それぞれの帰るべき日常
「頑張ったね。アンス」
僕は、戻ってきたアンスを労った。
「はい! ルッカさんのおかげです」
僕らは、帰ってきた四人を祝福した。
誰一人かけることなく、戦い抜いた。
今度こそ完全勝利だ。
「シャイル、勝ったよ」
君が望んだ世界に近づくだろうか?
そうだといいな。
僕はアンス達が喜ぶ姿を見ながらそんなことを考えていた。
◇ ◇ ◇
ルーナがいろいろ料理を準備してくれた。
祝賀会ということらしい。
まるで本当のオフ会みたいだ。
いや、本当にオフ会なのか。
場所が異世界なだけで。
僕は、飲み物を手に取ると、ルーナの前に座った。
アンスが近づいてきて、僕の隣に座る。
「ありがとね。ルッカ、これで世界はいい方向に向かうわ」
僕らが倒した魔王は二人だけ、
まだ生きている魔王の方が多い。
「あと四人も残ってるけど大丈夫なの?」
「あとの四人は全く話が通じないわけではないから、交渉でどうにかするわ。彼らには彼らの言い分がある。戦うことだけが、世界平和への道ではないわ」
魔王の事情も考慮するなんて、
「本当に君は優しい女神だね」
みんなが命をかけるほど、信頼する理由がわかる。
きっと誰からも好かれるだろう。
誰からもか……。
僕は少しだけ胸の奥がズキリと痛んだ。
「無理なときはまたお願いね」
「もちろん。でも、ないことを祈ってるよ」
「ありがとね」
僕は、アンスをみた。
「あとはアンスを自由にしてあげて」
僕の言葉を聞いて、驚いた顔をしている。
「分かったわ、でもそうなると一旦あなたのアカウントを消して、彼女との繋がりを消すことになるわよ」
「もちろん、それでかまわないよ」
「ちょ、ちょっと待ってください。それは会えなくなるってことですか」
「そうよ。だって元々住むべき世界が違うもの」
「そんなぁ」
「英雄なのは、あなた。ルッカはあなたのボランティア、そういうこと」
アンスは俯いてしまった。
こればっかりは仕方がない。
いろんな思いがあれど、オフ会が終わってしまえば、
それぞれの日常に帰っていく。
無事終わったからいえることだけど、楽しかった。
アンスには感謝しかない。
アンスには、平和になった世界で幸せになってほしい。
僕は心の底からそう思う。
そこにサラスティ―が、話しかけてきた。
「女神様、その件で話がありましてよ」
◇ ◇ ◇
「あなた達は、ついて行くのね。組み合わせはそれでいいのかしら?」
サラスティ―とエイクは、リンとゴロウについていくことにしたらしい。
プレイヤーとキャラクターの組み合わせでなくて、
ゴロウにサラスティ―
リンにエイクが寄り添っている。
サラスティーがゴロウの腕をつかむ。
「だって、この人ワタクシがついていないと、すぐ死んでしまいそうなんですもの」
「ははは」
ゴロウは、困ったように頬を掻いているが、
うれしいそのものの顔をしている。
今度は、リンとエイクを見てみる。
「リンは、私が守る」
意思表明するエイク。
そんなエイクにリンが抱きついた。
エイクなら、リンを不安をどうにかしてくれるだろう。
彼らが、僕らを心の拠り所にしていたように、僕らも彼らを心の拠り所にしていた。
辛い現実も一緒なら歩いていける。
心と心が結びついたのなら、
きっと日常すら、変わってみえるだろう。
「できるだけ、魔法とかは使わないでね」
ルーナが四人に忠告する。
来た時と同じように光り輝くゲートに、帰っていく四人に僕は手を振った。
「また別のゲーム誘うから!」
連絡先は知っている。
歳も性別もばらばらだけど、僕らは趣味が同じ友達。
これからも一緒に遊びたい。
だって、遊びに終わりなんてないのだから。
◇ ◇ ◇
僕は、ルーナの片づけを手伝いながら聞いた。
「魔法は、できるだけ使わないで、よかったのか?」
僕らの世界に魔法がない。
普通禁止すべきだと思う。
ルーナは笑って言った。
「いざって時は仕方ないわ。でも、私があなたたちの世界の神に、お説教を受けるのは覚えておいてほしいわね。今度またゲームするとき伝えるわ」
責任だけ取ってくれるなんて、どれだけいい上司なんだ。
ルーナは優しすぎるとおもうんだよね。
「ちゃんと世界転移の手続きもしてあげないとね」
「やっぱりそういうのあるんだな。いいのか、仕事増やしてばっかりだろう」
「いいのよ。みんなが幸せになってくれるのが、私の幸せなんだから」
「そっか」
本当に、最高の女神だな。
恋心は叶わなかったが、
ルーナに出会えてよかったという気持ちは今も変わらない。
ルーナみたいな神様がいてくれるのなら、
どんなに絶望が世界を覆いつくしても、
前を向いて歩いていけるだろう。
「アッシュ、ルーナをよろしくね」
「ああ、任せてくれ」
物理的にルーナを守るのは、きっと彼の役目だ。
悔しいが、適材適所というものがある。
立派にこなしてくれることだろう。
「さて、僕もそろそろ帰ろうかな」
名残惜しいが、
そろそろ僕も帰らないといけない。
終わりは来る。
どんなゲームにだって。
ゲームを楽しむためには、現実だって蔑ろにするわけにはいかない。
「アンス、あなたはどうするの?」
ルーナが、アンスに確認した。
「もちろん決まっています。あたしは……」




