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第三話

アリシアは気付くと深い霧の漂う森の中に居た。大木に寄りかかるようにして腰を下ろしている。

立ち上がり辺りを見渡すと、地面が抉れ、木々が薙ぎ倒されたような跡が見受けられる。

『あぁ、此処は見覚えがある』

紛れもなく此処は自らが命を落とした場所だ、アリシアは自分が黒霧の森に、ひいてはウィナードに戻ってきた事を実感する。

不意に胸元に手をやる。先ほど不思議な縁で出会った青年、一志から譲り受けた鎧の感触を確かめる。

「…急ごう。」

誰にともなく呟くと、夜の闇と霧で視界もままならない森の中へ、アリシアは歩みを進めた。


「ハッ!」

アリシアが振るったロングソードがゾンビの頭部を両断する。

ゾンビを含むアンデッドに多い特徴として、頭部の破壊以外に止めをさせないというものがある。

頭部以外を攻撃してもダメージにはならず、知性も痛覚もないため、攻撃に対して怯んだり、躊躇ったりもしない。

そういう特性を持った相手だから、基本的には複数を同時に相手にしてはいけないのだ。

頭ばかりを狙い攻撃し続けるのは、2,3体が限界であり、それ以上は攻撃が追いつかず囲まれてしまう可能性が出てくる。

そのように教わっていた為、可能な限り少数を相手取れる位置取りを意識して立ち回っていたアリシアだったが、違和感を感じて、警戒しつつも周囲を見渡す。

たった今頭を切り飛ばしたゾンビ以外にもまだ複数体いるはずだが、こちらに近づいてこないように見える。

こちらを伺うような視線は感じるが、どういうわけか近づいてこない。

かと言って逃げるでもなく、一定の距離まで近づくと襲い掛かってくる。

「これが祝福の力、なのか。」

一志から譲り受けたこの鎧は祝福されたものであり、その効果は不浄の者を遠ざけるという。

たった一人でゾンビが巣食うこの森を走破しなければならないアリシアにとって、

このゾンビが大挙して押し寄せてこない、という効果は計り知れない恩恵であった。

事実、死して一志に出会う前のアリシアは、倒しても倒しても再現なく集まってくるゾンビの

物量の前に消耗し切ってしまっていた。

「一志殿、心より感謝する。」

アリシアは空を見上げ、遥か遠くにいるであろう恩人に感謝した。


ゾンビの群れを捌きつつ孤独な行軍を続けるアリシアだったが、地面を踏みしめる自分の足に感じる

違和感が自然と彼女のを足を止めさせる。

ぴちゃぴちゃ、と。

強く踏み込むとうっすらと水が滲みだしてくる。

地面が水を含んでいるのだ、気付くとそこかしこに在った、陰鬱の空気を醸し出す木々が疎らになってきている。

固い地面とぬかるんだそれとでは、踏み込みの際に足に伝わる反力が大きく異なる。

アリシアは一歩ずつ感触を確かめるように歩を進める。

やがてその眼前に大きな沼地が現れた。明確に沼と見て取れる範囲以外でも、水を多く含んだ地盤になっている。

見晴らしがいい為、奇襲を受ける可能性は減る一方で、ぬかるみに足を取られて戦い辛い場所でもある。

周囲への警戒をしながら沼地を進むアリシアは、薄っすらと漂う霧の向こうに人影を認め、ロングソードを構える。

ゆっくりと覚束ない足取りで近づいてきた影が視認出来るようになった時、唐突にその影がアリシアに向かって真直ぐ駆け出してきた。

「ヴぁああぁああぁっぁあぁっぁぁぁあぁあぁっ!!」

到底まともとは思えない奇声を発しながら近づいてくる人影の頭部に向けて、努めて冷静に刃を振るう。

狙った通りに振るわれた一振りは、しかし頭部を両断するには至らなかった。

正確には斬りきれなかった。硬い何かに阻まれ角度を変えた切っ先が人影の肩口にめり込んで止まる。

ここにきてアリシアは相手の姿をハッキリと視認出来た。

外見上は腐れた死体、死して尚、血肉を求めて生者に襲い掛かるゾンビそのものである。

ただ、これまでのゾンビと明確に異なる点が一つ、左肩が大きく盛り上がり、腕から手の先へと醜く肥大化していた。

「これは、グール<屍霊鬼>…!こんな時にっ?!」

グールというのはゾンビを含んだアンデッドの一種で、ゾンビの上位種とも言われている。

他生物への執着はそのままに、身体の一部分が異常なまでに肥大、硬質化している特徴がある。

また、ゾンビに比べると走る、跳ぶといった動きもしてくるため、脅威度は段違いだ。

騎士団でもグールと戦闘する時は複数人で対処するのが基本である。

アリシアは咄嗟に前蹴りを繰り出し、反動でロングソードを引き抜くと一旦距離を取る。

会心とまではいかなくとも、決して手応えがなかった訳ではない、そんな一撃で仕留めきれなかった。

アンデッドであるため、先ほどの一撃などダメージにもなっていないだろう。

アリシアは焦る心を無理矢理落ち着かせ、ロングソードを構え直す。

ゾンビと比較して想像以上の俊敏さとタフネス、この状況でアリシアが慎重になるのは、ある意味必然と言えるだろう。

体勢を持ち直したグールが再び咆哮を上げてアリシアに肉薄する。

接近しながら真横に振り抜かれた左腕を咄嗟に盾で防ぐ。衝撃の瞬間にしっかりと地面を踏みしめたアリシアだったが、その威力に構えた盾を弾かれ大きく仰け反ってしまった。

ノックバック。その瞬間、アリシアは限りなく無防備になってしまった。

「くっ!!!!」

次いで振り下ろされた右腕による攻撃を、かろうじて反応出来た右腕を剣ごとぶつけるようにして防ぐ。

元が人間とは言え、アンデッドと化したグールやゾンビはその膂力も人を遥かに凌駕している。

肘から手首にかけて大きな裂傷を受けてしまったアリシアは必死に飛び退いて距離を空ける。

右腕の激痛に耐えながら、それでも視線はグールから外せない。

剣を握る手を動かし、感触を確かめる。握りが弱い、力を入れると頭が痺れるような痛みが走る。

アリシアは盾を放り投げると、痛みで上手く動かせない右手に添えるように両手で剣を構えた。

「絶対諦めない…。絶対諦めない…。」

先ほどの一合で単純な力のぶつかり合いでは、確実に押し負ける事は判っている。

また、一撃目からの動きも想像していたより速く、手傷を負っている状態でもう一度反応出来る自信はない。

一方で、万全でない状態とは言え両手を使って剣を振れば、もしかしたら攻撃が通じるかもしれない。

上がらない右腕、グールの突進と攻撃範囲、ぬかるむ足元、様々な考えが頭を過る。


三度の咆哮。真っすぐにアリシア目掛けて突進してくるグール。

アリシアは持ち手を変えて、半身に構える。

アリシアを射程距離に捉えたグールは振り上げた左腕を真っすぐアリシアに向けて振り下ろした。

ギリギリまで引き付けて真横に半身をずらして攻撃を躱す。集中してタイミングを計ったが、グールの腕がヘルムを掠める。

続く衝撃。地面に叩きつけられた腕から発生した衝撃でバランスを崩しそうになる。

「んんっ!!」

歯を食いしばり、踏ん張って耐える。アリシアにはグールの2撃目に対処出来る余裕などなかった。

この一合で決めきれなければ終わりだ。賭けに出たアリシアはグールの振り下ろしに対して、その内側に向けて回避していた。

外に避ければ、比較的安全に躱せるし、そのまま2撃目を食らうリスクも下げられる。

だが、それではその先がない。何度も打ち合える程の余裕はアリシアにはなかった。

だから内側に入った、衝撃で体勢を崩しても終わり、続く攻撃に反応出来なくても終わり。

足に力が入る事を察した瞬間にアリシアは身体を捻り、グールの頭部に向けて身体毎ぶつける勢いで剣を振り抜いた。

傷付いた右腕はもう上げられないし、離れてしまったら相手のリーチの方が長いのだ。

苦肉の策で咄嗟に考えた攻撃だったが、アリシアのロングソードはグールの鼻より上を斬り飛ばす事に成功する。

後先のことなど考えずに剣を振り抜いたため、派手に転倒したアリシアだったが泥塗れになりながらも、

剣を支えにゆっくりと立ち上がる。

「はぁっ、はぁっ…」

肩で荒く呼吸しながら地面に倒れ、ビクビク動いているグールを見やる。

「なんとか倒す事が出来た…。」

惚けてばかりもいられない、放り投げた盾を探そうと周囲を見渡したアリシアは、霧の中に何かを見た気がした。

その瞬間霧を割いて突如飛来した矢がアリシアの首を貫いた。

「かっ、はがっ!…あぁっ」

自分に何が起こったのか、理解出来ないままアリシアはぬかるむ地面に倒れ伏した。

やがてアリシアの身体は光に包まれるとその場から消え、血に濡れた矢が一本転がり落ちた。



その日、宮田一志は日がな一日スマホと睨めっこしていた。

本来放置ゲーであるMIST WONDERERであるが、アリシアと出会ったあの日以降、少しでも疑問を解決しようと徹底的に調べていた。放置せずに。

一志のプレイヤーキャラクタであるイッシーがトレハンに出掛けた際のログを全て確認するところから始まり、あの日追加されたと思われる項目についても全てチェックしていた。

まだまだ検証の余地はあるが、現時点で判明している大まかな点は以下の通りである。


・プレイヤーキャラクタに一志自身を登録することは出来ない。

・イッシーのパーティー編成画面はグレーアウトされており、現状ソロプレイのみ。

・ウィルナードについて世界マップから様々な情報を確認することが出来る。


まずは一つ目の一志自身のプレイヤーキャラクタ化だが、新規キャラクター登録画面で自撮りしてみたが、<プレイヤーに登録出来ません>というエラーメッセージが表示され、登録画面が終了する動作になってしまった。

その直後、飲んでいたペットボトルのお茶を撮ってみたら、ペットボトル戦士として登録出来たため、原因は不明だが、そういう仕様になっていると判断するしかない。

二つ目のイッシーについてだが、MIST WANDERERはそもそもソロで冒険に出る設定のゲームであるため、これまではパーティー編成画面そのものがなかった筈であった。

これは恐らく、アリシアをプレイヤーとして登録した際に更新された内容であると考えられる。

根拠としてはアリシアのパーティー編成画面はタップ出来る状態であるからだ。(パーティーメンバーが居ない旨のメッセージが表示されるが)

三つ目については、一志自身、アリシアの事もあってか最も時間を割いて確認を行っていた。

まず、マップとして見た時、確認出来るエリアが相当に大きかった。所謂地図アプリを操作する時のようにピンチ操作で縮小を繰り返したところ、オーストラリアに近い位の規模があったのだ。

端部が地続きで見切れていたため、巨大な大陸の半島的な位置づけなのではないかと一志は考えている。

アリシアから聞いていた聖レイヤード教国もマップ上に表示されていたため、拡大してみたが、山や川、平原やら沼地などの地形的な情報以外は何も表示されなかった。

ただ一点、アリシアが向かったと思われる黒霧の森周辺は、ある程度詳細に確認することが出来た。

理由としてはまず間違いなく、アリシア本人がマップを踏破した為であろう。

アリシアは聖レイヤード教国出身と言っていた。その上で黒霧の森しか詳細にマッピングされていないことから、アリシアの知識や記憶などとは無関係であることも予想された。

また、マップを見ていて気になった点として、マップ上のいくつかで黒いモヤモヤが表示されているのだ。

黒いモヤモヤにフォーカスしてマップを拡大していくと、画面全体が真っ黒になることから、

明確な範囲を持って何かが存在、もしくは発生していると一志は考えた。それが何かは全く分らないが。

一志がマップを見ながらアレコレ考えていると、イッシーがトレハンから帰還した通知がきた。

今回イッシーがトレハンしていたのは黒霧の森である。アリシアが黒霧の森へ向けて旅立っていった日から、イッシーも冒険の行先に選択する事が出来るようになっていた。

「どれどれ、何か良い物拾ってないかな?」

一志はイッシーの持ち帰ったドロップ品のリストを確認する。残念ながら今回はせいぜいがマジック品だった。

しかしそれでも盾だったため、アリシアに渡したアンコモンよりは良品だろう。

ドロップリストを確認したあと、イッシーの冒険のログに目を通す。普段なら全く気にも留めないが、今回は黒霧の森に行っているのだ。何か新しい情報が得られるかもしれないと考えると、到底スルーは出来なかった。


ひとしきりアプリを弄り回した後、昼食をどうしようかと考えていたら唐突に部屋の中が光で溢れた。

一瞬の光の氾濫の後、チカチカする目をゆっくり開いた一志の目の前には、見たことのある美女が、これまた見たことある恰好で倒れていた。

「お、おぉ…?。」

ここにまた戻ってきたという事は、それはつまりアリシアが再び命を落としたという事である。

考えていたよりも断然早い再会となってしまった事に驚きつつも、倒れているアリシアに近づき声を掛ける。

アリシアは完全に意識を失っているようで、いくら呼びかけても目を覚ます気配はなさそうだ。

見る限り呼吸はしているし、顔色も悪くないため、取り合えずアリシアを抱きかかえソファに横たえる。

「もしかして、ウィルナード世界のモンスターって物凄く強い?準騎士って言ったって、訓練した戦士だろ。ログを見ないと何とも言えないけど、結構無理ゲーなんじゃ・・・。」

MistWanderer内のモンスターは個々の強さは大した事はない、そもそもハクスラなんだから。

そこに紐付いたという事で、勝手に弱いと決めつけていた一志であったが、考えを改める必要が出てきた事に気付いたのだった。


「ここは…。」

目を覚ましたアリシアは少しぼんやりする頭のまま、起き上がり周囲を見渡す。

柔らかく座り心地の良いソファに、小奇麗に片付いた小さな部屋。

大きなガラス?のついた窓から日差しが差し込んでいる。

間違いなくここはあの不思議な青年、一志の住む家だ。部屋の中の調度品も覚えがある。

「私はまた死んでしまったのか…。」

前回黒霧の森に転移する前に一志に言われた言葉、死んでも蘇る、という奇跡のような事が実際に自分の身に起こっている。

或いはもしかしたら自分はずっと夢を見ているのかもしれない、まだ少しぼんやりとする頭を抱えながら、アリシアはこの部屋の主を探す。

一志の住む部屋は標準的な1DKの間取りであるため、玄関からキッチン、ダイニングまで一目で見とれる。

目につく範囲に一志が居ない事を確認したアリシアだったが、むやみに移動しない方が良いのではないかと考え、ソファに座りなおした。

改めて部屋の中を見渡してみると、ここが自分の居たウィルナードとは大きく異なる世界であることを実感させられる。

前回この部屋に来た時は落ち着いて見ることが出来なかった事もあり、急にソワソワし始めたアリシアは、先ほどから強烈に興味を惹かれている"ある物"をじっくりと観察する。

定期的にカチカチと音を鳴らしながら細い棒が回転している…。それぞれ長さの違う3本の棒が、円状に並べられた記号を指しているように見える。

「これは一体何なのだろうか。そもそもどうやって動いているのだ。」

不思議に思いながら、ゆっくりと手を伸ばしてその物体を手に取る。指先で軽く叩いてみる、耳を近づけて気になっていた音に耳を澄ます。

「魔力は感じられない、か。」

アリシアは幼い頃より騎士団に入る事が決められており、その為の訓練も積み重ねてきた。

その中には魔法の習得、修練を行うものも含まれている。残念ながらアリシアには大した才能がなかったため、剣技を磨く事に重きを置いて研鑽を積んできた。

とは言え、ウィルナードにおいて魔法とは極めて一般的な存在であり、誰であれ少なからず魔力は持ち合わせている。

よってもしこの不思議な物体が魔力により動作しているのであれば、その魔力の流れを感じる事が出来る筈なのである。

アリシアが300均に売られていた室内用の小型時計と睨めっこしていると、玄関の鍵を開けて一志が帰ってきた。

「お、アリシアさん。目が覚めたんだね。」

両手に提げたエコバッグをキッチンのテーブルに置くと、アリシアに向き合って一志が声を掛ける。

アリシアは手に持っていた時計をダイニングのテーブルに置くと、俯きがちに一志を見る。

「申し訳ありません、一志殿…。私はまた、」

「はい、ストップ。アリシアさん、お腹減ってない?今からお昼作るからさ、良かったらアリシアさんもどうかな?」

アリシアの表情と、なんとなく察した状況から無理やり話題を変える一志。

MIST WANDERERから得られた情報と、アリシアの話の擦り合わせや再度検証したい事などもあったが、

まずは腹ごしらえと気分転換だろう。

そんな一志の提案に心なしかホッとした表情を浮かべたアリシアは、昼食を頂くことにした。


「さて、今日のお昼はナポリタンを作ります。って言っても分からないかなー。」

スーパーで買ってきた食材をテーブルに並べながら一志は呟く。

「なぽりたん、とは一体どういう食べ物なのですか。」

家主が手ずから料理を振舞ってくれるというのに、自分はただ座って待っているだけという状況に我慢出来ず、アリシアはキッチンのテーブルの傍にやってきた。

とはいえ、貴族令嬢でもあるアリシアは当然の如く料理など出来ないため、手伝う事は出来ないのだが。

「このパスタっていう小麦粉を練ったものを、トマト味のソースに絡めて炒めたもの、かな?」

いや、加熱はするけど炒めるっていう表現は合ってるのか?などとブツブツ喋る一志を尻目に初めて見る食材に興味深々のアリシア。

「一志殿、…この緑の変な形のコレは何でしょう。あと、この変わった匂いの白い物は…?」

ピーマンとニンニクを手に取り、興味深そうに眺めるアリシアに一志が答える。

「緑の野菜がピーマン、そのまま食べると苦みが強いけど、調理次第でとても美味しくなるんだ。」

「その白いのはニンニクと言って、多少臭みが強いけど、慣れると不快さはなくなると思うよ。」

アリシアはニンニクをそっと顔の近くに寄せてみたが、想像以上の匂いにたまらず遠ざける。

そんなアリシアの様子を見つつ、並べた食材と手順を頭に浮かべる。

一志の育った宮田家ではナポリタンに入れる具材はピーマン、玉葱とソーセージに香りつけで

スライスしたニンニクを入れていた。ベーコンやハムを入れる方が一般的なのだろうが、

昔から食べ慣れているため、一志としてはソーセージ一択なのであった。

まずはピーマンのヘタと種を取り除き5mm程度の幅に切る。玉葱は火が通り易いよう縦に薄くスライスする。

軽くサラダ油を敷いたフライパンにそれらを放り込み、中火で炒め始める。

いつの間にか隣に来て覗き込むように見ていたアリシアが驚きの声をあげる。

「今一体どうやって火を付けたのだ、一志殿は火魔法を使えるのか?!」

あまりのアリシアの驚きように、つられて驚いた一志だったが、コンロの火を消してからアリシアに向き直る。

「あー、これは魔法じゃないんだ。ガスコンロって言って、このボタンを押すと着火する仕組みになっているんだよ。」

そう言うと一志はアリシアを促してコンロの操作を実際にやらせてみる。

「おおお!?」

一度盛大に驚いたアリシアは、その後無言で何度もコンロをカチカチと操作しては首を傾げている。

「はいはい。珍しいのは分かったけど、料理の邪魔だからまた後でね。」

一志はそう言うとアリシアをキッチンから追い出す。客人は黙って座ってるように言われ、アリシアはダイニングに引き下がっていった。

残りの具材にも火を通したところで、用意しておいたトマトソースを混ぜ入れる。

トマトソースの周りがチリチリ沸騰し始めたら茹で汁と一緒にパスタを放り込み、軽く和える。

出来上がったナポリタンを取り分けると、アリシアの待つダイニングへと運ぶ。

「はい、これがナポリタン。熱いから気を付けてね。」

テーブルの上に並べられた初めて見るパスタ料理にアリシアの目は釘付けだった。

どうやら聖レイヤードでもフォークに類する食器はあるらしく、特に使い方の説明は不要だった。

「んー!とても美味しいです、食べた事のない味ですね。」

一口食べたアリシアは満面の笑みを浮かべると、興奮した様子でナポリタンを食べ進めた。

「先ほどは刺激の強かったこのニンニク?の香りも、良いアクセントになっていて美味しいです。」

「お気に召したみたいで何よりだよ。ちゃんと水も飲んでな。」

自分の料理を誰かに食べてもらったのなんて何時ぶりだろうか、などと考えると若干空しくなってきたので、一志は黙ってナポリタンを平らげた。


「さて、アリシアさんに色々と聞きたい事があるんだ。早速で申し訳ないけど、話しても大丈夫?」

食後に用意した紅茶に口をつけながら一志が切り出す。

「はい、私も一志殿に話したい事があります。」

アリシアは居住まいを正すと、まっすぐに一志を見ながら応える。

「わかった、じゃあまずはアリシアさんの話を聞こうか。」

アリシアはそこでウィナードに転移してから、再び命を落とすまでの出来事を話し始めた。

ゾンビの群れには譲ってもらった鎧がとても役立った事、グールと戦いつつも何とか退けた事、その直後死んでしまった事など。

「グールを倒した後、霧の中に何かを見た気がしました。一瞬の事で詳しくは分らなかったのですが、その後息が出来なかったのを覚えています。」

一志はアリシアの話を聞きながらMIST WANDERERを起動する。アリシアが戻って来てから初めて起動したが、予想通り新着通知がいくつか入っていた。

「えーとね、どうやらアリシアさんはスケルトンアーチャーの放った弓矢で死んでしまったみたいだよ。」

アリシアの黒霧の森での行動が冒険ログに残っていた。内容はあくまでMIST WANDERERでの戦闘ログやら行動ログに則った表示だが、その中にスケルトンアーチャーの攻撃が首にクリティカルヒットした旨の情報があったのだ。

「スケルトン…、しかもアーチャーですか…。」

アリシアの表情に暗い影が落ちる。

一志のようなゲーマーからするとスケルトン、なんていうモンスターは鈍器で殴れば簡単にバラバラになる、位のイメージしかなかったため、深刻ここに極まる、といったアリシアの青ざめた表情はまさに意外だった。

「スケルトン、もしかして凄く強いの?」

「いいえ、単純な強さで言えばそれほどではありません。」

「ですが、スケルトンはゾンビと違い、頭を潰せば終わりという訳ではないのです。」

続くアリシアの説明を纏めるとこうだ。スケルトンは総じて打撃に弱く打倒することは難しくないが、バラバラになってもすぐに復活してしまうらしい。完全に倒すには、スケルトンの体内にある核を破壊しなければならない。

その核を戦いながら破壊するというのがかなり難しいようだ。

さらにアリシアの武器は片手剣、あくまで斬るものであって、攻撃時に与える衝撃、打撃はほとんど期待出来ない。

「なるほど…。それは確かに厄介だね。しかも遠距離から攻撃してくるから、近付くまでも一苦労だもんな。」

「黒霧の森はその名の通り、霧によって視界も悪く飛び道具はそれだけで脅威となります。」

相手が同じ人間なら狙う方も霧によって視界が遮られるが、相手は人ではなく、霧の影響を受けているのかすら分からない。

「取り合えず、イッシーが取ってきたマジックの盾を渡すね。効果は回避率と敏捷性を少し向上させるものだから、そこに期待しつつ、盾と鎧で急所を守るしかないかもしれないね。」

一志はMIST WANDERERを操作し、アリシアのインベントリにマジックのラウンドシールドを移した。


ラウンドシールド 等級:マジック

樫の木の板を重ね、円形に成形し風属性の魔法を付与した盾。軽い割に強度も十分期待出来る。

回避率と敏捷性にボーナス。


アリシアに装備させ感触を確かめて貰ってる間に、黒霧の森での冒険ログを見直す。

グールと遭遇した辺りからのログを入念に確認していると、気になる点が一つあった。

「アリシアさん、スケルトンアーチャーだけど、最低でも3体いると思う。」

戦闘ログ上でアリシアをキルしたスケルトンアーチャーは名前の最後にCと表記されていた。

古き良きJRPGから続く文化として、同種族のモンスターが複数出た場合、末尾にアルファベットをつけてカウントするというものがある。

MIST WANDERERにおいても同様の手法が採用されているため、最低でも3体以上いることが確定したと言っていいだろう。

一方でグールは表記がなかったため、単独での出現となる。

「グールで足止めしてからの弓による遠距離攻撃か、いやらしいね…。しかも霧のせいで見通しが悪く、足場もぬかるむとか。」

「一志殿、私が戦っていた状況が分かるのですか?」

「うん、とは言っても全部が全部分かるわけじゃないけどね。取り合えず、今分かってる情報を一旦整理して、対策を考えようか。」

そう言うと一志はPCの横に置いてあった小型のプロジェクターを起動した。

リンゴと同じ位のサイズと重量で、視聴する分には満足の行くレベルの解像度をほこる、この小型プロジェクターは一志のお気に入りだった。

MIST WANDERERを操作して画面を見て貰いながら話をした方がより解りやすいだろう。

カーテンを閉めて電気を消す。白い壁に投影されたアプリ画面をアリシアに見るように促し、黒霧の森のMAPを表示する。

MAP上に地形が描かれているところはアリシアが踏破したと考えられるため、現状表示されている最南端がアリシアが死んだポイントになるはずである。

「多分この周辺でアーチャーの弓にやられたんだと思う。」

一志はそう言いながら、付箋用紙に×印を書くと壁に貼る。

「MAPを見る限り、少し北西に移動するとポツポツと木が生えているところがあるんだ。」

アリシアの絶命地点を中心に弧を描くように木が点在している様子が見て取れる。

「そんな事まで分かるのですね。ではその木に身を隠しながら移動すれば…。」

「そう。ある程度安全を確保したまま、アーチャーに近づけると思う。木が生えているという事は、根を張る必要がある分、地面もぬかるんでないと思うし。」

「勿論、敵がどこから攻撃してきているか正確に把握出来ている訳じゃないから、過信は出来ないけどね。」


状況の整理と直近の行動方針を話し合ったあと、一志はMIST WANDERERから得られたアリシア自身に関する情報を話すことにした。

「アリシアさんは騎士団に入ってからずっと剣の鍛錬を積んできたって話だったよね。」

「はい。他に優れた才能もなかったものですから…。」

心なしか肩を落としたアリシアを尻目に、一志はアリシアのステータス画面を開く。

「これを見て欲しい。アリシアさんは剣と同じ位、槍の扱いにも適正があるんだ。」

アリシアのスキルツリーは大別して3つあったが、その内の一つである<剣術、槍術>にフォーカスする。

剣術は最初期スキルである<剣術マスタリー>が習熟度1になっており、そこから派生する同じく基本スキル<シャープエッジ>も同様に習熟度は1である。

一方で槍術の方は槍術マスタリーがグレーアウトされている、これは単純に触れていない事からくる経験値不足であろう。

「槍、ですか。触る機会があまりなかったので、私に扱えるとは思ってもみませんでした。」

「アリシアさんは任意に割り振れるスキルポイントが1つあるから、選択肢の一つとして槍術を習得するのもありだね。」

スキルポイントを割り振って、そのスキルを習得した場合、もしそのスキルが積み上げた知識や経験に裏打ちされるものだったとしたら、どういった過程で、どういった変化をもたらすのか。

例えば槍術だった場合、ポイントを割り振った瞬間に何年も修練を重ねた経験が手に入るのだろうか。

そういったアナログとデジタルのぶつかる状況にものすごく興味がある一志だったが、スキルポイントはとても貴重なものであるため、アリシアのためにも遊び半分で決める訳にもいかない。

何やら考え込んでいるアリシアに向き直ると、続けて一志は次のスキル枠について話し始める。

「アリシアさんは騎士様だったよね、君は<聖術>というスキルも習得出来るようなんだけど、それって騎士団と関係あったりするのかな。」

これまで剣術や槍術を通してスキルの話をしてきたが、<聖術>という単語を聞いた途端、アリシアの表情が一変した。

「私に聖術の適正があるというのですか?!」

アリシアのあまりの剣幕に面食らった一志だったが、スキルツリーを聖術に変更して、アリシアに指し示す。

「あー、うん。適正があるというか、聖術マスタリーを習得済だよ。つまり聖術を使える土台は整ってるって事だね。」

「一志殿、聖術は神に仕える神官の中でも、一部の選ばれた高位の神官のみに発現する特殊な力なのです。」

「彼らは信仰心とメイスで不浄なる者達を浄化する、戦闘に長けた神官です。聖レイヤードでも聖術を扱える神官はそこまで多くはありません。」

どうやらこの聖術というスキルはとても珍しいものらしい、とは言え一志にとってみれば、複数あるだろう属性のうち、ただ聖属性スキルが使えるようになるんだろうな、程度の認識しかなかった。

「取り合えず、聖術スキルで今習得出来るものを確認しておく?」

「はい、お願いします。」

今アリシアが相手にしているのはアンデッド系統のため、聖術は恐らくとても有効に働くだろう。

さすがに近接職であろう騎士がターンアンデッドといったスペル系を習得は出来ないだろうな、などと考えながら一志は聖術スキルタブ上の聖術マスタリーから伸びるスキルを確認していく。

そして一志の予想した通り、アリシアの習得出来る聖術スキルは以下の二つだった。

<ホーリーエンチャント>と<ライトサークル>の二つであり、それぞれの内容は次の通りである。

<ホーリーエンチャント>

使用する武器に聖属性を付与し、通常の攻撃に聖属性ダメージを追加する。

追加される聖属性ダメージはスキル習熟度に依存する。

またアンデッド系モンスターに対してダメージボーナスが加算される。

<ライトサークル>

自身の周囲に魔法攻撃を弱体させる円形の聖属性フィールドを展開する。

またアンデッド系モンスターが円形フィールドに干渉した場合、その能力を弱体化させる。

弱体化させるフィールドの範囲、強度はスキル習熟度に依存する。


早速確認した内容をアリシアに説明する。説明を聞いたアリシアは目を丸くして驚いている。

「敵を弱くする聖術があるのですね、初めて知りました。不死者を浄化して消し去る聖女様の祈りと通じるものが・・・。」

アリシアが言っている不死者の浄化というのは恐らく<清浄なる祈り(ターンアンデッド)>の事だろう。

ゾンビには取り合えずコレ、という位有名なスキルだ。MIST WANDERERでももれなく存在している。

「アリシアさんはどっちのスキルがいいと思う?簡単に言うなら攻めるか、守りを固めるかだね。」

アリシアに質問する形で話を振った一志だったが、自身の中ではホーリーエンチャント一択だった。

長い目で見れば分からないだろうが、直近ではアリシアから積極的に攻め進めていかなくてはならないのだ。

単純に火力アップする上に、アンデッドに特効まで付いているホーリーエンチャントは、現状に最も適ったスキルと言える。

「ホーリーエンチャント、でお願いします。」

アリシアは少し考えると、真っ直ぐに一志を見てそう言った。

「私には一志殿に頂いた鎧や盾もあります。それに、何よりグールを相手に私の剣では決め手に欠けていました。」

「自分の剣の未熟さ故ではありますが、それを少しでも補えるなら今の私に最も必要なものだと思います。」

どうやらアリシアも一志とほぼ同じ結論に達していたらしい。早速一志はアリシアのスキルボードを操作して、ホーリーエンチャントを習得させる。

「よし、これでホーリーエンチャントが使えるようになった筈だよ。」

一志はそう言うとアリシアのインベントリから右手に片手剣をドラッグする。

「属性付与したい武器に触れてスキルを詠唱すればいいと思うよ。」

「…ホーリーエンチャント!」

アリシアは胸元で片手剣を構えると祈るように目を閉じて、スキルを使用した。

その直後、アリシアの持つ片手剣が一瞬だけ白く発光した後、薄っすらと淡い光を纏った。

「…本当に私が聖術を使えるなんて…。」

たった今自身の力で聖属性を付与した剣をマジマジと見つめながら、アリシアは声を漏らす。

「今のアリシアさんだと、3回が限界かな…。4回使うと恐らく魔力切れを起こす事になると思う。」

魔力切れとは魔法やスキルを使用する際に消費する魔力が枯渇する事で発生するバッドステータスだ。

MIST WANDERERにおける魔力切れのペナルティは、極度の疲労から来る立ち眩み、眩暈、思考遅延、意識レベルの低下などである。

そして更に厄介なのが、この状態から復帰するには一定量以上の魔力の回復が必要になる点である。

ヒーラーや魔法使いといった魔法の扱いに長けた後衛職でも、自然回復による魔力の回復には時間がかかるのだ。

前衛職であるアリシアでは倍以上の時間がかかるかもしれない。

つまり、仲間の居ないソロの状態で魔力切れを起こしたら、確実に死が待っているという事である。

「アリシアさんは急いで王都に戻らなくちゃいけないんだよね?騎士団の人や助けになるような人に当てはある?」

一志の問いにアリシアは力なく首を振る。

「私達騎士団がアンデッドの大群に襲われた時、初めは困惑から押されがちでしたが、すぐに盛り返したのです。」

「ただそれも、あの黒い大きな異形の者が現れるまででした。」

「アリシアさんを最初に死に追いやったっていう…?」

「はい、その時私は司教様のお傍で露払いをしておりました。遠くから、耳をつんざくような雄叫びのような、怒声のようなものが聴こえて。」

「そこから騎士団が壊滅的な状況になるまで、それほど時間はかかりませんでした。アンデッド共の数もどんどん増えていって、正直皆ここで死ぬものと思いました。」

「せめて司教様だけでも助けなければと思い、混乱の中司教様の元へ駆けつけたのです。」

「そして私は司教様より聖石を託され、王都へ事の顛末と真実を伝えに行くよう指示を受けました。」

「…あの時騎士団は皆、散り散りで戦闘していましたし、私も急ぎ単騎で抜け出したので…。」

沈痛な面持ちで話すアリシアを気遣いつつも、一志は思考を続ける。

『MIST WANDERER基準でいけば、ゾンビなんて所詮は雑魚だ。ゲームとは違うにしたって、騎士団が壊滅するとは考え辛いんだよな。単騎ならいざ知らず。』

『(物理は効き辛いけど、聖属性や火属性なら瞬殺だし、仮にスケルトンなんかが出てきても理屈は同じだしなぁ。』

『そうなると騎士団を壊滅に追い込んだ大型モンスターは不死生物系統じゃないって事か、もしくは不死生物でも特殊な能力持ち?』

「…一志殿?」

何やら考え込んでいる一志に申し訳なさそうに声を掛けるアリシア。

「あぁ、ごめんごめん。騎士団に聖属性や火属性で攻撃出来る人は居なかったの?それこそホーリーエンチャントやファイアボルトとか。」

一志の質問を受けたアリシアは目を丸くして慌てて答える。

「我々騎士に攻撃魔法を使用できる者は居りません。先ほどのホーリーエンチャントも、私が知る限りでは使えるものは居なかったかと…。」

「剣術スキルのホーリークロスは?一応あれも不死者にダメージボーナスがあった筈。」

ホーリークロスは十字に斬撃を重ねる事で十字架に見立てて、聖属性効果を発揮させるという、極めてゲーム的な発想のスキルである。

物理メインの近接職の中でも、斬撃がメインとなる剣士は基本的に不死者と相性が悪い。そんな剣士御用達の対アンデッド特効スキルがホーリークロスだ。

「ホーリークロスとは何でしょうか?」

「え?」

アリシアの返事に思わず固まる一志。ホーリークロスは剣術スキルでも初歩の初歩だ。スキルツリーでも最初期に出てくる。

その名の通り縦横に剣を振るだけの技だ。ちなみに不死者特効が全く必要ない場合は、ダブルスラッシュを取るのが一般的だったりする。

もしかしてアリシアはスキルというものを理解していないのではないだろうか。存在を知らない、というか。

そんな考えが過った一志はアリシアのステータス画面を開いて、スキルツリーを確認する。

MIST WANDERER準拠であれば、シャープエッジの次がダブルスラッシュとホーリークロスで分岐する筈で、事実アリシアのスキルツリーもそうなっていた。

アリシアの同僚の騎士達も同じ訓練を受けて、剣術の練度を上げていたなら恐らく同様のツリーを持っていたであろう。

ホーリークロスを習得出来るという事はその派生元であるシャープエッジは習得しているという事である。

実際アリシアはシャープエッジは使用可能になっている。

「アリシアさん、敵と戦っている時たまに普段より強い攻撃が決まったりしてないかな?すごく曖昧な聞き方になっちゃうんだけど。」

「はい、確かに力の入りや角度、速度などが頭に描いた通りに出来ることがあります。」

シャープエッジの効果はクリティカルヒットを発生させるというものである。主に一撃の重い両手武器などで重宝されるスキルだ。

様々な武器種で名前を変え、同じ効果のスキルが存在する。ヘヴィブロウ、ハードヒット、シャープスラストなどなど。

「その強い一撃はシャープエッジというスキルが発生している可能性が高いね。アリシアさんも既に使えるスキルだから、今度は意図的に出すようにしてみて。」

「声に出しても出さなくてもいいから、スキル名を頭に描いて攻撃すれば、多分発動すると思うんだ。」

「分かりました、ここぞというタイミングでやってみます。」

アリシアは両手をグッと握りしめると一志に向って頷いた。

「では一志殿、今回もまた私の為に色々と協力して下さり、本当にありがとうございました。」

アリシアは一志に向き直り、胸に手を当て片膝をつく。

日本ではまったく馴染みのない所作だが、アリシアがやると全く違和感がない。それどころかとても様になっている。

アリシアに若干見惚れていた一志が、気を取り直してアリシアに手を差し出す。

「うん、アリシアさんも頑張って。頑張れとしか言えないけど、俺も此処から応援してるよ。」

アリシアは人好きのする眩しい笑顔を浮かべ頷く。

決意の眼差しで一志の手を取り握手をした後、装備を整えたアリシアは再び旅立っていった。


「うーん…。結局スキルの件は確認しそびれちゃったな。まぁでも、恐らくウィルナードにおいてはスキルという概念はないんだろうな。」

アリシアの背中を見送った一志は、先ほどのアリシアとの会話で感じた違和感とスキルについての反応から、スキルがMIST WANDERERのみの概念だと考えた。

「そうだとすると、スキルを身に付けたアリシアさんは確実に強くなっているハズ、なんだけどそれよりもっとモンスターが強いって事なんだろうなぁ・・・。」

「レアアイテムだけじゃなく、スキルレベルを上げてスキル同士のシナジーも考えて・・・。」

アリシアのビルドをどうしようかとブツブツと呟きながら考え込む姿は完全にゲーマーそのものであった。


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