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【完結】異世界で道具屋はじめました  作者: SAK


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50.幸運の実の効果

 『幸運の実』による、ダンジョンでのドロップアイテムの調査が終わってからしばらくして。

 僕はフォウさんのパーティーがダンジョンに潜る際に幸運の実を渡し、ドロップアイテムの調査を頼むようになった。

 手に入った激レアのドロップアイテムが種だった場合はフォウさんのパーティーから買い取る形にしているし、調査に対する報酬も出している。

 報酬はパーティーの人と話し合って決めているのだが、高ランクの薬草やポーション、低ランクの魔力草がメインで、他には冷却草が人気だ。

 どうもダンジョンはじめっとしていて蒸し暑いエリアがあるらしく、冷却草によるひと時が癒しの空間になるらしい。

 ……ちなみに、フォウさんはまたたびしか欲しがらない。


「確かに鎧とか着込んでたらめちゃくちゃ暑いだろうしなあ……」


 ……ふと、これは商売になるのではと思った反面、これ以上取り扱う商品を増やすのも人手が足りなくなる要因だなとも思ってしまう。

 そもそも僕の魔力、100から上がってないんだよね。

 アーマーウルフの討伐に協力したし、この前のダンジョンでの実験でスライムから経験値は入ってるんだろうけど、それでも魔力だけは一向に上がらない。


「ある意味縛りプレイやってる気分だなあ……」


 まあ、やろうと思えばミズキに頼んで魔力草を量産してもらい、魔力酔い寸前まで魔力を補充すればいいのだが。

 それでもあの魔力酔いだけは二度としたくない。

 そう思えるほどに強烈だったからだ。


「シゲルさん、どうしました?」

「あ、リリー。ちょっと新しい商売を思いついたんだけど……人手と魔力が足りないなあって」

「確かに、今の品揃えを維持するだけでも大変ですしね」


 薬草、各種野菜、解毒草、解熱草、爆裂草、魔力草、硬化草、鬼神草、発火草、冷却草、浮遊草、拘束蔦の種、幸運の種、堅固の種が僕が育てられるもの。

 ポーション、味付きポーション、解毒ポーション、解熱ポーション、爆裂ポーション、マジックポーション、硬化ポーション、発火ポーションがツバキさんに加工して作ってもらえるもの。


 ……こう書き出すと、改めて品数の多さを思い知らされる。

 あと、冷却草で作れるかき氷なんかもあるしね。


「それにしても、まさかここまで品揃えが増えるとは思っていませんでしたね」

「そうだね……特にダンジョンでのドロップアイテムはみんなに感謝しなきゃ」


 ドロップアイテムが入手できるのはダンジョン内だけである。

 アーマーウルフもそうなんだけど、地上にいるモンスターは宝箱を落とさない。

 代わりに、素材として皮を剥ぎ取れるし、お肉が食用にもなる。


 一方で、ダンジョン内のモンスターは消滅する代わりに宝箱を落とすことがある。

 ただし、落とすのも確率であって、倒しても徒労に終わることもあるのが難点だ。


 堅実に稼ぐ地上派、一攫千金を狙うダンジョン派といった派閥もあるらしいとか。


「そういえば、シゲルさんは定期的にタイガさんたちにアイテムを渡してますよね」

「うん、冒険者は命がけなんだ。危険を冒してまでドロップアイテムを収集してくれるお礼だよ」

「……普通の人なら依頼報酬だけなんですけど……やっぱりシゲルさんは優しいですね」

「うん、お兄ちゃんのおかげであたしたちもシスターにお礼ができるようになったし……」

「……恩人……」


 いつの間にかルピナスとトレニアが隣に来ていた。

 この子たちのおかげで僕も助かっているので、こちらこそお礼を言いたい。


「ルピナスとトレニアのスキルのおかげで品揃えが保ててるんだ、こちらこそありがとう」

「えへへ……」

「……至福……」


 僕は2人の頭を撫でると、嬉しそうに笑ってくれる。


「あらあら、仲良しさんねえ」

「あ、ガーベラさん」

「そうそう、さっき外でツバキさんに会ってね、あとでシゲルくんにお店まで来て欲しいと伝えてって言われたわ」

「分かりました、あとでお邪魔することにします」


 ツバキさんの呼び出し……ということは……。




**********




「おお、来たか」

「はい、用事と聞きまして……やはり、アレですか?」

「うむ、これが完成品じゃの」


 ツバキさんは綺麗な透明の液体が入ったビンをカウンターから取り出す。


「開けて匂ってみるか? いい匂いじゃぞ」

「いえ、未成年なので遠慮しておきます。それに、開けたら品質が劣化しますからね」

「ふむ、確かにそれはあるかのう。しかしシゲルがまたたび酒を欲しがるとは思わなんだがの」


 そう、ツバキさんに作ってもらったのはまたたび酒。

 しかも、ドラゴンの泉とミズキの水をブレンドした特製の水で作った特注品だ。


「ええ、ちょっとプレゼントをしようと思いまして」

「なんじゃ、また女でも作りおったか」

「またってなんですかまたって。そもそも僕は誰とも付き合ってませんが……」

「しかし好意を持たれておるのは複数人おるじゃろう? 無自覚とは言わせんぞ?」


 あー……まあ確かに女性の知り合いは多いけど……全員、僕がしてあげられることをしてるだけなんだけどね。


「まあそれはおいといて……ランクはどれほどのものなんです?」

「儂を誰だと思っておる。無論、Aランクじゃ」

「ありがとうございます、これなら喜んでもらえますね」

「ふむ……なるほどのう、次の女子(おなご)は猫獣人族か」

「えーっと……依頼のお礼ですよ。おかげで堅固の実が手に入りましたしね」


 今のところ実は堅固の実だけだけど、これからきっと新しい実を見つけて来てくれる。

 そんな予感はあるし、僕の依頼で手間をかけているのもあるから、せめて好きな物を送ってあげたい。


「ほう……やはり激レアドロップの件はシゲルが噛んでおったか」

「……秘密にしておいてくださいね。幸運の実目当てでお店に人が殺到しても困るので」

「勿論じゃ。儂としてもシゲルからのアイテム供給がなくなると困るしのう」

「激レアドロップのアイテムが手に入りましたら優先して回しますので、それでご勘弁を」

「うむ、楽しみにしておるぞ。ではほれ、追加でこれも持って行け」


 ツバキさんはそう言うと、更にビンを数本取り出した。

 さっきと同じ透明な液体が入っているが……。


「そのAランクのまたたび酒を作る際に、余ったまたたびでついでに作っておいた。ま、おまけじゃの」

「ありがとうございます、これでフォウさんも喜びます」

「ふむ、猫獣人の娘はフォウと言うのか……ん? どこかで聞いた気もするが……」

「たしかCランクのパーティーと聞いたので有名な方かもしれませんね。それでは、また寄らせて頂きます」


 考え込むツバキさんに声をかけ、僕はビンを抱えると、道具屋へと戻って行った。




**********




「あ、シゲルさん……あ、あの、今回は激レアドロップはありませんでしたが、これを……」


 フォウさんが取り出したのは、たくさんの実が入った袋だ。

 恐らくランダム宝箱などから集めてくれたものだろう。


「ありがとうございます、今度育ててお店に置かせて頂きますね」

「は、はいっ……。そ、それと……多分、良い情報と思うのですが……」


 良い情報? なんだろう。

 ダンジョン内で僕に良い情報となるものって……?


「わたしが幸運の実を使ってたんですけど……効力がある間、レアモンスターの出現率が上がった気がするんです」

「レアモンスター?」

「は、はい……時々普通のモンスターに混じって出現するモンスターで、貴重なものを落とすと言われています……」

「!」


 もし、そのレアモンスターが種を落としたら……?

 もし、そのレアモンスターも激レアドロップがあるとしたら……?

 これほど心躍る情報はない!

 ……あれ? でもそうしたら……。


「僕が実験をお願いした時に出現しなかったのは、やっぱり運なんでしょうか?」

「え、えっと……モンスターの配置は、その階層に到達した時に決まると言われてます。だから、幸運の実を第一階層内で使ったから、出てこなかったのかもしれません」


 なるほど、確かに効果時間を長く持たせるために、階層内で使ったなあ……。

 次は入る時から使ってみて実験をする必要があるかも。


「とても良い情報をありがとうございます。それと、今度また実験で依頼をしたいのですが……」

「だ、大丈夫です……! わたし、シゲルさんのおかげでちょっと自信が持てましたし、恩返しをしたいって思ってたので……」

「それなら、また前と同じパーティーで依頼を出しておきますね。……それと」


 僕はカウンターの奥からビンを取り出し、フォウさんに渡す。

 すると、フォウさんの目がきらきらと輝きだし、僕のほうを見る。


「こ、これ……」

「ふふ、とある伝手から仕入れたAランクのまたたび酒です。協力して頂いてるお礼です」

「こここ、こんな貴重なものをわたしに……? あああ、ありがとうございます……!」


 フォウさんのビンを持つ手が震えている。

 確かにAランクのポーションは国で管理されるほど貴重だし、それと同等ぐらいになるのかなあ。


「ふふふ、不束者でしゅが、これからもよろしくおにゃがいしますにゃ……」

「お、落ち着いてください」


 なんか語尾に「にゃ」とか聞こえたけど……もしかして、これが素なのか、それとも緊張し過ぎて呂律が回ってないのか。

 そして、なんか告白みたいな言い方をされた気がするんですけど!?


「あらあら、贈り物で女の子のハートを掴むなんて、シゲルくんも隅に置けないわねえ」

「ちょ、ガーベラさん!?」

「あああ、あの、それではわたし、かえってたのしませていただきます……」

「あらあら、その調子じゃ落としちゃうかもしれないから、付き添うわね」

「ひゃ、ひゃい……」


 ……大丈夫だろうか、フォウさん……。



 後日、イベリスさんに聞いた話だが。

 余りにもそのまたたび酒がおいしすぎて、一口呑んだら天にも昇る心地良さだったという。

 そして、次の日の昼前までぐっすり眠れて体調も完璧になったとか。


 ……うん、次からはランクを落としたものを贈ろう。

 そう心に誓うのだった。

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