番外編 プリムローズ
二人の出生についてと他少しについて書きました。
学業の方が忙しく、あぶれる内容が多くなるため、あとがきに説明程度に載せておきます。
「セルマ様、産まれましたよ」
齢八の皇女が、忌子を産んだ。子の瞳は麗しい紫。その瞳の色から、『プリムローズ』と名付けられた彼女は、数刻が経過しようとも、産声を上げることはなかった。
「気色悪い。こんな奴、殺してしまえ」
陣痛に耐えかね、意識が朦朧とするセルマは罵詈雑言が飛び交う中でも、我が子を手放そうとはしなかった。母としての、生物としての本能なのかもしれない。
父親が不在の中で、忌子をどのように処分するか、慎重に議論された。少なくとも半身は皇族の血を継ぐ者。しかし、帝国の掟として、皇族は神に仕える者以外との婚約・結婚を禁じられている。つまり、相手が分からない以上は、存在自体が『不都合』なのだ。
掟に従い、処刑の見通しを立てるのだが、如何にもおかしな事が続く。
——処刑人が急死する。
指名された者は皆、明日を迎える前に命を落とした。
呪われた子だと恐れた臣下達は、深夜、人目に付かぬ川で彼女を沈めた。
セルマは遂に、我が子の顔を見ることはできなかった。
「…赤ん坊が流れてきた!」
エーリアと呼ばれる白髪の美少女、彼女の瞳は深紅色だった。顔立ちはとても整っていて、月明かりの下で屈み込む姿は、絵画のような美しさを持つ。
彼女は年齢に見合わない、碧い宝石の埋め込まれた高価そうなヘアピンを身につけていた。
繋がりに飢えたエーリアは、屋敷の者には内緒で、プリムローズを育てる事にした。
その美貌の所為で、家族の元から引き剥がされたエーリアは、心細かったのだ。クロフォード家と言ったか、帝国随一の貴族の息子に大層気に入られ、側室として飼われる事になった彼女は、何不自由ない生活を保証される代わり、如何なる自由をも剥奪された。
そして、彼女は赤子を孕っていた。
人知れず赤ん坊を抱えた彼女の足取りは、普段より幾分か軽やかだった。
プリムローズは、エーリアの自室ですくすくと育ってゆく。人目を気にするあまり十分な食事を取れなかった為か、華奢でより幼く見える。彼女は、齢一の時の、あの夜になるまで泣き声を上げることはなかった。
プリムローズは、言語理解が早い。まだ一歳だと言うのに、言語という複雑な体系を大人に負けず劣らないレベルで習得していた。他にやることがなかった為か、エーリアに、外界の情報をねだっていた。そして、彼女は、自分が捨て子であることを知った。
——ある日を境に、エーリアがプリムローズの元へ訪れることはなくなった。
使用人が清掃に来る以外に人の出入りはなかったのだが、遂に、あるメイドに姿を見られてしまった。
「皇女様の…皇女様の忌子が…!」
プリムローズは、その引き攣ったメイドの顔を一生忘れることはないだろう。
話し相手が不在で、暇になったプリムローズはこっそりと部屋を抜け出し、ランプの灯りを頼りに進んでゆくと、屋敷の外へと出ることができた。よちよちと庭を歩いていき、真っ白な病棟の戸の前まで来たところで、話し声が聞こえた。
男と、聞き慣れた女の声。エーリアが誰かと話しているのだろうか。
「何故だ。何故奴が生きている!皇女の、呪われた子が!」
「知らなかったんです。それに、流れに揉まれる姿が苦しそうで、見捨てられず…」
プリムローズは、自分が歓迎されていない存在だとは薄々気づいていたが、自分が皇族の血を継いでいて尚呪われた子として恐れられていることは、これから数年が経った頃に漸く理解した。
暫く揉めていた様だが、数分もすると、突然悲鳴が聞こえた。
——肉を裂く音がする。
無性に怖くなったプリムローズは、屋敷から逃げ出した。
プリムは屋敷を出たのちに、とある善良な薬師に拾われます。
薬師は、貧しい人からはお金を取らなかったため、あまり裕福ではありませんでした。
二人は慎ましく暮らしていましたが、薬師はプリムが16のときに大病を患い、なくなってしまいます。
子供も配偶者もいなかったため、少ない財産はプリムが相続します。また、薬師から学んだ薬学の知識で日銭を稼いでいました。
そして物語は、一周忌で追悼をするために買い出しに行ったところから始まります。
tx!:)
ありがとうございます(╹◡╹)




