女神、ちょっとだけ心配する
いつものように僕が魔王討伐へ行かされる時の事。
「ねえ、今日の魔王って、女なのよね」
女神が珍しく深刻そうな顔をしていた。
事前情報によると、容姿端麗で冷酷非道な相手らしい――
「ダメ。行かないで」懇願する女神。
は?何を言っているんだ?行きたくて行ってないし・・・
「行ったら惚れるでしょ。そういうタイプでしょ、あんた。チョロいし」
「任務は大丈夫なんですか?」
「うーん……でもちょっと怖いのよね……女性の魔王って。色仕掛けとか使ってきそうだし……」
女神はしばらく悩んでから言った。
「いいわ。これ使いなさい」
そう言って手渡されたのは、目隠しだった。
「これで顔を見なきゃ惚れないでしょ?」
「相手を見ずにどうやって戦うんですか?あとなんで僕が惚れる前提なんですか!」
「万が一よ!可能性の話!」
「女神さま、もしかして……心配してくれてるんですか?」
「……は?何言ってんの。部下が無駄に口説かれて裏切られたら困るだけよ!勘違いしないでよね!」
ツンとそっぽを向いた女神は、耳まで真っ赤だった。
「……行ってきます」
「無事に帰ってきなさいよ……絶対よ」
その声だけは、小さく優しかった。