその追尾課に人借りに行くのが1番めんどくさいんですけどね、、、」

「まぁ、追尾課って人少ないもんなぁ。」

「人、借りれたっちゃあ借りれたんですけど、、、」

「なんだ、濁さず言え。

「借りれたのが、、、アイリスさんらしです。」

「えっ、、、」

「あぁ、、、」

「はい、、、」

「、、、アイリスって、、、あの?」

「部下が全員ストレスで鬱になって総合課に移動したって噂の?」

「はい。」

「毎回イラついてドア蹴り壊すから追尾課のオフィスのドアを鉄製にしたって噂の?」

「はい。」

「すぐヒステリック起こすから誰1人としてまともに補佐できる人間がいないあの??」

「いい噂一つも聞いたことないで!?」

「人が全員駆り出されてアイリスさんしかいなかったんでしょ!?俺を責めないでくださいよ!」

「し、刺激しないようにしよう、、、」

「まぁ、、、うん。せやね、、、」


追尾課の観葉植物の影、アイリスのデスクを隠れて見る3人の姿があった。

コーヒーの心地よい香りが満ちた少しオシャレなオフィスには、神経質そうな男が1人パソコンと向き合っている。

「アレがアイリス?」

「なんだ、思ったより普通そうじゃないか」

「そうですね、、、」

「おい、誰か来たぞ」


「アイリス、、、」

「何?今忙しいんだけど?」

「あの、、、ごめんなさい。追跡対象を、見失っちゃって、、、」

「はぁ?」

「!!ちゃ、ちゃんと見つけるわ!でも少し、少し時間が欲しいの、お願い!!」

「ッチ、アンタこんなこともできないの!?いい加減にしてよ!!前もやらかしたよねぇ?何回目!?出来ないなら辞めちまいなこの無能が!!」

「ご、ごめんねアイリス、、、」

「てか、さっきからなんなの!?アイリスアイリス、アイリスさんだろ!?アンタと違って私は偉いの、解る?わかったらさっさと仕事に戻りな!!!」

「す、すみませんアイリスさん」

怯えて涙目になりながら早足でアイリスのそばを離れる女性の姿を見ながら、クラクラする頭を抑える。マジか、あの女、、、、、、。

「前言撤回、、、ありゃあだめだ、、、」

「え、アレに僕ら今から仕事頼みに行くん?無理やろ。普通に。」

「、、、でも、追尾課の力無しじゃあ見つけられませんよ、、、?」

「も、もう少し様子を見てみようか、、、?」


「アイリスさん、コーヒーお持ちしました」

「ッチ、遅いんだよ愚図。とっとと持ってきな!」

「も、申し訳ありません、、、」

「思ってないのに口に出さないでくれる!」

同僚の手からコーヒーを奪い取り一気飲みする。

叩きつけるようにマグカップを返して、吹き出すと、キッと相手を睨んで攻撃的に続けた。

「ふざけるんじゃないよ!!なんだいこれ!?泥水!?こんなマズイもんよく作れるな!!才能だよ!!」

「あ、その、すみません!!入れ直します!!」

「要らない!!いいから早く視界から消えな!!

碌なコーヒーも淹れられないやつ自殺して当然だよ!!」

「っ、、、何も知らないくせに、、、」

「あぁ!?そうだよ何も知らないよ!!アンタだって私のことわからないだろ!?黙って引っ込んでな!!」

「そういや、派遣所の職員になる条件って自殺することでしたね。あの人なんで自殺したんです?絶対しないでしょああいうタイプって、、、」

「まぁ、、、人それぞれ事情があるんやろ、、、」

「、、、そろそろ、、、行くか、、、」

「誰が、、、?」

「じゃんけんしかないやろもう。」

「最初はグー!じゃんけんぽいッ、、、」

「嘘だろ、、、」

結果は明白だった、目の前には10本の指、そして私の手は硬く握りしめられている。

赤坂はパー、青柳もパー、、、黒宮の一人負けである。

「骨は拾いますよ」

「墓には月一で行ったるからな、、、」

「くそ、、、」


ゆっくりとアイリスに近づく、気配を気取られないように、、、まぁ結局のところ声はかけなければいけないのだが。

「あのぉ、、、アイリスさん」

「あ”ぁ!?」

「ひぃ!?すみません、、、救済課の黑宮なんですけど、、、仕事、、、手伝っていただける、、、と、お聞きしたんですが、、、」

「あぁ、アンタ救済課のトップか。

悪いね、今立て込んでんだ後にしてくれ。」

「いや、こっちも割と手詰まりの状態でして、、、」

「ッチ、今無理だって言ってんだよ。俺の邪魔しないでよ!!!」

「怖、、、」

「うるさいな!!!!」


瞬間、アイリスが拳銃取り出して黑宮を殴った。

ガタンッ!と音がして勢いよく観葉植物の鉢が土をぶちまけるとアイリスが叫ぶのは同時だった。

「次は撃つよ!!!!」

「黑宮さん!!!」

「バカ坂ーーー!!!!」

「あ”???覗きとはいい趣味だねぇ?!」

バンッと乾いた音が重なる。は、発砲してる!?

「やめろやめろやめろ!!」

「アンタに命令する権利は無いだろ!!!?わかったら黙ってなこのマヌケ!!」

「悪いですけど!!死なないでしょう俺たち!!」

「、、、ッチ、、、仕方ない、アンタ達見てるとイライラするし、案内するからさっさと終わらせて!!」

「、、、ひぃ」

「黑宮くん、強いな、、、」


正直、すぐ捕まると思っていた。

だがそれは、我々の認識が甘かった。


「いない!?」

「いないですねぇ!?」

「おらへん!?」

「アンタ達、ちゃんと探してる!?」

「アンタの案内通りに来てるんですけどねぇ!?」

「マズいな、、、これ以上未処理のままだと悪霊になるぞ、、、」

「は!?アンタ処理してないんですか!?早く探せ!!!!」

「アンタ、正気、、、!?」

「まぁじでぇ?ホンマに言うてるそれ」


我々死神は、元の身体から魂を引き剥がす行為の事を処理と言っている。

臨終するって表現が1番聞いたことあるんじゃないですかね?

これやってへんと変な化け物になんねん。有名どころやと八尺様とか口裂け女とかこの類やで。

だからさっさと捕まえな!この無能ども!!


「く、く黒宮先輩ー!!!!」

「黒木!どうした。」

「さ、さささ、さっき討伐課から連絡が、連絡があって!」

「白瀬文香、捕縛から討伐に切り替わったそうです。元討伐課の青柳先輩がいるとのことで討伐課は来ないそうです。」

「あ、赤、赤木くん、」

「助かりました赤木くん。その連絡が来たってことは、、、」

「手遅れですかね、、、」

「わからんぞ、変化一歩手前でも連絡が来ることがある。とりあえず被害者を探すぞ」

「なんや、また討伐せなかん感じ?」

「ま、俺がやりますよ。」


元討伐課、、、総合課は、別の課で問題起こしたヤツ、別の課で落ちこぼれだったヤツ、、、そして、別の課で酷い目に遭ったヤツが集まりやすい。

青柳、元討伐課のエリート。

真面目でどんな身の上だろうと容赦なく鉄槌を下して悪霊を消してきた。

だが、彼の元妹討伐対象になった時状況が一変する。

「ぁ、、、く、、、たすけ、、、ぇ」

「だ、だめや、僕には無理!!

助けて、殺さないでって、ずっと叫ばれて!!夢にも出てくんねん!!どうせえって言うんや!!僕には無理やこんな仕事!!」


「だって、だって、もう、僕もう、、、あの子の名前、覚えてへんのに、、、」

結局、僕は彼女を殺せず足に大怪我負って今は総合課で雑務やらせてもらってます。


「ッチ、アンタのお涙頂戴はどうでもいいんだよ!!早く探しモン見つけな!!!」

「せやな、、、」

「赤木くん、黒木くん、君たちはさらに北をお願いします。」

「は、はい!!」

「了解です。」

「あの、黒木さん、そっち南っす。」

「もういっそ殺してくれ、、、」


「、、、はぁ、はぁ、はぁ、、、ここ、どこ?」

姉を背負って駆け出したのが1時間ほど前のこと、琥珀は泣くに泣けず、笑うに笑えず変な顔しながら市中を駆けずり回っていた。

人は恐ろしいほど少ない、というよりいない。


「み、みんなどこ行っちゃったの?」

普段ら人で賑わう繁華街、それが今や寂れたシャッター街と化している。

「ぅう、、、お姉ちゃん、、、起きてよ、、、!」


“白瀬文香、30歳。妹を庇って死亡。救済対象とみなされ連絡が来た。”


「、、、そんなわけ。」

私の姉は、まだ生きている。きっとそうだ!

銃を持った男に殺されるなんて、あるはずがない!

「きっと、、、なんかのドッキリだよね、、、」

「、、、はく、、、ゃん」

「え?」

「こはく、ちゃん?」

「お、姉ちゃん!?」

「こんな、とこ、ろで、なにして、るの?」

「お姉ちゃん!!やっぱり生きてた!!

あのね!私がお姉ちゃんを変な人たちから守ったのよ!」

「こはくちゃ、んごめん、ね」

「え?」

「遊園地、連れて行ってえ、てあげられななう、て」

「お姉、ちゃん?」

「こおはくちちちゃやゃ?」

「きゃぁっ!?」


目の前にいたのは、私が知っている姉ではなく、姉の形をした何かだった。

目の焦点は合っておらず、口は半開きで笑みを浮かべている

「ひぃっ、、、」

誰!?私の知ってるお姉ちゃんじゃない!!

「ここはうう、ちゃや」

「嫌!離して!!離して!!」

「ごごめ、んねね」

「嫌!!近づかないで!!」

「こあく、ちゃ、ん」

「アンタなんてお姉ちゃんじゃない!!」

「こは、う」

「嫌!!」


私は、無我夢中で走った、走って、走って走って、、、知らない、場所まで来てしまった。

今になって恐ろしさが込み上げてきた、

あぁ、私は、私を守ってくれた、姉に、なんて、なんて事を、

「お、お姉ちゃん、探さなきゃ」

「琥珀」

「!お姉ちゃん?!」

「帰りましょう琥珀、お母さんとお父さんが待ってるわ」

「え、、、」

「さ、いきましょう」

違う、こいつは、お姉ちゃんじゃない!

「、、、だれ、アンタ。」

「アンタって何よ?お姉ちゃんよお姉ちゃん。来なさい、帰るわよ!」

「違う!アンタは、お姉ちゃんじゃない!」

「も〜、琥珀?疲れてるのね、、、」

「違う違う違う違う!!あんた誰!?なんでお姉ちゃんの声で私を呼ぶの!?誰なの!?」

「だから!お姉ちゃんだって言ってるでしょ!!」

「違う!嘘よ!アンタは私のお姉ちゃんじゃない!!」

「うるっせぇなぁ、、、」

「!!」

「最後ぐらい楽しく逝かせてやろうと思ったのによ」

「だ、れよ」

「アタシ?アタシはただのバケモンだよ、嬢さん」

「お姉ちゃんになって、なにが目的なの!?」

「目的?んなもんねぇよ、あー、、、強いて言うな楽しいから?」

「アンタ、バケモンよ、、、」

「そうだって言ってんじゃん」

お姉ちゃんの姿をした、化け物は、一歩、二歩、三歩、だんだん近づいてくる。

「いや、こないで、離れて!!」

「そういや本物の姉貴にもおんなじこと言ってたなぁ?何がしてーんだ?」

「、、、!お姉ちゃん、、、」

あぁ、謝らないと、ごめんねって、酷いこと言ってごめんなさいって、謝らないと、、、

「お姉ちゃん、、、お姉ちゃん!!」


「邪魔だよガキ!退いてな!!」


目の前が強烈な光に包まれて爆発音が響く、目を開けた時にそこにいたのは4人の人間、、、いや、死神だった。

「ふー、ギリギリセーフやな!」

「、、、セーフか?」

「これで私の仕事終わり!もう帰るから!」

「アイリスさん忙しい時にありがとうございました」

「本当だよ!2度目はないからねぇ!」

そう叫んで、中指立てながら帰っていく。

ふっとアイリスの姿が消えて、暗雲立ち込める空の下には死神3人と、白瀬姉妹が対峙していた。


「アンタ、達は、、、」

「やぁさっきぶりだな、白瀬くん。」

「アンタのせいでこっちは残業なんですからねぇ!?責任とってもらいますよ!」

「いや、この子これから記憶処理受けて現世戻るから。責任取るとかあらへんから。」

「まぁいい、あれは君のお姉様で間違いないな?」

「ち、違うんです!あれは、化け物で、私、私お姉ちゃん、置いてきちゃった、だから、謝らないといけなくて!」

「は?」

「おん?コイツ悪霊ちゃうな、、、

あ!!僕が追ってたやつや!!総合課に回されてきたやつ!処罰対象の!!」

「はぁ!?」

「面倒なことになったぞ、、、」


「黑宮先輩!赤坂先輩!うしろです!!」

泣き叫ぶ黒木と焦った赤木の声が聞こえたのと黑宮の背中に衝撃が走ったのはほぼ同時だった。

「がッ、、、」

「黑宮さん!!ッチ、黒木くん、赤木くん!

そこのガキ連れて逃げなさい!!」

「!?黑宮せんぱぁいい!!」

「う、るさい!早くいけ!ガキ連れて逃げて上に連絡届けてこい黒木!」

「はっ、はい!!」

「白瀬さん!行きましょう!!」

「黑宮さん、大丈夫ですか?」

「あぁ。」

「ふんっ、今までアタシのこと放っといた罰だよ」

「青柳、援護に回れ、赤坂、隙を作るからトドメをさせわかったな。」

「なんですって?好き?!」

「ふざけとる場合ちゃうわ!」

「行くぞ!」

「イエッサー!」

「了解、舐められたら困りますわ!」


黒木と赤木が琥珀を連れて駆け出してから十数分が経過していた。雲はどんどん分厚くなっていく。

「はぁ、はぁ、はぁ、」

「邪魔にならないところまではこれましたね。白瀬さん、大丈夫ですか。」

「は、はい、なんとか、、、私より、あの3人は大丈夫なんですか!?」

「大丈夫ですよ。エリートなんで。」

「ねぇ白瀬さん、お姉さんはきっと大丈夫だと思うよ。悪霊には強い憎悪がないとならないから」

「、、、?悪霊、憎悪?」

「悪霊ってのは、俺らの働いてる世界と白瀬さんの住んでる世界の間にある空間、、、ま、ここっすね。」

どこか遠くを見据えながら赤木が説明をするように語り出す。どこか機械じみた赤木からもニコニコしながら琥珀を落ち着かせるように喋る黒木からも、優しさが感じられる。

「この空間で彷徨ってる内に憎しみの感情が強くなって不安定になった例のことです。」

「こうなっちゃうと、殺すしかなくなっちゃう。未来永劫この空間で彷徨い続けることになっちゃうんだよ。」

「理性が無くなって人を襲うようになるんです。この空間だけなら良いんですが、、、まぁ良くはないんですけど。人間界にも出るようになっちゃうんですよ。知りませんか?口裂け女とか、、、」

「!知ってます!ワタシ綺麗ー?ってやつですよね?」

「そう。アレも恨みで人間を襲ってるからね。」

「つまり、凶暴になって人を襲うようになっちゃうんですか?」

「まぁ大体そんな感じかな。そうならない人も居るんだけど、、、いつ人を襲わないとも限らないしね」

「基本的には絶対討伐ですね。」

「お姉ちゃん、、、」

「待って待って!君のお姉さんはそうじゃないかもしれないって!」

「、、、もう、わかってるんです。姉は死んでしまって、もう、私と一緒に家には帰れないんだって。」

「白瀬さん、、、」

「でも、私、お姉ちゃんを置いてくる前に、お姉ちゃんが動いて、『琥珀、ごめんね』って、、、もうきっと、、、お姉ちゃんは、私のせいで、、、天国にも行けないなんて、、、」

「あの、えっと、、、」

「白瀬さん!きっと大丈夫だよ!そうならない人も居るんだから!新しい方法を考えようよ!!」

「黒木さん。あんまり無責任なこと、、、」

「本当、ですか?」

「だって、君に謝ってたんだろう?じゃあきっとまだお姉さんの、、、文香さんの意識は残っているはずだよ!」

「そう、、、そうですね、ありがとうございます」

少し間があって、黒木が口を開く、なんだか少し空が晴れてきた気がする。

「あ、、、もし、文香さんが悪霊になってたら、黑宮先輩からは早めに逃げたほうがいいかも」

「規則違反になるから、、、ですか?」

「それもそうなんだけど、他にも理由があって、、、」

「え、もしかしてあの噂ってガチなんですか?」

「噂?」

「はい。黒宮先輩、両親が悪霊になって討伐課に殺されてるって話っす。」

「うん、あれ本当みたい。」

「青柳先輩も、黒宮先輩も身内が悪霊なった挙句、目の前で殺されてるわけですか、、、」

「、、、そんな」

「あぁ、そんな辛そうな顔しないで!でもね、黒宮先輩悪霊に対する恨みが尋常じゃないから、、、」


あの人たちも、きっとこの2人も、辛い目に遭ってきたんだろう。

私は、この人たちの立場になった時に、どんな対応をするんだろか。

考えたくも、なかった。


「私、お姉ちゃんを探してきます!」

「僕も、手伝うよ!黑宮先輩には怒られるかもしれないけど、、、まぁどうせ叱られたところでこの仕事は辞められないしね。」

「ま、そっすね。俺もできる限りのことはサポートします。」

「2人とも、、、!ありがとうございます!」

「あのさ、赤木くん」

「なんです?」

「しょ、初歩的なところ聞いて申し訳ないんだけど、悪霊と処罰対象の違いって、、、何?」

「それ、最初の最初に研修でやりますよね?」

「だ、だよね、、、ごめん、すっかり忘れてて、、、」

「わ、私も気になります!」

「はぁ、、、悪霊は、さっき言ったみたいなやつです。処罰対象は、悪霊にならないための処理がされてるのに暴れ回ってるやつです。」

「「なるほど!」」

「処罰対象は、刑務所的なところに数年入れば出てこれますよ。」

「じゃあさっき、白瀬さんのお姉ちゃんのフリをしてたのは、、、」

「あれが処罰対象です。」

「死神界隈にもいろいろあるんですね。」

「というか、お姉さん居なくないですか」

20分ほど探したが、姉は見つからなかった。

どこか、もっと遠くの場所へ行ってしまったのだろうか?

「いない、ですね。」

「いないね、、、」

「そろそろ赤坂先輩達戻ってきちゃいますね、それまでに探さないと、、、」

「あっ、さっきの嬢さんみーっけた!」

「!?」

「お前は!」

「さ、さっきの悪霊!?」

「ハロ〜、死神ボーイズ?この嬢ちゃんもらってくね〜」

「良いわけないでしょ、、、」

「っ、白瀬さんから離れてください。」

女性の、華奢な腕からは想像もできないほど強い力で引き寄せられる。

「捕まえた!」

「こはう、、、ちゃ!!」

どこからか聞こえてきた姉の声と共に私の体は赤木さんの腕の中へと収まる。

雲の合間から光が差していた。

「うぉ!?」

「!?お姉ちゃん!!」

「ちょ、!?え!?ど、どど?!どうすれば!?」

「離れ、え!!こはうちゃんから!!」

「おや、これが本物のお姉ちゃんかい?泣ける姉妹愛だねぇ?」

「お姉ちゃん!ごめんなさい、御免なさいわたし!」

「こは、うちゃん!!」

「白瀬さん!ここは逃げますよ!」

「走って!!!」


「よく守り切ったな、黒木くん、赤木くん」

「逃げろって言いましたよねぇ!?人の話聞いてました!?」

「逃げ足早すぎるやろ、、、びっくりしたわ」

「あれ、見つかっちゃった〜」

「心配しないでください、次は捕まえます。」

「やってみろ〜!」

お姉ちゃんの姿をした化け物は笑顔で青柳さんの足を払う。

痛ッ、、、と苦しそうな声を上げた青柳に、赤坂が向かっていくが青柳に止められる。

「青柳!!!」

「僕のことはええからそいつ捕まえろ!!!」

「赤坂!今だ!!」

近づいてきた化け物を背負い投げして地面に叩きつける。

ドンッという地面にぶつかる鈍い音の直後、銃声にしては少し軽い音が響く。


「痛ったいな!なにす、んだ、、、よ、、、」

「はい、うるさいですよ。」

「よし、このままムショに連れてけ」

「今連絡したからもうすぐ来ると思うで」

「そうですね。」

赤坂が同意した直後、フッと現れて、文香?を連れて黒服の男女が消えていく。

あまりに一瞬の出来事に琥珀はあまり理解できなかったが、あぁ、終わったんだなと体の力がゆるゆると抜けた。

空からは綺麗な光がさしている。

「これで終わりですね!お疲れ様でした!」

「いや、まだだ。彼女がのこってるだろう。」


黒宮が剣を向けた先には姉妹で抱き合う白瀬文香の姿があった。

「あぁ、でも彼女、理性ありま「だからなんだ?」

「え?」

「それは討伐しない理由にはならんだろう。」

「や、もうええんちゃう?普通に救済課で通せばええやん。」

「なぜだ?」

「黑宮さ「なぜ、彼女だけを救済課で処理しなくてはならん」

「黑宮先輩、僕からも、お願いします!!」

「黒木さんに同じく、俺からもお願いします、先輩。」

「お願いします!お姉ちゃんを天国に、逝かせてあげたいんです!!」

「こはうちゃん、、、」

「なぜ?」

「なぜって、、、」

「理性もあるし、悪霊じゃないじゃないで「じゃあなぜ私の両親は殺されたんだ?」

「!!」

「それは私の父と母も同じだったはずだろう。

なぜ?理由なんてあるか。

あの人たちも理性はあった、身を挺して俺を庇ったた、謝った。」

「ごめんね、最後まで一緒にいてあげられなくてと、泣いて俺に、謝ってきたのに、何故?!なぜお前に許されることが、俺の両親には許されなかったんだ!!」

冷静だった黑宮の口調が崩れて、感情的になる。

堰を切ったように、言葉が、涙が溢れて、


走って逃げている、なにから?

「母さん!!父さん!!」

目の前には父と母。

銃や剣や鎌や何か武器を向けて、こちらに迫ってくる。

不意に母に抱きしめられて、謝られる

「ごめん、最後まで一緒に居てやれなくて、」

「すまなかった、××、叶うなら」

叶うなら、また私たちの子供になってくれ。

そう言って、目の前で、両親は、、、



「あの人たちが何をしたんだ!?社会から蔑まれ、生きる希望を無くして、こっちの世界に逃げようとしたのに、、、その希望すら奪ったんだぞ!?俺は、俺だって、あの人たちと死にたかった!!!」

「銃、渡せ、赤坂、」

「く、黑宮さん、落ち着いてくださ「黙って渡せ!!」

怒りで我を忘れたという風のあの人は、強引に俺から銃を奪い取ると、その銃口を白瀬文香に向けた。

「っ!!」

「やめて、辞めてください、、、!

お姉ちゃん、、、!お姉ちゃん!!」

「こはう、ちゃん、、、ありあとね」

「嫌!!お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!」

「すまないな、白瀬文香。」

「ありがとう、死神さん。琥珀を、よろしくね。」

「あぁ、、、」



「お姉ちゃん!!やめて!!」

「父さん!!母さん!!やめてくれ!!」



「っ、、、」

ガシャン、と鈍い音を立てて古びた銃が黒宮の手から落ちる。

「俺は、私は、確かに、父さんと母さんを殺した討伐課の奴が憎い

でも、、、でも、貴方は何も悪くない。何もしてない。」

「、、、死神さん。」

「貴方を殺せば、私は、父さんと母さんを殺したやつと同じになってしまう。私のエゴだ、すまなかった。」

「黑宮先輩、」

「死神さん、、、」

「それに、貴方が悪霊になったのは私の責任でもあるしな」

「ありがとう、ございます」


「変なお人好しですね、あの人は。」

「あれが、救済課の黑宮ですよ。」



壮絶な一つの事件はこうして幕を下ろした。

ここから、白瀬姉妹が新しく部署を作ることになるのだが、それは白瀬琥珀が死んだ後の話。

旅は長い、だけど、、、頑張ってね、琥珀ちゃん!



「これが新しい部署か」

「例外入社の白瀬文香さん筆頭らしいで。まったく

、時間が経つのも早いなぁ」

「恵まれない境遇で引き裂かれてしまった兄弟、姉妹、家族、恋人、を再び巡り合わせる、、、」

「確か名前は、、、」


「「転生課」」

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