4 哀情
四話目です。
勿論、行動を始めないことには、事態が良い方向へ向かうことはない。しかし、良い意味でも悪い意味でも、「何も変わらない」のだ。叛逆の罪で断首されることもなければ、義理の正義に飢えたヒトを謳う者どもと対峙することもない。私たちが行動することに意味はあるのか、リスクとリターンで考える必要があった。
「プリム、これが陰謀への参加者名簿。写真もあるよ」
これはまた、気の利く相方である。殊更問題となるほどではないが、プリムは字が読めない。つい先日、aからzまでの26字を覚えた所なのだ。書けるのは、All collect,Go,Stay,Wait、そして、自身の名前、Primroseと、良き相棒、Leiaのみである。
学問は楽しいものだと、熱心に励むプリムを見たレイは、「誰もが教育を受けられる、そんな国があればな…」と、感歎を溢した。一方の彼女は、秀れた頭脳と、カリスマ性、武具の扱いや殺生にも長けていた。幼い頃からの英才教育が効力を発揮しているのだろう。身のこなしは、武人のそれとなんら変わりなく、観る者をその美しさで惹き込ませる。
彼女にとって、城下の兵衛なんて、赤子も同然だろう。そんな彼女にも、弱いものはあるのだ。それを打ち明けてくれたのは、あの、暗い林の中だった。
「…私は、人を殺せない」
切な気な面持ちで、叛逆に於いて致命的な欠点を自ら発いた。
それだけ、自分にとって辛いことであったとしても、この世界が許せなかったのだろう。それならばと、プリムはサラサラと靡く銀髪を結い、叛逆を遂行する決意を固めた。
暖炉に焚べていた薪は全て炭となってしまい、パチパチと燃えていた焔は静かに消え失せた。
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「おはよう、朝だよ」
静寂な夜が明け、燦々と輝く太陽は血腥い未来を霞ませるべく、語りかけるように柔らかく彼女らを照らした。
レイから漆黒の剣を承けたプリムは、嘗て無い高揚感と、それとは正反対の感情、哀を感じた。鞘を腰にかけ、柄を強く握り締めた。
「——私達は、同じ人間なのだから」
…だからなんだというのだ。そもそも、真っ当に生きて、唯仁義を問うだけの少女を執拗に否定し、絶望の淵へと追いやった者達を、同じ「人間」と見なしていいのだろうか。仲間ではないのだろうか。
——否。これが結論である。
刃向かう者は殺しても構わない。私の使命は、自由を手にすることなのだから。
tx!:)
ありがとうございます(╹◡╹)