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癒えない少女は。  作者: 佳音
本編
6/12

6 叛逆

六話目です。

 もう引き返せない。私は…「罪人」だ。


 返り血を浴びて赤く染まった剣を振り、血を落とすと、鞘へと納めた。

 レイは、ほっとしたように胸を撫で下ろした。

「ありがとう、プリム」

 だが、プリムはその言葉に応えることができない。彼女は、既にレイと同じ立場に居ないのだ。

 先程までレイが睨めっこしていた地図を手に取ると、計画に記された地点を確認する。

 プリムはここ数週間の特訓の成果か、簡単な文書なら難なく読解できるようになっていた。レイは計画を立て終えており、それは全て地図に記入されている。つまり、もう彼女が居なくとも、叛逆に支障はないのだ。

 ならば、此処でプリムが取る行動はひとつ。

「レイ、私とは此処でお別れ。貴女は、陽だまりの中で、幸せに生きるべきだから」

「あっ…」

 レイは何か言い返そうとしていたが、プリムには関係がない。

 彼女はレイを置いて、陽の射す方へと歩み出した。


********************


「——さぁ、その時は訪れた。諸君、栄光の為に剣を握り給え」

 指揮官・ニコラスの掛け声を期に、火蓋は切られた。どす黒い暗雲に覆われた空は、目の前であるはずの王城を遥か遠い存在に思わせ、戦闘意欲を削ぐ。しかし、最早止まる術は持ち合わせていないのだ。

「必ず、女帝の首を取る」

 叛逆者は数刻後には、滾る怨念に身を任せ、帝国を絶望の淵へ陥れるのであった。


 その後の記憶は曖昧で、無に等しかった。気づけば、数多の兵を裂き殺し、女帝の首先に黒刀を突きつけていたのだから。彼女の背後は窓で、此処は4階。生きて逃げ延びるのは不可能だった。

 シャンデリアを吊るす糸が焼け切れ、パリンと音を立てて硝子片が飛び散った。

 硝子片はプリムの頬をかすめ、流血を齎す。

——追い詰めた。

 女帝は、名はなんだったか、確か、安泰セルマと言っていた気がする。

「——何者なの、貴女…」

 不確かだが、セルマは未確認生物と対峙しているかの様な怯え具合で、か細い声を発した。

「化け物の名なんて、聴いても無駄でしょう」

 冷たく突放す。彼女にとって、敵将との対話は流水を両断するのと同じほど興味のないものだった。

「何が、何が気に入らなかったの…!?私の権威があれば、どんな事でも…」

「私は、貴女に興味はないの。唯、純粋な少女や、私みたいな、不幸な人間を救いたいだけ」

 セルマは必死の命乞いで、呼吸が荒ぶっていた。

「——私たちに、貴女は必要ない」

「…っ!」

 ——プリムの剣は、寸分の狂いなく、女帝の首を刎ねた。


 プリムは、体力的にも限界を超えていたのだろう。立つのも覚束ず、剣を杖代わりにして漸と自重を支えていた。そんな所へ、悪魔は現る。

「本当によくやってくれたよ。プリムローズ」

 振り返る先には、先程まで味方面していたニコラスが居た。ニコラスは出会った時と同じ、又はそれ以上に冷たい目をして言った。

()()()()()()()()為だ、悪く思うな。——近衛ども、こいつを捕えろ」

 彼女の推測通り、ニコラスは初めから、裏切るつもりだったのだ。彼には他に妹、姉は居なかったはず。つまり、現女帝が死ねば、仕方が無しに彼に権力が集まる。これを狙っていたのだ。


「…レイ、ごめんね」

 プリムは元相棒を想い、涙した。

tx!:)

ありがとうございます(╹◡╹)

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