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魔王戦


『ルーンアップ』

 魔力上昇


 初手、即死魔法は飛んでこなかった。

 かわりに強力な岩石魔法が飛んでくる。


「くそ、読み負けた」


 呪文が長くなると思って、ルーンアップをはさんだのに。


 このゲームでは、初手から最大魔法を使ってくるボスが多い。

 現実なのだから、普通のゲームのように接戦を演出する理由がない。


 呪文をキャンセルする暇がなく、直撃を免れないと思った瞬間、

 アッシュがかばうように、アンスの前に立つ。


「このくらい大丈夫よ」


 アッシュが、アンスに向かっていた、岩魔法を斧で防いでくれる。


「ありがとう」


 僕はお礼を言いながら、コマンドをたたき込んだ。


『属性解放・火』


 アンスの魔力に火を灯す。


『ファイアステップ』


 アンスは、足に炎を纏って、高速で移動する。

 僕は、アンスをアッシュとエイクの反対側に逃れることによって、範囲から逃れる。


 アンスのスキル回しは、基本魔力に火がついた状態を維持することによって、どんどん上級魔法が使えるようになっていく、そのためには、魔力を切らさないように、足を止めて『ルーンアップ』差し込んでいく必要がある。


 魔法には、攻撃範囲や、距離減衰もあるため、距離感や、タイミングが重要だ。


「お前らなど、まず回復職から倒せばいいだけのこと」


 魔王は、サラスティ―に目を付けた。


『ルーンアップ』

 魔力上昇


『イグニスミラージュ』


 よくあるゲームのように、分かりやすいヘイトのようなものは存在しない。

 敵は自らの意思で、倒すべき相手を決めてくる。

 攻撃の対象がサラスティ―になったことで、背中ががら空きだ。


『ファイアーボール』


 アンスのファイアーボールが当たるのも構わずに、サラスティ―に突撃していく魔王。


 アッシュが、守りに走るも間に合わない。


「かかった」


 魔王が、サラスティーにメイスを振り下ろした瞬間、サラスティーの体がかき消え、炎が爆発した。

 イグニスミラージュの効果、陽炎による幻影。

 炎の魔力は、敵が触れた瞬間大爆発を引き起こす。

 

『ルーンアップ』

 魔力上昇。

 

『インフェルノ』


 アンスが、掌にためた魔力を属性変換しながら、ファイアステップで肉迫し、近接最大魔法の炎で吹き飛ばす。


「どうだ」


 ヒーラー職が狙われるのはわかっている。

 勇者ジョブなら、剣でカウンターを叩きこんでいたが、アンスは魔法使い。

 魔王はサラスティーを狙った瞬間、カウンター魔法を仕込んでおいた。

 

 爆炎の中から、魔王が立ち上がる。


「四分の一は削ったわ」


「これでも四分の一か」


 確実に、HPは削っていっている。

 倒せない相手ではない。


「小娘がぁ!」


 魔王が、標的をアンスに切り替えた。


『ファイアステップ』


 魔王が、執拗にアンスに攻撃してくる。

 だけど、


「いいのか、魔王。アンスばかり見ていて」


 『矢時雨 嵐』


 エイクが、魔王の死角から、大量の矢を降りそそがせる。


 魔王の気が矢に逸れた瞬間、


『ルーンアップ』

 魔力上昇。


『バーニングスラッシュ』


 ワンドの先端から出力した超高熱の炎の刃で切りつけた。 

 

「ぐうぅ」


 魔王が呻く。


「小娘が、目にもの見せてくれる」


 怒り狂った魔王が、距離をとり魔法を唱える。

 魔王の上部に、魔法名が表示される。

 即死クラスの究極魔法だ。


 ルーナの解析による攻撃範囲が光り輝く。 


「即死攻撃の想定される範囲は、全体!?」


 エリア全体が光り輝き逃げられない。


「みんなアッシュの影に隠れて!」


『イングルノ』 


「即死には、不死身よ」


 全身鋼鉄の無機物と化したアッシュが、魔王の攻撃を受け止める。


『ハートオブヒール』


 サラスティーがアッシュに精神強化の魔法をかける。


『ルーンアップ』

 

 アンスがさらに魔力を高めた。


『ファイア・グラウンド・ゼロ』


 即死魔法を放ち動きが止まった魔王に、炎の爆撃を放つ。


 即死魔法の圧迫感はきえたが、

 

「我が操る即死魔法が一種類だけだと思うなよ」 

 

 魔王が魔法を唱えると、魔王の上空に目の絵に×をつけたようなアイコンが浮かび上がった。


「見てはいけない!」


 ルーナが叫んだ。 


 画面越しの僕らに効果はないが、目を閉じるというコマンドは存在しない。


 僕はアンスが魔王を見ないように体をまわしながら、


『目を閉じて』


 と、キーボードでテキストを打った。


 きっちり四人とも目を閉じている。

 誰も死んでいない。


 だが、再び、魔王の上空にアイコンが浮かんでいる。


「連発できるのか、だが」


 視認型即死攻撃は、きっちり目さえ閉じていれば、ダメージはない。 


 僕たちが操っていることがわかっていない魔王には、絶好のチャンスだ。

 同じ気持ちだったのだろう。

 完璧なタイミングで、ゴロウが操るエイクが飛び出していた。


『毒牙十連撃』


 威力は足らないが、防御力低下のあらゆるデバフが重ね掛けされていた。


『ルーンアップ』

 

 さらに魔力の火力が上がる。


(いまだ)


『ドラゴニックファイア』


 僕は先行入力で、最大魔法を選択した。


「あっ……」


 不発。


 アンスがうまく呪文を唱えられなかった。


 魔法使いは、確率で呪文が発動しないことがあると、テキストには書いてある。


 でもいつだって、重要な場面で発動しないことがあった。


「ああ、あぁ、どうして、呪文が……」


 彼女の口から、呪文がでてこない。

 視界がふさがったことによる、極度の恐怖と緊張からくる、ど忘れ。


(大丈夫)


 彼女がおぼえていなくても、僕は覚えている。


 僕は素早くキーボードに呪文をたたき込んだ。


『この身に宿りし、火の奇跡。いまこそ灼熱の竜と化し、かの者を滅せよ』


 僕はアンスの心に呪文を唱える。


 僕がいくら呪文を唱えても魔法なんて起きやしないけど、


「この身に宿りし、火の奇跡。いまこそ灼熱の竜と化し、かの者を滅せよ」


 君は違うだろう。


 起こせ、奇跡。


『「ドラゴニックファイア」』


 瞬く間に、魔法の力がアンスの体を包み込む。

 アンスは、灼熱を纏ったドラゴンへと化した。


 世界は炎で包まれた。

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