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【完結】異世界で道具屋はじめました  作者: SAK


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63.ダンジョンの調査結果

「いらっしゃいませー……と思ったらタイガさん、ダンジョンを踏破できたんですか?」

「……ああ……」


 タイガさんを見ると少し落ち込んだような表情だけど……。

 もしかして長期のダンジョン滞在で疲れているんだろうか?

 たしかダンジョンに入ってから一週間は経過しているし……。


「お疲れでしたらポーションを用意しますが……」

「いや、そういうことではないのだ。……また場所を変えて話そう」

「それでは温泉の準備をしてきましょうか、貸し切りにすれば人は来ませんし」

「温泉? 初めて聞くが……」

「よかったらディーヴェルさんも一緒にどうぞ、すぐに準備しますので」

「ああ、よろしく頼む」


 僕は二人を別室に案内して軽めの食事と冷たい飲み物を用意すると、丘の上へと向かった。




「なるほど、これが……確かに疲れた身体に効くな」

「ええ、暖かいお湯に浸かりながらゆっくり過ごすのがいいものなんです。……さて、それではタイガさん。ダンジョンのことをお聞きしたいのですが……」

「う、うむ……」


 タイガさんは少し言葉に詰まりながらも、ダンジョン内での出来事を教えてくれた。

 戦闘はディーヴェルさんがほとんどやってしまったこと。

 ダンジョンの最下層は50階であること。

 ところどころでレアモンスターが出て、それの鑑定をツバキさんにお願いしたこと……などなど。


「まさかディーヴェルさんの独壇場になるとは……さすがと言いますか……」

「おかげで地図化(マッピング)が捗り、次から挑む時はかなりの時間短縮が望めるが……」

「何か問題があるのですか?」

「いや……自分の力不足を痛感してしまってな……」


 タイガさんはそう言うとディーヴェルさんの方をちらりと見る。

 ……ああ、別格な力を見せられて落ち込んでいるんだな、と理解できた。

 確かにディーヴェルさんは魔王の息子だし、圧倒的な力を持っていてもおかしくないよね。

 しかし、Bランクであるタイガさんでもそれだけの差を感じると言う事は、勇者でもないと魔王どころかディーヴェルさんにすら手も足も出ないんだろうな、と思ってしまう。


「いや、タイガもまだまだ伸びる余地はある。いずれ勇者に匹敵する力を持つ存在になるだろう」

「はは、そう言って頂けるとありがたいですね……」


 あ、またタイガさんが素に戻ってる。


「それはそうとこの温泉というものは良いな。体調が戻れば妻も連れてきたいのだが……」

「それは歓迎しますよ! そういえば、新しいポーションが作れまして……」

「……! 今のAランクのよりも効果があるものか!?」

「温泉から上がったら奥さんの様子を見に行ってあげてください。ランスさんいわく、前よりも症状が軽くなったとか」

「そうか……ありがとうシゲル。今回のダンジョンの私の分の報酬は全てシゲルに渡そう」

「い、いえ、さすがにそこまでは……それに、配分は奥さんを見てからでも……」


 確かにSランクだからお高いものではあるのだけど。

 さすがにMVPのディーヴェルさんの報酬を全部取りとかはしたくない。

 ディーヴェルさんがいなければ踏破もできなかっただろうしね。


「うむ、ではそうさせてもらおう」

「シゲルさーん! お話が終わったらこっちに来てくださーい!」

「ダメです」

「えー! がんばったんだから混浴のご褒美を……」

「そっちには今フォウさんもいますし……というかそもそも混浴はダメですって」

「フォウはどう思うー? え? シゲルさんならいい? ……ですってー!」

「ちょちょちょっ……ちょっとイベリスー!?」


 温泉を隔てている壁越しに、イベリスさんとフォウさんの言い争いが聞こえる。

 言い争いというか、本気で言いあってない感じだから、幼馴染同士のじゃれあいみたいなものなんだろうけど……。


「あ、僕はこの隙に先にあがりますね。お二人はごゆっくりと」

「う、うむ……」


 ……結局、イベリスさんが僕がいなくなったことに気付いたのは、男湯の方に突撃してきてからだったとか……。

 行動力は本当に高いなあ、と思うのだった。




**********




「確かに、以前のポーションよりも症状が軽くなったのを確認できた。まさかベッドから起き上がれるまでに良くなるとは……本当に感謝する」

「あとは、今回持ち帰ったアイテムの中に、呪いを解呪できるものがあればいいのですが……」

「うむ。もしなかったとしても、今回の地図化で次回以降の効率は上がるだろうから、無駄ではないはずだ」

「そうですね、それにどのモンスターがどの階層にいるか、それは何をドロップするのか……これらをどんどん埋めていけば……」

「ああ、あとは時間さえあればダンジョンの全容を把握できるだろう。もしなかった時は更に別のダンジョンを調査していくだけだ」


 ()()って……まあ、ディーヴェルさんなら一人でも踏破できるぐらいの実力者だし、そういう感覚なのかな。

 ……しかし、この強さがもし敵のままだったらと考えると……土の精霊様の言っていた通り、召喚者がどんどん殺されていったというのも納得できる。


「そういえば……」

「どうしました?」

「いや、ダンジョンの最下層のことなのだが……なぜか、モンスターが一匹もいなかったのだ」

「普通は何かがいるものなのですか?」

「タイガが言うには、最下層にはボスモンスターと呼ばれるものがいるそうなのだが……」


 あー、確かにゲームとかだとダンジョンの奥には強力なボスモンスターがいるのが普通だった。

 この世界のダンジョンでもそういうものがあるんだ。


「確かに不思議です。もしかしたら何か仕掛けがあったり、必要なアイテムがあるのかもしれませんね」

「微弱な魔力は感じたのだが、もしかするとそれが何か関係するのかもしれないな……」

「魔力……ですか?」

「ああ。……そうだな、さっきの丘の上にいた時にも似た魔力を感じたのだが……」


 丘の上……?

 となると、聖樹かそれともアースドラゴンさんのいる泉か……?

 それがダンジョンの中にあるものなんだろうか?


「とりあえず、次に最下層まで降りた時にはまた確認してこよう」

「分かりました、また何かあったら教えてください」


 ……こうして、初めてのダンジョンの調査は終わった。

 持ち帰ったアイテムの中に解呪に使えそうなものはなかったものの、タイガさんたちの装備品がかなりランクアップしたようだ。

 また、種もいくつかあり、第六感が強くなってモンスターの接近や罠に気付きやすくなる『察知の種』、気配や存在感を消して無用な戦いを避けられる『隠密の種』などが手に入った。


 更に、ツバキさんが錬金で作成できるもののランクを上げられるスキルを身に着けたので、幸運の実をポーションにすることで、Sランクの幸運ポーションも作れるようになった。

 その効果時間はなんと2日。これで実を大量に持ち込む必要がなくなり、より多くのアイテムを持ち込めるようになったのだ。……といっても、ディーヴェルさんが強すぎて必要ないんだろうけど。


 あとは試行回数を増やして、レアドロップやレアモンスターを狙い、どんどん情報を集めていくだけだ。

 こうして、色々な収穫があった第一回のダンジョン調査は成功に終わったのだった。

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